魔法ってのはもっと自由であるべきだ

ファイラ
ファイラ

もっと自由になるべきだった

公開日時: 2024年4月20日(土) 00:00
文字数:1,763

 目をそっと開く。


 スモックが横に立っており、ディストルツーと思しき人物が更に横に立っている。

 初めて見る顔。

 ではなかった。


「親父!!!!!!??????」

「よっ。元気してるな?」


 えっ。なんで親父が。

 頭の理解が追い付かない。


「え、は?」

「ディストルツーの正体。驚いたか?」


「そりゃ、誰だって驚くよ……」

「ははっ。お前が神になれば大体分かる。この世がな」


 親父はいつもの青い寝巻を着ていた。

 無精髭だけど童顔だから若く見える。


「えぇー……」

「とにかく早くバーラーワン様のところへ行け」


「誰?」

「神様だよ。お前散々会話したんじゃないのか?」


 あ、そんな名前だったんだ。

 いやそんな情報がどうでも良いくらいの驚きなんだけど、これ集中できるかな……。


「わ、分かった。取り敢えず生物全員、神にするから」

「何だそれ」


 説明する。配信にも声をのせる。

 リスナーからのコメントでは”滅茶苦茶無茶苦茶”だの”よっ創造神”だの。

 一方で、親父は了解を示した顔をしている。


「あぁ。分かったよ。頑張れよ」

「頑張る!」


 俺とスモックは宿屋を後にした。


 外に出ると、空でバーラーワンとフローガが対峙していた。

 全く動いていない。

 達人の間合いというやつだろうか。


 ま、俺は俺のやるべきことをやるだけ。


「リスナー!今この瞬間の俺の輝きをよく見てろよ!!リスナーじゃないやつにも届くようにするから、そういうやつもよく見てろよ!!」




 ありとあらゆるものを吸いこむかのように息を吸う。

 有魔法。


「ビックバンエナジィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!」




 それは世界を包む魔力。

 俺を中心に、魔力が物質、魔法を貫通してすべての生物に宿る。

 無限の魔力。無限の魔法。無限の肯定。


「それが君の回答なんだね」


 神……バーラーワンが呟いた。

 

「やっぱあたし、この光好きかも。勿論クレアも……♡」


 フローガが呟いた。


「地球も、寂しくなっちまうな」


 親父が呟いた。


「神になったら年下の姉ちゃん創るか」


 スモックが呟いた。


 皆の声が聞こえる。

 俺は魔力を放出しながらフローガに近付いた。

 

「フローガ。頼みがある」

「……♡何でも言って!」


「耳かきしてくれ」

「りょーかーい♡」


 世界に無限の魔力が満ちた日。

 俺は初めて耳かきをしてもらった。


ーーーーーーーーーー


 世界を知った。

 まず俺の元いた世界とは、無魔法によって魔法が封じられていた国だった。異世界転生というか、異国転生。

 ディストルツー……親父はバーラーワンから無魔法が効かない創魔法を授かり、クレアジオーネの身体を創り出した。色んな国で試した中の一体だったらしい。


 ただ魂が無く、自衛のために動くロボットのようだったらしい。まるでニヒリズムに囚われたかのような感じらしい。 

 なのでバーラーワンは魂だけを抜く魔法、つまり脳機能をデータ化する魔法を使い、親父の息子である俺から魂を抜いて、クレアジオーネの身体にぶち込んだらしい。

 

 ルーチェさんの光で胸が膨らんだのは、本来旅で人造人間から魔力を貰って、異形になる流れになるはずだったから。

 フローガとかいう神が、途中経過すっ飛ばして魔力をぶち込んだので、逆に人間の形を保ったそうで。

 



 まぁまだまだあるけど、世界の秘密を喋ったところで何になるわけでもない。


「クレアよ~わ♡耳かきでそんなになる神様なんていないよ~!」

「素晴らしい……」

「クレアお前、そんなに耳かきされてると慣れねえか?」


 ある星。

 草原に1本の木が立っていた。

 そこに3柱が佇む。俺が真ん中だ。


「耳かきに慣れるなんて、絶対ないね」

「絶対は事実にのみ使う言葉じゃなかったか?」

「あたしが上手いって話じゃない!」


 嗚呼。こうやって晴れた空を見ながら、音楽をかけ、過ごすのだ。

 フローガは色白で、黒髪に赤のインナーカラー、メイド服のような丈の長いスカート。

 スモックは色黒で、金髪に青のインナーカラー、学ランみたいな服装で青のシャツを着ている。


 まるで夢みたいだ。こんな生活がずっと続けばいいのに。


「フローガ、スモック。夢、あるか?」

「あたしはも~っとクレアに気持ち良くなって欲しい♡」

「俺まだ年下の姉ちゃん創ってねぇから、それが夢だな。お前は?」


「俺?う~ん。……なんだろ」


 フローガの膝枕から頭を離し、起き上がる。

 夢、か。




「俺は今で満足だよ」




 日が沈む。

 光は正面から、俺をさした。




ーーーーーーーーーー

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