ハルミ=ムクは夢みるアンドロイド

すこしフシギなメイドご一行様!日帰り異世界でぱにぱに!愛も深まるけど!
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最終話 ぱーぱ<異→現>

公開日時: 2020年9月1日(火) 20:11
文字数:1,203

「あなたのせいよ」


 ドン!


 滅多に声を荒げない玲が黒い魔方陣を叩いて立ち上がった。


「俺は、何も悪い事していない……!」


「うわああああ……。又かあ?」


 玲は、自分の運転する車でも酔うタイプなのだ。


 すると、玲達の頭がぐるんぐるんとマーブルになった。

 皆、大きな地震に襲われたと思う程、立ちあ上がれなくなり、這いつくばった。


 グアララララララ……。

 ドドーン……。


「……」


「ここはどこだ?」


 眩しい光の中、第一声は、玲だった。


 見慣れたベビーベッドのある寝室で、玲が横たわっている。


「むくちゃん……! 何処を遊び歩いているんだ、全く」


 辺りを探しに立ち上がった。

 そのときだ。

 何かの気配を感じて振り返る。

 倒れていて気が付かなかったが、ベビーベッドの中で、ハルミ=ムクが丸くなっている。

 いや、それだけではない。

 その胸に抱かれているのは、我が娘、むくちゃんだった――!


「おやおや。二人してねんねこですか?」


 ハルミ=ムクが静かにしているので、むくちゃんの寝息まで聞こえた。


「よしよし、これじゃあ、ハルミ=ムクが疲れちゃうからね。むくちゃんよ、ぱーぱが抱っこしよう。そして、ベビーベッドにねんこんするんだぞ」


「あら、玲!」


「ん? 美舞か」


 もうおかんむりは直ったのかな?

 玲は、びくつくことなく思った。


「どうした? むくちゃんも疲れたのか、大人しくしているよ」


「いや……。違うの、ハルミ=ムクを見て」


「こ、これは……! すまない、過労だったか」


 ◇◇◇


「星の囁きβへ転生すると、むくちゃんもハルミ=ムクも本音を出すんだな」


 玲は、ハルミ=ムクにしがみ付きたい気持ちで、顔じゅうを涙で濡らしていた。


 彼女は、もう、ボロボロになっていた。

 誰にもどうしようもなかったのだ。


 ハルミ=ムクは、そのままピクリともしなかった。


 だが、急に瞳が瞬いた。


 カッ! カッ! カッ!


「ハルミ=ムクよ! 目を覚ましてくれたのか?」


 玲は堪らなくなって体に覆い被さった。


「玲、何か聞こえるわ。耳を澄まして」

「ああ、俺にもよく聴こえるよ。とても……」


<♪ ワタシハ・メイド・アンドロイドデス>

<♪ ワタシヲ・ツレテイッテクダサイ>

<♪ ワタシハ・オキャクサマノ・オヤクニタチタイ>

<♪ ワタシハ・カラダガジョウブデス>

<♪ ワタシハ・ユメヲミル>

<♪ ワタシハ・ニンゲン二ナリタイ>

<♪ ワタシハ・モット・オキャクサマノ・オヤクニタチタイ>

<♪ ワタシハ・ユメミル・アンドロイド>


 ハルミ=ムクは歌わなくなった。


「最後まで歌ったの?」


<ワタシハ……。ニンゲン二……。ナリリー……。リリー……>


 回路が切れたかの様に話し始めたが、切れた。

 目が血の様になり、間もなく、黒くなった――。


「ハルミ……! ハルミ=ムク――!」

「玲、アンドロイドだから仕方がないのよ」

「美舞だって分かるだろう? 彼女は、夢見るアンドロイドなんだ」


 玲は彼女をベビーベッドの横に寝かせて布団を掛けた。


 一晩休んだら、また目覚めてくれる気がして……。




















Fin.

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