目をそっと開く。
スモックが横に立っており、ディストルツーと思しき人物が更に横に立っている。
初めて見る顔。
ではなかった。
「親父!!!!!!??????」
「よっ。元気してるな?」
えっ。なんで親父が。
頭の理解が追い付かない。
「え、は?」
「ディストルツーの正体。驚いたか?」
「そりゃ、誰だって驚くよ……」
「ははっ。お前が神になれば大体分かる。この世がな」
親父はいつもの青い寝巻を着ていた。
無精髭だけど童顔だから若く見える。
「えぇー……」
「とにかく早くバーラーワン様のところへ行け」
「誰?」
「神様だよ。お前散々会話したんじゃないのか?」
あ、そんな名前だったんだ。
いやそんな情報がどうでも良いくらいの驚きなんだけど、これ集中できるかな……。
「わ、分かった。取り敢えず生物全員、神にするから」
「何だそれ」
説明する。配信にも声をのせる。
リスナーからのコメントでは”滅茶苦茶無茶苦茶”だの”よっ創造神”だの。
一方で、親父は了解を示した顔をしている。
「あぁ。分かったよ。頑張れよ」
「頑張る!」
俺とスモックは宿屋を後にした。
外に出ると、空でバーラーワンとフローガが対峙していた。
全く動いていない。
達人の間合いというやつだろうか。
ま、俺は俺のやるべきことをやるだけ。
「リスナー!今この瞬間の俺の輝きをよく見てろよ!!リスナーじゃないやつにも届くようにするから、そういうやつもよく見てろよ!!」
ありとあらゆるものを吸いこむかのように息を吸う。
有魔法。
「ビックバンエナジィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!」
それは世界を包む魔力。
俺を中心に、魔力が物質、魔法を貫通してすべての生物に宿る。
無限の魔力。無限の魔法。無限の肯定。
「それが君の回答なんだね」
神……バーラーワンが呟いた。
「やっぱあたし、この光好きかも。勿論クレアも……♡」
フローガが呟いた。
「地球も、寂しくなっちまうな」
親父が呟いた。
「神になったら年下の姉ちゃん創るか」
スモックが呟いた。
皆の声が聞こえる。
俺は魔力を放出しながらフローガに近付いた。
「フローガ。頼みがある」
「……♡何でも言って!」
「耳かきしてくれ」
「りょーかーい♡」
世界に無限の魔力が満ちた日。
俺は初めて耳かきをしてもらった。
ーーーーーーーーーー
世界を知った。
まず俺の元いた世界とは、無魔法によって魔法が封じられていた国だった。異世界転生というか、異国転生。
ディストルツー……親父はバーラーワンから無魔法が効かない創魔法を授かり、クレアジオーネの身体を創り出した。色んな国で試した中の一体だったらしい。
ただ魂が無く、自衛のために動くロボットのようだったらしい。まるでニヒリズムに囚われたかのような感じらしい。
なのでバーラーワンは魂だけを抜く魔法、つまり脳機能をデータ化する魔法を使い、親父の息子である俺から魂を抜いて、クレアジオーネの身体にぶち込んだらしい。
ルーチェさんの光で胸が膨らんだのは、本来旅で人造人間から魔力を貰って、異形になる流れになるはずだったから。
フローガとかいう神が、途中経過すっ飛ばして魔力をぶち込んだので、逆に人間の形を保ったそうで。
まぁまだまだあるけど、世界の秘密を喋ったところで何になるわけでもない。
「クレアよ~わ♡耳かきでそんなになる神様なんていないよ~!」
「素晴らしい……」
「クレアお前、そんなに耳かきされてると慣れねえか?」
ある星。
草原に1本の木が立っていた。
そこに3柱が佇む。俺が真ん中だ。
「耳かきに慣れるなんて、絶対ないね」
「絶対は事実にのみ使う言葉じゃなかったか?」
「あたしが上手いって話じゃない!」
嗚呼。こうやって晴れた空を見ながら、音楽をかけ、過ごすのだ。
フローガは色白で、黒髪に赤のインナーカラー、メイド服のような丈の長いスカート。
スモックは色黒で、金髪に青のインナーカラー、学ランみたいな服装で青のシャツを着ている。
まるで夢みたいだ。こんな生活がずっと続けばいいのに。
「フローガ、スモック。夢、あるか?」
「あたしはも~っとクレアに気持ち良くなって欲しい♡」
「俺まだ年下の姉ちゃん創ってねぇから、それが夢だな。お前は?」
「俺?う~ん。……なんだろ」
フローガの膝枕から頭を離し、起き上がる。
夢、か。
「俺は今で満足だよ」
日が沈む。
光は正面から、俺をさした。
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