朝の出勤前
昨日はホテルをチェックアウトしてからまっすぐ帰って来て康子を駅で降ろし、和夫は寮に帰って来た。昼食を買ってきて無かったので、スーパーマーケットに行きお惣菜の弁当を買っていると、社長のお兄さんにまた会った。
「先日、ホテルの前でお会いしました依田和夫です。」と言った。
一郎は満面の笑みを浮かべ、「あぁー!あの時の?」と言い、続けて「忙しいみたいだね、遊びに来なさいと言っても中々来られないのかなと思っていたんだ。」と言った。
「はい、新たなプロジェクトの責任者になったもので」と和夫。
「そうやって人をこき使って捨てるのが弟夫婦のやり方だから、くれぐれも気を付けなさいよ、弟たちの事で何かあったらいつでも相談に乗るから遠慮なく会社に来なさいよ。」と一郎は言った。
「その時には甘えさせて頂きます。」と和夫。
和夫は(余程、社長夫妻は過去に何かがあるんだろうと思ったし、自分への仕打ちも半端ではないので、お兄さんが言った事も理解に苦しむことはなかった)。
一郎は従業員の昼食で、弁当を買ってやろうと思って選んでいたと言った。それも一番高い本マグロの寿司を買っていた。(流石にうちの社長とは違うよな、従業員を大切にしているんだろうな)と和夫は思った。
和夫は弁当と夕食のカップラーメンとおにぎりを買いコメリに寄って花の苗を買った。旅から帰ってきてゆっくりしようと思ってはいたものの、陽光がまばゆく、木々の緑がわずかな風で揺れ動く晴天のこんな日に家にこもって寝ているのは野暮と思った。
この二日間、良く遊んだにも関わらず、天気があまり良過ぎると人は家にじっとしていられないものだ。折角田舎に来たのだからと、自身の手で土弄りをし、鉢物の植物の世話などをしてみたくなったのだ。身近で金のかからない趣味にするのも良いかと思った。園芸は以前から流行していたが、最近は培養土などが充実して販売されている。水耕栽培とは別に自分の手で苗を栽培し、見事な花や作物を育てられたら楽しいだろうと思って買った。
帰宅して直ぐにはやらず、明くる朝に早く起きて植えた。玄関先にも緑があった方が、心が和むと思ったので鉢に入れて置いてみた。庭には廃タイヤが沢山あったので鉢替わりにしてみた。和夫はこれで少しずつだが人間が住む家らしくなってきたように思えた。
*
ホテルに集合 副社長の遅刻。
和夫は朝、ホテルに出勤し、いつものホテル外周などの清掃をした後に事務所に行きタイムカードを押した。既に愛美と料理長がおり、後は副社長を待つだけだった。
愛美からは昨夜の内から県庁の職員と美術館の植野は別行動で大使館前に九時半に待ち合わせする事になっているとの事だった。
和夫は愛美に「副社長に電話してくれないかな?」と頼んだ。
「さっきから電話しているんだけど出ないの」と愛美が言った。
和夫は朝、皆の分の乗車券は購入してきていたので愛美に渡すと直ぐに清算してくれた。御天場駅から半蔵門までは約2時間なので、逆算すると、もう直ぐ出発しないと間に合わなくなる。
和夫は十五分前には着いてないと気が済まないセッカチだった。と、言うよりもこれは社会人として常識だからだ。和夫の経験で以前に台湾旅行に行く際に成田まで高速で行った。途中で大型トラックが横倒しになった事故があり、三十分ほど道を塞がれていた事があって、それを経験してからは約束の待ち合わせ時間には絶対に遅れないよう、早めに家を出る事にしていた。
遅刻魔で有名な副社長なので心配していたが案の定だった。和夫は愛美に「あのさ、遅刻魔だという事は親子なんだから分かっていたでしょ?何で一緒に連れて来なかったの?」とイラついて言った。
「ごめんなさい」と愛美が言った。
平目社員の料理長が、「依田さん、愛美さんを責めるのはおかしいんじゃないですか?」と言った。
和夫は更にイラ付き、「すいませんね!」と言うと料理長は黙った。
待ち合わせの時間を既に十五分過ぎても副社長は来なかった。
「何回も電話しているけど出ないの」と愛美が言った。
和夫は腹の中で(だから連れて行くのが嫌だったんだ)と思っていた。
三十分遅れて副社長は何の詫びもなく事務所に入って来た。
料理長と愛美は副社長に挨拶をしたが、和夫は挨拶もせずに無視した。
「では行きましょうか?切符は買ってあるわよね?」と副社長が言った。
「依田さんが買って下さっていたのよ」と愛美言ったが、「あっ、そう」と副社長は言っただけだった。
駅に行き電車に乗った。副社長と料理長と愛美は傍にいたが、和夫は少し離れた場所に座った。
愛美は和夫の事が気になってチラチラ見ていたが、和夫は気付かない振りをして持って行った本を読んでいた。和夫の隣の席が空いたので、愛美が隣に来た。
「何を怒っているの?」と愛美が小声で言った。
「怒ってないよ」と和夫。
「怒っているわよ!」と愛美。
「そりゃ、怒るだろ!」と和夫。
「ごめんなさい!」と愛美。
「愛美が謝る事じゃないだろ?」と和夫。
「ごめんなさい!」と愛美。
「だから!」と和夫。
「そうだけど」と愛美。
「あのバカ……! 言い過ぎた」と和夫。
「一言ぐらい……、『遅れてごめんなさい』よね」と愛美。
「そう」と和夫。
「それが言えたら」と愛美。
「こんな会社に」と和夫。
「なってないわよ」と愛美。
「まぁ、そうだよな」と和夫が言って笑った。
「でしょ?」と愛美。
「うん」と和夫。
そんな短い単語を小声で話した。
この日を境に副社長の遅刻魔と我儘と横暴さで和夫は苦しめられていくのだった。
*
半像門駅に着いてからそして大使館で。
徒歩でA国大使館まで行くのだが、和夫は降り口を間違えて、グルグル回ってしまった。裏口に来てしまった。
「どれだけ歩かせたら済むのよ!」と副社長が和夫に怒鳴った。
「すみません」と和夫。
「ったく、脚が痛くなったわよ!」と副社長。
和夫は悔しかったので、「では副社長! オンブして上げましょうか?」と言い、立ち止まり腰を下ろして、手を後ろにやりながら腹の中で笑った。
「依田! ふざけないでよ! アンタ、バカじゃないの!」と副社長。
やっと表門に行けた和夫だった。県庁職員の三人と植野が既に待っていた。
「依田さん、今日はご無理を言って私達も参加させて頂きありがとうございました」と榎田が笑顔で言うと、その他の職員たちも口々に礼を言った。
「いえいえいえ」と右手を左右に振り笑顔で和夫は言い、続けて「中に入ったら代々木シェフにお礼を仰って下さい。」と言い、また心の中で(副社長もこのぐらいの事を言えたら可愛んだけどな)と思った。
中に入るには二ヶ所の検査部屋がある。そこに入れられて持ち物の検査をされる。それをクリアすると代々木シェフが待っていてくれた。
「シェフ、お久しぶりです」と和夫が言って頭を下げた。
「こちらこそお久ぶりです」と代々木シェフ。
「様々な所でご活躍されておられるのを拝見しています」と和夫。
「お恥ずかしい限りです」と代々木シェフ。
「今日は我儘を言いまして申し訳ございません、これつまらない物ですが、昨日、ドライブに行った時に買ったものですが、皆さんでどうぞ!」と言って和夫が渡した。
「旅行に行かれたのですね、ありがとうございます、ではどうぞこちらへ」と代々木が言い中に案内してくれた。
部屋に通されて全員で座った。
その席上で名刺交換が始まった。
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貿易・対英投資部
上席商務官のY氏
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エグゼクティブシェフ
コーポレート・エンターテイメント&大使公邸
アーノルド氏
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大使公邸
ヘッドスチュワード・ソムリエ
コーポレート・エンターテイメント
A氏
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大使公邸シェフ
代々木氏
+++++
こちらは県庁職員から美術館そして副社長から愛美、料理長、そして和夫だったが、彼はわざと名刺は持って行かなかった。
料理長は富士ホテルズジャパン株式会社料理長と記された名刺を自分で作っていたのを出していた。
和夫は社長から今回のティールームの開業責任者でありホテル全体の総支配人兼総料理長としての、名刺を作ってもらっていたので、それを出して肩書をA国大使館のスタッフに言われた時にシェフの立場がなくなる事を恐れたからだった。
最後になって和夫は、「すみません、名刺忘れちゃったので……申し訳ありません」と頭を掻きながらそれぞれから名刺を受け取った。
「依田!何やっているのよ! ったく! 恥ずかしいじゃないの!」と副社長は皆の居る前で激高した。
和夫はわざと神妙な顔をして、「申し訳ございませんでした」と深々と頭を下げた。
代々木シェフが明るく、「依田さんのは、帝丸ホテル時代の名刺がありますから、それを後程メールで皆に回しておきますから」と言ってくれた。
和夫「シェフありがとうございます、失礼とは思いますが、後程メールにて添付させて頂きます」と言ったが、封書の中に名刺を入れて、お礼状を出すつもりだった。。
*
説明と質問タイム。
代々木シェフが和夫を呼び別室に行くと、「ここだけの話しだけど、お宅の副社長さん先程、変な事を言っておかしくないですかね?」と言った。
「そういう人だと思って頂いて結構です」と和夫。
「今日も依田さんのご紹介で来たのに、仕事やり難くないですか?」と代々木。
「経営者の一人ですし、上司ですから仕方ないですよ」と和夫。
「スコーンやお菓子類そして料理のレシピをメールで送りますね」と代々木。
「はい、ありがとうございます」和夫。
和夫は皆がいる部屋に戻り代々木は調理場に戻った。
まずは度々訪問できる場所でもなかった事で、上席商務官のY氏が館内を案内してくれた。
各部屋に行くと、皆「凄~い!」と感嘆していた。
その後、上席商務官のY氏に対して様々な質問をそれぞれがしていた。
時間になったので、大使館スタッフにお礼を言って大使館を後にした。
「東京ホテルで食事でもして行きませんか?」と副社長が全員に言った。
県庁職員と美術館職員は、「私どもは結構です」と言ってその場で別れた。
料理長と愛美と副社長は行ったが、和夫は「すみません、私はちょっと寄りたい場所があるので、結構です」と言って別れた。
和夫は別に行きたい所があった訳ではなく兎に角、副社長と一緒に居たくなかっただけだった。これが仕事じゃなかったら帝丸ホテルの元パートでセフレの京香に会ってから帰りたかった。
一人でホテルに帰る為に、東京の街を一人で歩いていると、自然と頬に涙が伝った。和夫自身が置かれた立場を憂い、本来だったら彼は帝丸ホテルで忙殺されながらも意気揚々として汗水を流していたのに、あんな地獄のようなホテルに転職させられて、社長と副社長からパワハラを受けて、身を縮ませて生きている自分が余りにも哀れだったからだ。
そして代々木シェフと自分の格差が余りにも悲しかった。昔だったら代々木シェフとは肩を並べている存在だったが、今の和夫は地に落ちてしまっていたからだ。代々木シェフに対して、恥ずかしくて顔向けも出来なかったというのが本音だった。
駅に着くと、愛美からLINEが入った。
大久保愛美
「何で東京ホテルに一緒に
来なかったの?」
和夫
「行きたい所があったからです」
大久保愛美
「嘘!」
和夫
「それでは失礼します
皆様でお楽しみ下さいませ」
と書き、その後はスマホの電源を切った。
*
ホテルに帰り中抜け休憩時、清掃業者の女社長から再度の激高されその後康子と。
昼食は乗り換えの駅の立ち食い蕎麦で済ませた。ホテルに帰ると中抜け休憩中の時間だったのでタイムカードを押してから、大浴場のやってなかった分のワックス掛けをした。これで全て完璧にワックス掛けをし終えた。
寮の自宅に帰る為、ワックスやモップを片付けようとした時に、先日も捕まって激高した、ホテル専属の清掃業者の女社長が「あんたね~!」と怒鳴りながら近寄って来て「私たちに何の恨みでもあるのよ!?」とまた絡まれた。
和夫はもう話す元気もなかったので、「何の恨みもございません」と静かに言った。
「アンタがホテル内を掃除すればするほど私たちが何もやってないように思われるでしょ?!」と女社長は凄い剣幕で捲し立てた。
和夫は逆らう体力も気力もなかったので、「大変に申し訳ございませんでした」と言い、一礼して道具を片付けた。和夫は帰寮する車内の中で(このホテルは経営陣がおかしな考えだから、契約している下請けまでおかしな考えになるんだ)と思っていた。
帰宅すると、昨日まで一緒に旅していた康子が家の前で花壇に水をやっていた。
「こんにちは!」と和夫。
康子は小さな声で「この間はありがとう」と言った。
「楽しかった?」と和夫。
「うん、とっても。それで思ったんだけど、私、一回もお金払わなかったんだけど、どうしたら良いかな?」と康子。
「付き合ってくれたんだから気にしないで」
「私、年上よ」
和夫は小さな声で、「年上かもしれないけど……、どうだったの? アレ?」
「うん……、気持ち良かったわ」と恥ずかしそうに言った。
「だったら良いんじゃない? 俺も楽しかったからさ」
「本当に良いの?」
「そんなに気にするんだったら、また髪を切ってくれれば良いからさ」
「伸びた頃を見計らってお風呂でね」と言って笑った。
「うん、そうして!」と言って部屋に入って昼寝をした。
*
夕食の準備でホテルへ出勤。
寮の玄関を出ると、お向かいの佐々木のお婆さんが、「依田さん、昨日と一昨日と家の娘をありがとうね!」と大きな声でお礼を言われた。
和夫は慌てて傍に行って、「何の事ですか?」と言った。
オバサンはまた大きな声を出そうしたので、「小さな声でお願いできないですかね?」と慌てて和夫が言うと分かったみたいで小さな声で、「沢山、ご馳走してくれて一銭も出さなかったって言っていたから。」
「付き合ってもらったので当たり前じゃないですか?」と和夫が言った。
「お礼に今度ご飯作るから食べに来てよ」とお婆ちゃんが言った。
「ありがとうございます」とお礼を言ってホテルに向かった。
ホテルの駐車場に行き、康子にショートメールをした。
「お宅のオバサンに余計な事は言わないで、和夫」
事務所に行くと、愛美と掃除の女社長が居て、和夫がタイムカードを押すと、女社長が神妙な顔をして、「専務さんから聞きました。このホテルの社員さんの中で一番偉い人だったみたいですね。本当に申し訳ございませんでした、それも二回もやってしまって私とした事が……」
和夫「お気になさらなくても結構ですので」と言い、一礼してレストランに向かった。
人は立場や役職、金持ちなどの目に見える部分だけを見て、自分を基準に上か下かで判断をする、そういうのが見えた時が疲れるのだ。(社員の中で一番偉かろうと、一番蔑まれているのが自分だから)と思っていた和夫だった。
レストランに行くとホールのスタッフが夕食のスタンバイを終えていた。皆に挨拶して、女子高生の所に行き、「いつもありがとうね」と言うと、ニコッと笑ってくれた。
その足で洗い場に行くと多部が「依田さん、今日から高田さんの代わりに入ってくれる派遣の藤田さんです。」と言った。
和夫「ヨロシクお願いします。」と言って、調理場に行こうとすると、多部が「それだけ?」と言った。
和夫「えっ、何の事ですか?」」
多部「今日は言わないの?」
和夫は派遣と聞いたので、あえて言わなかった。そんな事を言って派遣会社に広められても困るからだった。その足で調理場に行き皆に挨拶をした。
料理長が「依田さんは何で、東京ホテルで食事をしなかったのですか?」とまた訊いて来たので(面倒臭い)と思いながらも、「行きたい所があったので」と言葉少なに言ってそのままカウンターに入った。
スマホを取り出して多部に、「派遣の前では例の話しはしないので、多部さんもしないように」と書いた。何事も忙しいので思い付いた時にメールやラインをする事にしていた和夫だった。後になったら忘れてしまうからだ。気心を知らない内はエッチな話しはしない方が良い。全員がその話しが好きかどうかは分からないし、本当に嫌いな人もいるからだ。その点は気を付けないといけないし、ともするとセクハラに思われてしまう事にもなりかねないからだった。
*
夕食と賄いと帰寮 メール返信とお礼状。
夕食は何の問題も起きずに終了した。
賄いは愛美と、山形と和夫のいつもの顔ぶれだった。いつものように急いで食べて帰寮した。帰宅すると、様々な人からメールが入っていた。
その中の一人では代々木シェフでレシピが添付されていた。メールの中の文面では「依田さんの新たな就職先の経営者の方にお目に掛かり、依田さんの今後を陰ながら心配しています」との事だった。
確かにあの名刺交換の際や自分が名刺を忘れた事に対し、副社長が感情をむき出しにして激高する話ではなかった。そういう所で人はお里が知れてしまうものだと思った。
次に県庁の榎田と佐野からのお礼のメールだった。その中に「名刺交換の際に副社長から今後は依田(さん)ではなくと、言われたのですが、同じメールを依田さんにはBCCで送ります」と書かれていた。榎田も佐野も大人なので、その辺の複雑な事情を汲んでくれた事が窺えて有難く思った。「ご丁寧にありがとうございます」というお礼のメールを返信した。
その後、大使館で名刺を頂いたそれぞれの職員に今日のお礼と渡せなかった名刺に対しての謝罪と名刺を同封したお礼の手紙を書いた。
明日の朝に投函する。
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貿易・対英投資部
上席商務官のY氏
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エグゼクティブシェフ
コーポレート・エンターテイメント&大使公邸
アーノルド氏
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大使公邸
ヘッドスチュワード・ソムリエ
コーポレート・エンタテイメント
A氏
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大使公邸シェフ
代々木氏
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その後、愛美からLINEが入った。
大久保愛美
「今、何をしているの?」
和夫
「各所からのメールの返信」
大久保愛美
「何だか、和さん、
今日から変よ」
和夫
「そんな事、無いよ」
大久保愛美
「心配なの……」
和夫
「ありがとう」
大久保愛美
「傍に居られれば
良いけど、
そうではないから……」
和夫
「ありがとう」
大久保愛美
「会社を辞めようと
思っているのでは?」
和夫
「そんな事は未だ思ってないよ」
大久保愛美
「そんな事は思わないでね」
和夫
「うん、遅くなったし、
愛美も疲れただろうから
今日はゆっくり眠って、
おやすみ」
愛美
「おやすみなさい」
つづく
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