舞台の観客には何千人との観客人、明るいライト、そのライトの下には大きな舞台がある。今日、大きな大会がある。
大勢の観客で賑わっている。
プロフェッショナル統一全日本ダンス選手権大会。この日は、お母さんとお父さんの試合がある。
お父さんとお母さんは競技ダンスのA級プロダンサーだ。今回はボールルーム部門だ。
〈さつき〉わあ~!!みて!れんちゃん!人がいっぱいいるよ!
〈れんげ〉うん!すごいね!さっちゃんのパパとママはここでおどるの?
〈さつき〉うん!
さつきとれんげはこの時、小学3年生。
〈嵐太〉さつきくん!れんげ!はやくこっちに座りなさい!
嵐太はさつきとれんげを呼んだ。嵐太はれんげのお父さんだ。
〈里咲〉ふふふ、楽しそうね二人とも
〈嵐太〉そうだな
そこにさつきとれんげは近くに座る。
最初のボールルーム部門。お父さんとお母さんが出てきた。そしてクイックステップの曲がなり、お父さんとお母さんは踊り出した。
凄く綺麗だ。優雅に踊っている。まさにお手本のようだ。
大会は終わり、お母さんに呼ばれさつきは走って向かった。
〈百合〉おいで~さつき
と、手を伸ばす。その瞬間、さつきの目の前からお母さんが消える。
〈さつき〉え?おか…… あさん?どこ?
あたりが暗くなっていく。舞台が霧に隠れるように消えていった。
この暗闇の中、どこからか微かにお母さんの声が聴こえる。「さつき、こっちにおいで」とどこからか聴こえる。
すると、今度はいくつものお母さんの声が聴こえる。まるで音楽のループ奏法のように聴こえる。
さつきは怖くて座り込んでしまった。
〈さつき〉こ、こわい…… よ…… だれか…… お母さん、お父さん、れんちゃん…… こわい
さつきは怖くて耳を手で塞いで聴こえないようにした。怯えていた。
そこに違う女の子の声が聴こえる。何度も「さっちゃん!」「さっちゃん!」「さっちゃん!」と慌てるような声が聴こえる。
はっ!と皐月は気付き、眼を覚ました。どうやら今のは昔の夢だったようだ。
目の前には泣きそうな、蓮花が何度も皐月の名前を呼んでいた。
〈蓮花〉さっちゃん!どうしたの!?大丈夫!?さっちゃん!さっちゃん!さっちゃんってば!?
〈皐月〉ん…… れんげ…… か…… おれはいま……
そこに蓮花は抱きつく。
〈皐月〉うわ!
〈蓮花〉うえぇ~んっ!!死んだのかと思った~!
〈皐月〉う!うるせえな!離せ!大丈夫だ!
〈蓮花〉うん…… ぐ…… わかった…… で?どうしたの?魘うなされていて怖かったよ?もう本当に心配させないでよ……
〈皐月〉ごめん…… てかなんでおまえここにいるの?
〈蓮花〉お父さんから聞いてない?今日いないから代わりに私が起こしにきたの
〈皐月〉ああの!くそ!ジジイ!!なにも聞いてねえよ!!
〈蓮花〉そっか、ところでなにがあったの?
〈皐月〉……なんでもない。ただ、少し怖い夢をみただけ
〈蓮花〉それならいいんだけど…… 体大丈夫?今日休む?
〈皐月〉なんでだよ!休まない!ほら!いくぞ!
〈蓮花〉うん……
皐月は服を着替え、二人で学校に登校した。
〈蓮花〉ところでさ
〈皐月〉なんだよ
〈蓮花〉今日、給食棟で一緒たべない?
〈皐月〉はあ?給食棟?なんで?
〈蓮花〉それは…… まあ、いいじゃない!すごく美味しいらしいよ!
〈皐月〉そうか、そんなにうまいならいくか
〈蓮花〉うん!
〈皐月〉おまえなにか隠してる?
〈蓮花〉え!?いや、なにも…… 隠してないよ?
〈皐月〉そう…… まあいいや、早くいくぞ
〈蓮花〉う、うん(まあいいのかよ)
二人は15分歩いた。そして、高校に着くと教室に向かった。
そして、席に着き、先生が入ってきた。ホームルームが始まり、先生は退出。最初の授業は日本史だ。
授業、皐月はどこか浮かない顔をしていた。授業に集中できてないようだ。
そして、あっという間に昼休みになった。
〈蓮花〉さっちゃん!
〈皐月〉うわ!びっくりした!そのさっちゃんはやめろ!
〈蓮花〉ごめん
と、そこに皐月の前の席に座っている男が話しかけてきた。
〈佳吾〉仲いいな!おまえら!
〈皐月〉あ?だれだ?おまえ?
〈佳吾〉え?まじで?皐月の前の席なのに?おれは、加瀬佳吾だよ、よろしくな!おまえらがあまりにも仲がいいからいつの間にか声かけてた
〈蓮花〉へー、へんな人
〈皐月〉おい!そんなこと言うなよ!佳吾が可哀想だろ!
〈蓮花〉べつにいいじゃん。それより早く給食棟いくよ
〈佳吾〉あっははは!面白いな!給食棟行くのか?俺も一緒いいか?
すると、蓮花は少しニヤリとした。そして、直ぐ様笑顔で話した。
〈蓮花〉いいよ!
〈皐月〉おい!ちょっとまて!なんで!この男と食べないといかん!?
〈蓮花〉え?だめなの?友達でしょ?
〈皐月〉はあ?今話しただけで友達とか!?
加瀬佳吾、同じクラスの男の子だ。黒髪短髪でどこにでもいるような高校生。だが意外とアクティブだ。
〈佳吾〉いや!まあ、だめならいいんだ!なんかお前面白いから言ってみただけだ
〈皐月〉面白い?はあ、わかったよ!その代わりおれの前に座れよ!
〈佳吾〉おお!本当か!?
〈蓮花〉何で前なの?
〈皐月〉うるせえな!なんでもいいだろ!
〈蓮花〉さつき、もしかして、私のこと...
〈皐月〉なんでもねえよ!早くいくぞ!
〈蓮花〉はいはい!
三人で給食棟で食べることになった。
そして、蓮花と皐月はとなりに座り、佳吾は皐月の前に座る。
〈佳吾〉ここの給食うまいな!
そこにある人がくる。
〈桃那〉あれ??皐月くんに蓮花ちゃんじゃない!?
〈皐月〉っ!ん!
と、皐月は恐る恐る後ろを向くと、昨日の社交ダンス部の部長がいた。
〈蓮花〉あっ!桃那先輩!一緒どうですか?
〈皐月〉け!え?おい!
皐月はサーッと寒くなった。
桃那は佳吾のとなりに座る。
〈佳吾〉だれですか?
〈蓮花〉桃那先輩は社交ダンス部の部長だよ!私たち昨日、見学をしたの
〈佳吾〉へー!社交ダンス!聴いたことないな!よろしくお願いします!桃那先輩!こいつらと同じクラスメイトの佳吾です!
〈桃那〉よろしくね、佳吾くん
〈佳吾〉てことは、二人とも社交ダンス部に入るのか?
〈皐月〉入らんわ!!
〈蓮花〉まあまあ
〈皐月〉こいつとは食べられない、おれ向こういく
〈蓮花〉ちょっと!さつき……
〈桃那〉皐月くん!
皐月は桃那のほうを向いた。
〈桃那〉ふふふ、もしかして私を見ただけで逃げるの?
〈皐月〉ああ?
と、皐月は桃那を睨み付ける。
すると、大人しく皐月は元の椅子に座り食べ始めた。
〈桃那〉(やはりね、本当に負けず嫌いなところあるわね)
数分がたったが、あまり会話もなく険悪ムード真っ最中の空気になっていた。
〈佳吾〉あっ、そういえばさっきの日本史の先生な!あれ!かつららしいぜ!
〈蓮花〉へー!そうなんだ
と、また黙り混んだ。
〈桃那〉ねえ、皐月くん
ここで桃那が話す。
〈皐月〉あ?なんだよ
〈桃那〉あなたの事情は聞いたわ。気持ちも全部わかるとは言わない。けど、なぜそこまで避けるの?社交ダンスで体を悪くしたわけではないのでしょ?
〈皐月〉なんで、しってんだよ?蓮花か?
と、そっぽを向く。
〈桃那〉答えてくれる?
数分皐月はそっぽを向いて話さなかった。だが、少し口を開いた。
〈皐月〉けさ……
〈桃那〉今朝?
〈佳吾〉今朝がどうした?
〈蓮花〉さつき……
皐月はそっぽを向いたまま、話した。
〈皐月〉今朝、夢を見た…… 最悪な夢だ
皐月はその最悪な夢を三人に話した。
〈蓮花〉それで魘されていたのね
〈佳吾〉なるほどな
〈桃那〉驚いた…… れんげちゃんからお母さんが社交ダンスのプロだったって聞いたけど、お父さんもプロだったんだ……
しかも二人ともA級?すごいわね。それで?なに? なぜ急に夢の話を?
〈皐月〉ダンス……
〈桃那〉え?
〈皐月〉社交ダンスが恐いんだ…… 最近、また同じ夢を見る。あの夢だ。もう社交ダンスもお母さんもお父さんもみたいくない!だから、社交ダンスは絶対にやらねえ!
〈桃那〉そか!皐月くん、部室いくよ!
〈皐月〉おい!おまえ!今の話聴いてたか!?
〈桃那〉ええ、聴いてたわ!あと、お前じゃなくて桃那よ
〈皐月〉だったら!
〈桃那〉いい!皐月くん!その怖さはあっていいのよ!
〈皐月〉はあ?なにいってんだ?
〈蓮花〉さつき!私…… また皐月が踊ってるところみたい!もう一度見学行かない?
〈皐月〉う、うるせえ!行かねえよ!
〈佳吾〉皐月、おれは社交ダンスってよくわかんねけどさ。おまえの踊ってるところみてみたい!
〈桃那〉どうする?あなたは本当は好きなんでしょ?だからここまでこだわるのよね?少し社交ダンスの奇跡を試してみない?
〈皐月〉奇跡?
〈桃那〉そう…… 奇跡よ。社交ダンスは奇跡と運命のスポーツよ。あなたのその暗闇の心を社交ダンスの奇跡で明るい朝のように照らしてあげるわ。それに、強制的にダンスをやらせようとかは思ってないわ、ただ、私たちの社交ダンス部を見学して欲しいだけよ
しばらく無言が続く。皐月は少し考えているようだ。
そして、やっと話した。
〈皐月〉はあ~っ!しょうがないな。わかったよ、ただし見学だけだ。気にくわなかったら、帰る。二度と話しかけるな
〈桃那〉いいわ
〈蓮花〉やった!!
〈皐月〉まったく!こいつらは……
〈佳吾〉なあ!その見学、おれも行っていいかな?なんか面白そうだ
〈桃那〉ええ!ぜひどうぞ!それと、今は昼休みでちょっとやるつもりだったけど、事情によってないから今日の放課後に見学ってことでいいかしら?
〈蓮花〉大丈夫です!
〈皐月〉おまえが決めるな!
〈桃那〉では私はここで…… 放課後、楽しみにしてるわ
桃那は給食棟を出た。
〈皐月〉なんなんだ!あいつ!ん?もしかして!おまえら!
〈蓮花〉まあ、結果オーライってやつね
〈皐月〉ごまかすな!
〈蓮花〉いいじゃない!?こうでもしないと来てくれないでしょ!?
〈皐月〉まったく!はっ!佳吾もか!?
〈佳吾〉なにが?
〈蓮花〉佳吾は関係ないよ、本当に…… いや、けど、佳吾が来てくれてなかったら作戦は失敗してたかな?
〈皐月〉おまえなあ!勝手に佳吾を巻き込むなよ!こいつ、可哀想だろ!
〈佳吾〉よくわからんけど、おれはいいよ、こうしておまえらと話せたし、なぜか放課後、社交ダンス部の見学も行くことになったし
〈皐月〉おお…… そか
皐月は小さな声で独り言を言った。
〈皐月〉まったく…… とんでもなく最悪な先輩だな
〈佳吾〉ん?なにか言ったか?
〈皐月〉いいや、なにも
こうして、桃那と蓮花の作戦が成功し、皐月、佳吾、蓮花は今日の放課後に社交ダンス部の見学に行くことになった。
ー #02 最悪な夢と最悪な先輩 ー 続く
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