正和の夢の実現として、一泊二日の滞在で大人一人十万円(食事・宿泊込み)の最高級ホテル建設の構想段階に入った。正和は創業のプチホテル経営時に、全てが親がかりの彼の経営手腕に疑問を感じて袂を分けた正社員たちが同じ御天場市内にプチホテルを建設して開業していった。正和は、その自分を裏切って行った連中のプチホテルを潰す為に、最低料金から最高料金のホテルを次々に建設して開業させていたのは、彼らに対しての復讐でもあった。
そして正和の夢は後一つ残されていた。それは老人福祉施設、いわゆる老人ホームの建設が最終目標だった。元々は正和の実母の面倒は正和の長兄夫婦が看ていたが、財産分与の件で、正和は長姉と結託して長兄の家から実母を略奪して、地元の老人ホームに入所させた。
正和の実母が認知症を患い、地元の老人ホームに入所させていたが、症状が酷くなりスタッフに暴力を振るうようになった事で退所させられた。仕方なく正和の自宅で看る事になり、正和の仕事にも影響が及ぶようになった経験から正和自身が将来、入所しても退所させられない老人ホームを自身の手で建て開業し経営したいと思ったのがきっかけだった。その施設は山下湖畔に建設したいという願望があった。
またこの実母を面倒見るという事で、親の財産の全てを姉と共謀し、長男には一切相続をさせないように仕向けた事で全財産を姉と正和で相続した。その事で元々仲の悪かった長兄と狭い地域の中で喧々囂々の争いが同時に始まり、未だに民事裁判が行われていた。(地元民の噂話しと長兄からの話しを和夫と愛美が後に聞くことになる)。
今回は正和の夢完結の為、その一つ手前の最高級ホテルの建設だった。そのホテルの料理長を紹介してほしいと懇意にしていた帝丸ホテルの総料理長の村下に頼み、一番弟子の下で勤務していた調理師 依田和夫(主人公)四十歳を紹介した。
正和は和夫の経歴とホテル内外での実績を鑑みて直ぐに気に入り、最高級ホテルが開業するまでは驛前ホテル一号館のゼネラルマネージャーとして勤務してほしいと頼んだ。
つづく
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