28話 沖縄2日目 美浜アメリカンビレッジ~ホテル
美ら海水族館とフクギ並木を堪能して、僕達はまたレンタカーに乗り込み、秋斗さんの安全運転で美浜アメリカンビレッジへ1時間半ほどかけて走る。
途中コンビニに寄って飲み物やお菓子を買って車中で食べたりしてワイワイ言いながら沖縄を走った。
有料道路の方が早く着くが、差は15分程だし、どうせなら景色も楽しもうと海沿いを行く。
綺麗な海沿いに南国の木々が生えていて、本当に東京とは違うなと感動した。
1時間半の間、半分くらいは泪さんは夢の中だったようで、僕や春樹、秋斗さん、雅さんがワイワイ騒がしくしていたのに最後尾では静かな時間が流れていた。
美浜アメリカンビレッジに到着してからジャッタバーガーというお店にお昼ご飯を食べに行くまでも泪さんはボーッとして眠そうにしている。
「泪さん、お昼ご飯何にする?」
「んー?あー、そっかぁ、洵が奢ってくれんだったね」
泪さんには色んな借りがあるので、「デザート付きでいいよ」と伝えると彼女は目を輝かせて「洵太っ腹〜!」と笑い、それに伴い春樹にも「私もガトーショコラ食べたいな♡」と言われてしまい「仕方ないな」と快諾するとお兄さん達に「かっこいいねぇ」といやらしく笑われた。
僕は冒険をしたくなくてダブルチーズバーガーとアイスコーヒーを頼み、泪さんのテリヤキチキンサムライバーガーと紅茶バターケーキ、カフェオレバニラ、春樹のガトーショコラを共に払う。
僕と春樹、泪さんは1番最後に並んでいたので僕達が席に向かう頃にはお兄さん達が席取りをしてくれていた。
僕と春樹の前に拓也さんと泪さんが座り、僕の隣に雅さん、拓也さんの隣に秋斗さんが座る。
「春樹、何頼んだの?」
「私?ハワイアンデラックス。なんかアボガドとかパインとか入ってるみたいだよ。食べる?」
「うーん、冒険できない」
「チキンかw」
その僕のチキン発言に他のお兄さんお姉さんからも笑われてしまう。
いや、万が一吐いちゃったりしたら、嫌じゃん。
「秋斗は何頼んだの?」
「メキシカンルチャって、ちょっと辛いやつ。食うか?」
「1口頂戴」
「ん、ほら」
「ん」
秋斗さんが差し出したハンバーガーを差し出されたまま、秋斗さんの手から食べる雅さん。
「辛いけど美味い」と舌なめずりする雅さん。
何かその一連の給餌が少しいやらしく思えて見てはいけないものを見た気になる。
「やだ、いやらしー!あ、ね、拓也は何にしたの?」
「テリヤキチキンサムライですよ」
「あ、一緒じゃん」
たまたま同じのを頼んでいた2人。
泪さんが「1口ちょーだい出来ないじゃん馬鹿」と拗ねたので、すかさず拓也さんが「じゃあ同じ味ですが1口いかがです?」と自分のを差し出す。
泪さんは嬉しそうにそれを1口齧った。
「んむ。……そういや、春樹さん、一人称『私』に戻したんだね」
口の中のものを飲み込んで、泪さんは春樹を見つめる。
「ああ、もう洵がいてくれるから」
「僕と関係あるの?」
「『俺』って、使ってたのはなんつーか、独りで生きてく決意みたいなもんだったんだよ。秋斗には雅がいるしなんか頼れないな、ってなって」
こんな幸せな恋愛なんですると思ってなかったから。そう言う春樹は、はにかむ。
そんな姉を見て秋斗さんが「馬鹿なことしてんだからなー。まあ、今幸せならいいけど」と鼻で笑った。
昼食を食べ終えて、僕達は各自カップルで自由行動となる。
17時半にまたジャッタバーガー前に来る約束をして、別れる。
「どこ行くんだっけ?」
春樹が僕に問うてくる。
僕はiPhoneを取り出しメモを見て、そしてマップも見ながら「まずは此処の1階の新垣瓦工場とスプラッシュオキナワかな」と答える。
行きたいお店はリストアップしてある。
あとは別の棟の沖縄オルゴール堂とタイムレスチョコレートに行く。
僕達は手を繋ぎ1階へ。
新垣瓦工場とスプラッシュオキナワは隣り合わせにお店を構えていて、すぐに移動出来る。
まず新垣瓦工場に行き、中を物色。
「やっぱりシーサーは欲しいよな〜」
「ね」
僕は左手にカゴを持ち、右手に春樹の手を繋ぐ。
色々悩んで、ある可愛らしい1組のシーサーに目をつける。
「ねぇ、これ可愛くない??」
「どれ?」
「この、『シーサーちゃん(大)』」
「うん、いいね、可愛い」
『シーサーちゃん(大)』をカゴに入れて、また店を物色。
ジンベイザメの箸置きを1セットカゴに入れてると、春樹は興奮したように僕の腕を叩く。
「な!な!これ買お!」
「なに?」
「イランイランのアロマオイル〜!!」
「イランイラン??って、どんな効果あるんだっけ?」
なんか聞いた事あるような。
春樹はニヤリと笑う。
「官能的な気分になんだよ」
「……春樹??なんてものを買おうとしてるの?」
「いいじゃんいいじゃん。はい買ったー!!」
「あ、ちょっと!」
春樹はそのイランイランのアロマオイルを2個もカゴに入れてしまう。
でも、春樹が嬉しそうだし、まあ、いいや。
アロマディフューザーはまだ家にないから、東京に帰ってから買いに行くことにした。
会計をして、店を出て、次は向かいのスプラッシュオキナワに入る。
そこでは、僕は貝を使った沖縄らしいフォトフレームを買い、春樹はジンベイザメの小さなぬいぐるみを買った。
そしてビルを移動して、まず1階の沖縄オルゴール堂に入る。
「あれ?春樹さん、洵」
「おやおや」
「お前らも来てたのか」
店内には拓也さんと泪さんがオルゴールを品定めしていた。
「ねぇ、せっかくだしお揃いの買おうよ、春樹さん」
「お、いいな!どれにするよ?」
また春樹を泪さんに盗られてしまう。
まあ、春樹が楽しそうにしてるからいいんだけどね。
「ボク達もお揃いの買いますか?洵くん」
「いや、遠慮します」
「おや、つれない」
くすくす笑う拓也さんは「残念だなぁ」と言いながらもそんな事を思っでなさそうな顔をしている。
拓也さんとは仲は良い方だと思うけど、そういう仲ではないんだよなぁ。
しばらくすると春樹と泪さんがきゃいきゃい言いながらお揃いの袋を持って、待ちぼうけをくらっていた僕たちの元へ帰ってくる。
沖縄の有名アーティストの曲のオルゴールを買ったらしい。
僕達はまた別の店に向かう拓也さんと泪さんと別れて2階に上がりタイムレスチョコレートに入る。
イートインも出来るようで、アイスのチョコレートドリンクを買って飲む。そして今日の帰りにみんなで食べようとアソートボックスとココナッツチョコクッキーも買った。
「甘い」
「でも美味しいよ」
「そうだな」
「春樹」
「うん?」
「僕、今幸せだよ。素敵な恋人がいて、優しいお兄さんお姉さん達に囲まれて、旅行して。今、幸せ」
「ふふ、そっか」
春樹は僕に優しく微笑みかける。
ああ、幸せだ。
幸せ過ぎて、怖いくらいに、幸せ。
「私も幸せだよ。お前と出逢えてよかった」
「もう……泣かせないで」
「泣くなよw」
愉快そうに笑う春樹を一生守ろうと、一生愛していこうと思った。
それから少し時間が余ったので、ジャッタバーガーの近くでウィンドウショッピングをしてから、他の4人と合流する。
それからまたレンタカーに乗ってしばらく走り、コンビニで各自夕飯を買って、また走る。
今夜の宿はルネッサンスリゾートオキナワというホテル。
チェックインを済ませ、鍵を受け取り各自カップルで部屋に入る。
僕と春樹は荷物を隅に置いて、ソファーに座り並んで夕飯を食べる。
「……お前、またパスタかよ」
「だって」
「まー、いいけどさ」
パスタを啜る僕の隣で、春樹はお弁当を頬張る。
頬袋にいっぱい詰めて食べるからさながらリスみたい。
夕飯を食べてから少しくつろいで、お風呂に入ろうかという頃。
「なあ、洵、一緒に風呂入る?」
「え、無理」
「なんでだよ」
むくれる春樹にキスする。
春樹は不満そうにしながらも受け入れてくれた。
少しだけ唇を離す。でも、見つめたまま。
「……春樹の裸見たら止まんなくなる自信あるから」
「…………えっち」
明日も早いし、そんなことは出来ない。
仄かに頬を染めた春樹は僕から離れてスーツケースを漁って「じゃあ、先はいるよ?」とお風呂に消えていった。
僕は暇を持て余し、ベッドに横になる。
旅行の心地よい疲れがドッと襲って来て春樹が出てくるまでの数分、寝てしまっていた。
ドスッ
腹に何かが乗った重みで目が覚める。
目を開けると春樹が優しい笑みで僕に乗っかっていた。
「……んん??はるき……??」
またいつもと違う可愛い部屋着を来ている。
今日のワンピースも泪さんとのお揃いだし、今日の寝巻きも一緒に買いに行ったやつなのかな。
「早く風呂入りな?」
「……普通に起こして」
「つまんないじゃん、そんなの」
ほら早く起きる!!
春樹は僕の手を引っ張って僕の身体を起こす。
僕は仕方なしに起き上がりお風呂に入った。
お風呂から出ると、今度は春樹がベッドで寝ていて、僕の寝るスペースを開けてスヤスヤ寝息を立てる姿が可愛くて僕はその額に口付けして春樹が開けていたスペースで僕もまた眠りについた。
ーつづくー
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