朝の出勤前
今朝の出掛けで庭のアジサイの葉に大きなカタツムリがいるのを見付けた。殻の直径が5センチはありそうな大きなカタツムリを見たのは初めてなので和夫は驚いた。
でんでん虫々 かたつむり♪
と、子供の頃に良く歌った可愛い歌だが、どうもカタツムリやナメクジには「広東住血線虫」という寄生虫が潜んでいるとの事だ。接触後は手や接触部分をしっかり石鹸や洗剤で洗い乾燥させ直接及び間接的に口・眼・鼻・陰部などの各粘膜及び傷口からの感染を予防しなければならない。と。
また万一、体内に上記の寄生虫が迷入・感染すると、中枢神経系で生育しようとするため、眼球や脳などの主要器官が迷入先である場合が多い。よって、罹患者は死亡または重い障害が残るに至る可能性が大きいと、Wikipediaに書かれていた。
この事は以前から知ってはいたが、改めて考えると子供の頃は良く捕まえて遊んでいたように思うし、その頃に良く手を洗ったかと言えば洗ってなかったようにも思った。
子供の頃にミミズを触った手でオチンチンを触って炎症して腫れた事があった。母から「ミミズ触ったでしょ?」と訊かれた事があったのを思い出した。こんな事も田舎に来たことでの発見だ。毎日が勉強だと和夫は思った。
*
朝の清掃 朝食のスタンバイ。
今日はホテル周辺の掃き掃除を終えたら側溝の雑草取りとゴミ取りを重点的にやった。その後、事務所に行ってタイムカードを押していると、英子が出勤して来た。
「英子、おはよう!」と和夫が言うと、「おはようございます」と言った。
「今日も元気に頑張ろうぜー!」と和夫が言うと、英子は「はい。」と言った。
倉庫の牛乳とジュース類を台車に載せるといつも通りに英子が運んでくれた。レストランに行って在庫置き場にダンボール箱を開けて仕舞って、ホールのスタッフに挨拶をして洗い場に行くと多部が、「この間の派遣さん、辞めちゃったよ」とポツリと言った。
「ここの洗い場は客数の割に狭いし、やり難いもんね、多部さんや鈴木さんが良くやっていると思うもの、派遣さんがやるんだったらもっと働き易いホテルで働くでしょ?」
「本当にそう思うよ、私も」と多部。
「あ~ぁ、また二人だよ、休めなくなっちゃうよ」と鈴木。
「確かにそうだよね、私がやってあげても良いんだけど、そうもいかないからね」と和夫。
そんな話しをしていたら、副支配人の品川が女性を一人連れて来た。
清掃の女社長だった。
「洗い場の派遣が辞めたんで、社長がやってくれるって言うんで」と。
「鈴木さん、良かったじゃないですか?」と言うと目で(嫌だ)と合図した鈴木だった。
和夫は(パートさんの世界も色々あるんだな)と思って調理場に挨拶に行きそのままカウンターの朝のスタンバイをした。
*
朝食 "Mr. Yoda" 朝の賄い。
昨夜の夕食のご婦人から呼ばれた。
"Goodmorning,Mr.Yoda"
"Goodmorning"
"Thankyouforlastnight"
"Youarewelcome"
"Didyousleepwell?"
"Yes"
"Iwillstayforanotherdaytoday."
"Isthatso"
"Whydon'tyouhavelunchtogether?"
"CanIanswerafterconsultingwithmyboss?"
"Yes"
事務所に行き、相談はせずに倉庫に入って物色した後にレストランに戻った。下手に相談してまた変な事になるのが嫌だったからだ。
"I'msorrythatifyouconsultwithyourboss,youshouldn'thaveapersonalrelationshipwiththecustomer."
"I'msorryforthis"
かなり、ガッカリした感じだったので可愛そうだったが仕方ないと思った。愛美が和夫の所に来て「何を話したの?」と訊いた。
「普通の事だよ」と和夫。
「ランチ一緒にって言われていたでしょ?」と愛美。
「後で面倒な事になるのが嫌だったから断ったよ」と和夫。
「和さんモテルから仕方ないわよね、私も行ってほしくないし」と愛美。
「あのご婦人と何かあるとでも思っているの?」と和夫。
「昨夜だって和さんを独り占めしていたじゃない、それで皆、帰るのが遅くなったんだからね」と愛美。
「心配し過ぎだよ」と和夫。
「それに昨夜、言っていたわよね、未亡人だって?」と愛美。
「考え過ぎだよ」と和夫。
「そうかなぁ?」と愛美。
「そんな事、言っていても良いのかな?」と和夫。
「何よ?」
「愛美さんは昨夜ご主人とウフフしたんじゃないの?」と和夫。
「してないわよ」と愛美。
「電話無かったからさ」と和夫。
「遅かったからね」と愛美。
「ではそういう事にしておきましょ!?」と和夫。
「んもぅ……」と愛美。
そんな話しをしていたら英子が、「お二人さん、仲が良い事!」と言って来た。
「モテル男は辛いのぉ!」と言うと二人は口々に、「調子に乗るな!」と言った。
片付けて朝の賄いを食べた。中抜け休憩時の清掃は全て終了したので、まっすぐ帰寮した。寮に帰る途中で朝のご婦人が歩いていたので、クラクションを鳴らすと和夫に気が付いた。
朝の外国のご婦人に会う
和夫は車での帰寮途中で朝、話した白人のご婦人を見付けた。
朝、和夫は可愛そうに思ったので、"Hello"と挨拶した。
“Wouldyouliketogetinthecar?”
"ありがとうございます"
「ありがとうございます」
"MaybeyoucanspeakJapanese?"
「話せますよ」
「改めまして、私は依田和夫と申します」
「私は、lily Smithリリー スミスです、どうぞよろしく!」
「なんだ、英語は苦手だったんですよ」
「ゆっくりだったのでそんな感じがしていましたよ」
「やっぱりそうでした?」
「はい、発音もおかしかったですしね」と言って笑った。
「恥ずかしいです、ではドライブしましょうか?」
「はい、ありがとう」
「ランチしましたか?」
「未だです」
「ではランチに行きますか?」
「お願いします」
「何が食べたいですか?」
「お蕎麦が食べたいです」
「わかりました」と言ってスマホで検索した。
和夫は未だこちらに来たばかりだったので美味しい店を知らなかった。外国人なのでできるだけビジュアルも日本的な店を選び、遊季庭あお嶋に行った。三千坪を有す庭の素晴らしい蕎麦屋に行った。静丘県御天場市。十二時少し過ぎた頃に入り、駐車場には車が多く停まっていました。
検索サイトには書いてなかったが、ここは、中学生以下はお断りとの店で、選んで良かったと思った。車から降りて門扉を過ぎると素晴らしい庭が広がっていた。庭を通過して、これまた風情のある建物だった。玄関で靴を脱ぎ、鐘を鳴らして店員を呼ぶ。席に案内されると、先程の素晴らしい庭が眼下に広がった。
彼女も"Wow amazing!"とやはり外国人なので日本語を話せるとはいえ、感動する時は英語なんだと思った。
(という事は「アレの時も?」と)不謹慎な事を思っていた和夫だった。
部屋が幾つかあり、案内された部屋では一組のカップルがすでに食事をしていた。冷たい麦茶とポットが渡される。他の部屋の様子は分からないが、どうやら満席に近い状態のようだった。次から次へと客さんが来ては帰っていった。スタッフの事は良く分からないが年配のご婦人が数人でやっていた。和夫はざるそばを注文した。細麺で冷たい汁にピッタリだった。
賄いを食べて来たが和夫は大食漢なので問題はなかった。彼女は鴨せいろ蕎麦だった。
一口食べた彼女は「美味しい!」と喜んでいた。お蕎麦も大変に美味しく素晴らしいロケーションであり、彼女も大変に満足してくれた。食事を終えて、彼女が「家に来ない?」と言った。
「市内にあるの?」
「御天場市内に自宅があるので」
*
その後、彼女の案内で御天場市内のある家に行った。
鍵を開けると「入って」と言われた。
彼女の自宅だと言い靴を脱がないで土足で入った。
和夫「何でホテルに泊まっているの?」と訊いた。
リリー「主人との思い出のホテルだから」と。
この話しは昨夜に聞いていたが狐につままれたような気持ちだった。
リビング通されソファに案内されて座って待っていると、リリーはキッチンで湯を沸かし、コーヒーを淹れてくれた。
リリー「そう言えば、お蕎麦屋さんで支払ってもらったけど」と言って財布を出そうとしたので、和夫は「大丈夫ですよ」と言うと「本当に?」と言った。
和夫「はい」と。
リリーは和夫の前で太目の白い脚を組んだ。
和夫は見ない振りをしながらついつい目はその脚をの奥、つまりショーツが見え隠れする部分に目がいっていた。
リリーは何度も脚を組み替えていて、和夫を誘っているかのように見えた。
しかし何と言ってもリリーの一番目立つ部分は大振りのバストだった。昨夜に話していた時も目はリリーのバストばかり見ていたからだ。和夫は脱がしてバストを見てみたいという衝動に駆られていた。
リリー「あのホテルに泊まったのは主人の病気が十年も続いて、体力もかなり落ちていたので、近場のホテルに泊まろうということで驛前ホテルにしたの」
和夫は(リリーは五十歳代として四十歳代からセックスレスだったという事か)と思って聞いていた。
和夫「そうだったんですね、看病が大変でしたね」
りりー「うん、大変だったわ」
和夫「ご主人の職業は?」
リリー「設計士、精密機械のね」
和夫「リリーさんは?」
リリー「翻訳家とたまに小学生に英語を教えている先生よ」
和夫「だから日本語がお上手なんですね」
リリー「そうでもないけど、貴方の英語よりはね」と言って笑った。
リリーは肩が凝っているような素振りをしたので、和夫は「肩を揉みましょうか?」と言った。
リリー「悪いわ」
和夫は彼女の後ろに回って肩を揉みだした。
暫くやっていると彼女は寝息を立てていたので、和夫は肩を揉みながらも、彼女の胸の谷間を上から覗いた。
ノーブラではないので、乳首は見えなかった。
肩から腕を揉みだすと「気持ちいい」と言って目を覚まし「ありがとう」と言った。
和夫は彼女の座っていた長いソファの横に座って、「キスしてもイイ?」と訊くと彼女は「うん」と頷いた。
和夫はそのまま彼女をソファに寝かせてキスをしながら、彼女の胸を服の上から揉みしだいた。
目尻や口の周りには小皺があるものの、昨夜から見ていたが中々の美人だ。
背が高く知的で洗練された雰囲気があり、ブロンドの髪と長くて太目の脚が和夫にとっては最大の魅力だった。
体型全体は太目の印象だが、和夫にとってはぽっちゃり体形が一番の好みなので大きく盛り上がった胸元や、タイトスカートにピッチリ張り付いた肉感のあるヒップは成熟した大人の女の色気を発散させていて日本人にはない外国女性ならではだ。
愛美が妬くのも良く分かった。
これは年齢を重ねないとこの色気には到達できないし、日本人女性の体形では絶対にこうはならないからだ。
*
コーヒーを飲みながら色々話をしてみると年の差を感じず気が合い会話が弾んだ。
他界したリリーの夫も米国人で仕事の都合で日本に来て日本で他界した。
息子が一人いてシカゴに住んでいると言い、和夫もシカゴには行った事があったので話しが弾んだ。
リリーはこの家で一人暮らしをしていて寂しさがあったのか、ホテルで愛想が良く明るく振舞っていた和夫と仲良くなりたいと思ったと言った。たまたまだが今日、あの場所で和夫と再会できたことが自身の最高の幸せだとも言った。
唇を重ね合わせ舌と舌を絡め合う濃厚なキスを続けながら、和夫はリリーを立ち上がらせて腰に回していた手を下に移動させ、スカートの上かリリーの豊かな尻を弄ると、リリーは太腿を和夫の股にピッタリと押し付けてきた。
和夫はリリーを部屋の壁に背中を付けるように立たせ、リリーの赤いカットソーを脱がすとブラジャーに包まれた大きなバストが現れた。
ブラジャーを引き下げ、露わになった豊満な柔房を両手で揉み上げ、乳首に口唇を付けて舌で優しく舐め転がした。リリーは和夫の頭をしっかりと抱き締め"Sui"と外人ならではの息を吸いあげた。
和夫はそのままスカートの中に右手を入れ、ショーツの上からワレメをフェザータッチをすると既に熱を帯びしとどに濡れていた。和夫はわざとリリーを焦らすように、ショーツの上から指先をサワサワと動かし割れ目を刺激していきながらリリーの息遣いをみていた。
次第に「ハァ、ハァ、ハァ」と荒く乱れ、ショーツのその部分が徐々に濡れてきているのを感じた。
リリーがいよいよ高まってきたのを確認した和夫は、彼女の黒のショーツを脱がすと右手を再びスカートの中に入れ太腿を撫で上げ女の割れ目の上から下へと下から上へ指先を走らせ、更に一番感じる突起を指先で転がすように弄った。
そして既に夥しい淫汁でヌルヌルになっている割れ目を開き中指と薬指の先を内部に差し入れた。
指先を彼女のショーツの中でじわりじわりと動かすと、リリーは”Comeon、Come…”と呻き声をあげ、悦楽で細かく体を震わせ、和夫にしがみ付くように首に手を回した。
手に力をこめ和夫は立ったままリリーの首筋や乳首に舌を這わせながら、スカートの中に入れた右手の指先を絶え間なく動かし、一番感じる突起や鞘の敏感な肉壁を愛撫した。
やがてリリーは、既に硬くはちきれんばかりになっていた和夫の股間に右手を伸ばし、スラックスの上からそこを撫で、顔を紅潮させ、今にも啼きそうな声を出し"Nomore...Oh,Shit…please,givemeapenis"と苦し気な声で囁いた。
それは女盛りの脂ぎった豊かな肉体が、もうそれ以上、我慢できず、年下の若い男に最後を要求しているように感じられ和夫の欲情を一層かき立てた。
*
更には激しくパンパンパンと二人の肉と肉がぶつかり合う音が部屋の中で交錯していた。
そして和夫が腰を「の」の字にグラインドさせながら、そそり立つピストルをじわりじわりと膣壁に擦りつけるように奥深く差し込み、それから一転して激しく腰を前後に振り立て、銃口で鞘口を突くと、リリーはもう気持ち良くて仕方ないのか、"Ah! ... Oh, Oh, Oh,yes... there, there! ... Oh, God! More, more, oh ... Good! … Ah, come on… Ah, Ah, come on! come on~~!” とドレッサーについた両腕と両脚をピーンと伸ばし、顎を上に極限まで上げ上半身をのけぞらせ悶えながら善がり官能の叫びを上げた。
それは和夫が初めて聴くリリーが完全に理性を失い、この和夫の性技の虜になったことを示した和夫にとって最上の悦びでありご褒美だった。リリーはもはや和夫のなすがままにセックスの悦楽に溺れていた。
硬くいきり立ったピストルで、荒々しく背後から蜜壺の最奥まで繰り返し繰り返し刺し貫かれ立ったまま半ば放心状態で、顔を紅潮させ恍惚と苦悶が入り混じった表情を浮かべ、善がり泣きの涙を流し口元をだらしなく半開きにさせて涎を垂れ流していた。艶めかしい喜悦の声を上げて…鏡の中には淫らに乱れきったリリーの情痴の姿態と淫靡な表情が映し出されていた。
和夫はそれを見て今や自分のピストルで理性も恥じらいも失うまで善がり狂わせ、虜にした征服感に酔っていた。おそらくリリーの亡くなった夫は、このような淫らな体位でリリーとセックスをしたことも、リリーをここまで感じさせ乱れさせたこともなかったに違いない。
そして和夫は最後の仕上げをめざして、リリーの腰を両手でしっかり掴み直すと、猛然と自分の腰を振り立て、濡れに濡れてトロトロになった鞘に、極限までそして痛い程に膨張したピストルを背後からこれでもかとばかりに突き入れ抜き差し、燃えたぎる欲情のおもむくままに堪らない快感と征服感を味わいながら渾身の力を込めて抽送した。
和夫の激しい腰使いに身体を前後に揺さぶられながら髪を振り乱し額から脂汗を流し、もはや言葉にならない悲鳴にも似た悦楽の叫びを上げていたリリーは、やがて唐突に上体をのけぞらせると嬌声を止め全身を痙攣させ始めた。
それと前後して、おびただしい量の泉水がワレメからトロトロと溢れ出て漆黒といわず太腿といわずビショビショに濡らした。リリーは和夫の元で、ついに悦楽の絶頂に達した。
*
今にも崩れ落ちそうなリリーの腰を両手でしっかりと掴み、和夫は更に気も狂わんばかりにズンズンと突き上げた。
そして、ついに耐えられなくなり思わず「リリー、俺も!」と獣のような呻き声を上げながらピストルを根元まで鞘に突き入れたまま思いっきり迸った。
それはまるで脊髄に電流が流れ、全身が痺れて気が遠くなるような快感と、この美しく成熟した年上の白人翻訳家でありながら女教師の心も体も、日本男児のピストルで完全に征服した男として言いようのない充実感でそれまでに経験したことがない激しい迸りだった。
ドクッ、ドクッ、ドクッとありったけの精根を白人熟女の子宮に注ぎ込んでから、和夫がリリーの腰を掴んでいた手を離し、汁にまみれたピストルを引き抜くと、リリーは全身の力が抜けたかのように、両腕を前に投げ出し、床にうつ伏せに倒れこんだ。リリーは和夫とのあまりにも激しいセックスで悦楽の限界に達し失神していた。
そして腹に引っ掛かっていたブラとスカートが乱れたまま声を上げる事無く、ただ体をピクピクと痙攣させ絶頂感の余韻に浸っているようだった。
リリーの下半身に目をやると、捲れ上がったスカートから露出した白い両脚の付け根から内腿にかけて、和夫の迸り液とリリーの女の涎が混ざり合った白濁の粘着液がワレメから溢れ出てベットリと付着していた。その何とも言えぬ淫靡な光景だった。
和夫はティッシュを多めに取ってリリーの脚を拭いた。和夫は東洋系の外国人熟女との経験はあったが、西洋人は二人目で熟女はリリーが最初だった事もあり、これからも付き合いをしていきたいと思っていた。リリーもセフレを探していて、和夫と出会った事で今後も付き合いができたらと思っていた。
和夫「また逢ってもらえますか?」と訊くとリリーは即座に"Of course"と答えた。
和夫はリリーをお姫様だっこすると、彼女は目を見開いて驚いたがシャワールームを指さしたので連れて行くと「力持ちなのね」と言った。
一緒にシャワーを浴びて、電話番号の交換をした。
車に乗せてホテルの手前でリリーを降ろし和夫は夕食のスタンバイで出勤した。
*
夕食のスタンバイで出勤と副社長の給料計算間違い多発事件。
リリーは今晩も夕食をレストランで取ると言っていた。和夫は車中、彼女と何を話そうかと悩んだ。駐車場に着くと帰る前のフロントの渋谷が、「依田さん!」と呼んだ。
和夫「どうしました?」と言うと、「これ見て下さいよ。」と言い自身の給料明細書を見せてくれたまだ三十歳そこそこなのに歳と同じ給料をもらっていた。
「僕の給料はこんなじゃないのですが、今回はいつもよりも五万円以上も多かったので副社長に話したら、『間違ったから返して。』って言われたんですよ、以前もボーナスの時に多く出されて使った後に多く出し過ぎたから返してって言われた事もあるので、依田さんも気を付けて下さいね。」と言われた。
和夫は社長との面接の際には給料は手取りで八十万円と言われていたので、納得していた。金の事はあまり言いたくなかったので自分からは希望は言わなかった。ただゼネラルマネージャーで入って行くのは嫌だったので平社員でと頼んだ事は了承してくれた。事務所に行くと副支配人の品川が、「依田さん、給料明細書です」と言い渡された。
寮に帰ってから見ようと思ったので、折り曲げてスラックスの後ろのポケットに入れた。品川「今、確認しなくて大丈夫ですか?」と言われたが、「大丈夫です」と言うと、品川は「副社長は間違える事が多いので気を付けて下さいね」と言った。
和夫「はい、ありがとうございます」と答えてレストランに行った。
ホールでは既に女子高生が夕食のスタンバイを終えていた。
和夫「いつもありがとう」と言うと女子高生はニコッと笑った。
愛美と山形が仕事をしていたので、挨拶をして洗い場に行くと多部が仕込みを手伝っていた。
「おはようございます」と挨拶すると、多部が「それだけ?」と言った。
和夫は意味が分からなくて「何?」と言うと「外人の女性を車に乗せたのを見たわよ」と。
「嘘だ、多部さん俺の車、知らないでしょ?」と和夫。
「そうよね、何で多部さんは依田さんの車を知っているの?」と鈴木。
多部は黙ってしまった。
駐車場は調理場の人たちはホテルの裏手の駐車場に停めるが、ホールとフロントは離れた駐車場に停めているので多部が和夫の車を知っているという事がおかしいので和夫は多部とデートした事は誰にも言えないので、敢えて訊いたのだ。
「人間違いだったのかも?」と多部は言った。
「そうよね、私も依田さんの車が何だか知らないから」と鈴木が言った。
和夫は命拾いした。
*
夕食のスタンバイで出勤と副社長の給料計算間違い多発事件。
その後、調理場に行き挨拶をすると、スーシェフの神田が、「依田さん、副社長は故意だと思うのですが、給料計算を間違えるんですよ、だから本当に気を付けて下さいね」と言った。
そう何人にも言われると和夫も心配になってカウンターの夜のスタンバイをした後に明細書を開けてみると、社長との面接の時に提示された金額は、「手取りで八十万円だったが、明細書の差引支給額が十四万一千四十九円だった。
和夫は「なんだこれ?」と思った。
例え日割りだとしてもだが、余りにも違い過ぎた。
基本給 十九万円
健康保険 九千四百四十三円
介護保険 一千五百一円
雇用保険料 七百六十円
厚生年金 一万六千九百三十七円
所得税 三千四百十円
住民税 〇円
食費 六千九百円
寮費 二万円
手取り 十三万一千四十九円
この時にはガソリン代も、副支配人が言っていた残業代も入ってない事に気付かなかった和夫だった。
給料の事だったので直接、社長に電話した。
和夫「依田です今、電話大丈夫でしょうか?」
社長「おお、依田君、大丈夫だが、何だね?」
和夫「今、給料明細書を頂いたのですが、面接時の社長とのお約束の金額とは大幅に相違があるですが?」と言った。
社長「幾らだね?」
和夫「基本給が十九万円になっており、手取りの金額が十三万一千四十九円です」
社長「それはおかしいな。妻に言ったのとは全然違う金額だ、君は私がゼネラルマネージャーでと言ったのを断って最初は平社員でと言ったから平社員の最初の給料にしたんだが何か問題でもあるのか?」
和夫「その平社員の給料とはお幾らなのですか?」
社長「基本給は二十六万だよ、それを妻に言っておいたんだが、また言っておくから」と言った。
和夫「面接時の手取り八十万円と言うのはいつに頂ける金額なのでしょうか?」
社長「最高級ホテルの総料理長に就任した時になるが、何か問題でも?」
和夫は(騙された!)と思ったが後の祭りだったので、「承知致しました」と答えるしかなかった。(だからあの時に雇用契約書を出さなかったんだな)と今更、思った和夫だった。
これだったら帝丸ホテルに居た方が全然良かったと後悔先に立たずだった。それにしても副社長はシレ~とやるのだから、泥棒猫のような事を平気でやる人なんだと認識した。愛美はこんな詐欺師のような経営者の娘で大丈夫なのか?でも愛美と接していると、どうもこの親たちから生まれたようには思えないのだが。
*
夕食 賄い 帰寮。
夕食が始まった。リリーが最初に入って来て昨夜と同じ席に座った。座って直ぐに生ビールを注文した。和夫は作って女子高生に渡すと、女子高生が戻って来て、「依田さん、呼んでいますよ」と言って笑った。
「何で依田さんばかり呼ぶんだろうね?」と愛美が山形に言った。
「あれ、愛美さん依田さんに恋しちゃった? ダメよ、依田さんはオバサンたちの者なんだからさ」と山形。
「そんなんじゃないですよ」と愛美。
「なら良いけど」と山形。
和夫はカウンターの片付けをした後にリリーの元に言った。
"Thankyoufortoday"とリリー。
"No,thisisit"と和夫。
"I'mthinkingofeatingearlyandgoingtobedearlytoday"とリリー。
"It'sbettertodothat."と和夫。
"I'msuspiciousofeveryone,sogonow"とリリー。
和夫は笑顔で一礼してカウンターに戻った。
その後、多くの客が入って来たので皆、無駄口をきいている暇はなかった。
リリーの帰りに。
"Itwasdelicious,goodnight."とリリー。
"Thankyou,goodnight"と和夫。
愛美が和夫の所に来て、「あのお客様が、ウインクしていたけど?」と言った。
「お客様は人に迷惑を掛けなければ、何をしても良いんじゃないですかね?」と和夫はぶっきら棒に言った。
「そうだけど、感じ悪いわよ」と愛美。
「そうかな、俺には感じ良かったけどな」と和夫。
片付けをして賄いを食べた。山形と愛美と和夫だった。
「愛美さんも依田さんの事、好きになったみたいよ」と山形。
「そんなんじゃないですって言ったじゃないですかぁ?」と愛美。
「そうですよね、愛美さんは茂雄さんっていう親愛なるご主人が居ますものね?」と和夫。
「そう言えば常務がどうしているの? 最近お顔を見ないから」と山形。
「確かに」と和夫。
「二号館で勤務していますよ」と愛美。
「以前から不思議だと思っていた事を訊いてもいいかな?」と山形。
「どうぞ!」と愛美。
「愛美さんが一号館でしょ? 副社長もでしょ? ご主人の常務が二号館で、社長がヨーロッパ二軒とガソリンスタンドを大塚さんと見ているのは何でなの?」と山形。
「社長は私たちや副社長がヨーロッパに行くのを嫌がるんだけど、こればかりは私たちにも分からないんです」と愛美。
和夫は分かっていたが口を出さなかった。
「そうだんだ、この話しはパートさんの中でいつも話題になる事だから」と山形。
「ミステリーですね」と和夫は一言、言って立ちあがり、食器を洗って帰寮し、今日は疲れたのでスマホの電源をOFFのままで寝た。
つづく
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