人生が二度あったので押し掛け女房に翻弄された男が純愛を貫き壮大な夢を叶える物語

主人公の現世では押し掛け女房に出逢い翻弄されるが、死後の異世界では愛妻と望んでいた幸せなスローライフを満喫します
K.Yoda K
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第九話 休日一日目 寮の裏のお宅の山形から昼食のお呼ばれ 寮の清掃

公開日時: 2022年4月8日(金) 15:02
更新日時: 2022年4月9日(土) 20:10
文字数:1,848

この数日の勤務だけで和夫は本当に疲れていた。一回、朝の十時に山形から電話をもらいトイレに起きたが二度寝してしまいお陰で昼前まで熟睡してしまった。シャワーを浴びて洗顔し念入りに歯を磨いて山形に電話すると昼食が出来ているとの事で塀を乗り越えて行った。

 

 昼間に見た山形の家は今時のオシャレな家で寮の大塚宅は数十年前の造りで余計に酷く見えた。ハーブまで栽培していると言い「これはチェリーセージなのよ」と言った。和夫もハーブには詳しくて山形と一緒にその話しで盛り上がった。

 

 昼食は野菜たっぷりのパスタだった。ガーリックと野菜をたっぷり入れたいわゆるペペロンチーニでスープも自家製で愛情がこもっていた。山形は和夫が料理人という事は知らなかったが「お口に合うかどうか分からないけど一生懸命に作ったから食べてね」と言った。

 

「頂きま~す!」と言ってモリモリ食べていると嬉しそうな顔をして山形は和夫の食べる姿を見ていた。

 

 全て食べ終え「ご馳走様でしたぁ!」と言った。

 

 その後、山形の夫とのベッドルームに案内された。

 

 和夫は「それはマズイですよ、山形さん。こういうのは止めませんか?」と言ったが女性がここまで言っているのだから帝丸ホテル時代だったら、とっくに手を付けていたのだがこの会社に来てからはそんな気にならなかったまた帝丸ホテルのスタッフは三千名以上いた事で人妻パートと遊んでも目立たなかったがこのホテルは余りにもスタッフの数が少な過ぎて和夫は発覚する怖さを感じていたからだった。

 

 山形は悲しそうな顔をして「そうよね、こんな皺くちゃ婆なんか抱けないわよね?」

 

「そういう意味ではないですよ。山形さんは知的だし美人だし、でもそんな事をしたら後々にお顔が見られなくなるし一緒に仕事し難くなりますから」

 

「今日は、楽しみにしていたのに……」

 

「本当にすみません」

 

「ま、良いわ。だったらココでお茶でも飲んで! 今日の話しは皆に内緒にしてよ」

 

「はい、ありがとうございます。当然ですよ。誰にこんな話を言うのですか?」と言ってソファに座った。

 

 山形はドリップでホットコーヒーを淹れてくれた。

 

 和夫はコーヒーを頂いて飲み干し「山形さん、すみません」と言った。

 

 山形は「そんなに謝らないで、悲しくなるから」と言われ、和夫はまた「すみません、ご馳走様でした」と謝って帰寮した。

 

 

和夫は社長の妾の大塚旧宅(社員寮)の清掃。

和夫は山形宅から帰って来てから先日、富田と一緒に二階の空き缶やペットボトルをゴミ袋に集めた物を車に乗せた。

 

 ホテルのゴミ集積所に持って行き、捨てようと思ったからでついでに、創業のプチホテルを今、土建屋が来て解体工事を行っているので、ベランダに置いてあった雨水に濡れていたカーペットを持って行き、捨てに行った。

 

 ホテルに行くと、田町良太がゴミ置き場に来て挨拶された。

 

 良太「昨日、(総)料理長から僕と、洗い場さんが褒められました」と言った。

 

 その後、高田と多部が出てきて「(総)料理長に褒められました。ありがとうございました」と言った。

 

 和夫は(洗い場さんまで料理長の事を(総)料理長と呼んでいる事に笑えた。怖がっていたのではないのかと)「良かったじゃないですか!?」と言った。

 

「また手伝うから」と多部が言った。

 

「私も手伝いますから」と高田が言って厨房に戻って行った。

 

 和夫はレストランが良い方向に回って嬉しくなっていると、多部が「依田さんは休みの日はどうしているの?」と訊いてきた。

 

「今日は昼まで寝て、その後は寮の掃除をしていました」と言った。

 

「今度の休みにランチしない?」と言ったので、和夫は巨乳好きで多部は普通のオバサンだが前掛けの下のセーターに隠されている大きな胸が気になっていただけだったが、どうこうしたい訳ではなかった。

 

 和夫は二つ返事で「本当ですか? 嬉しいです」と満面の笑みを浮かべて言うと、多部は「そんなに喜んでくれて私も嬉しいよ。でも誰にも内緒だよ」と言い、「明日にでも電話番号を渡すから」と言って厨房に帰って行った。

 

 ただ、勿論、和夫の妄想をしていただけで、実際に山形同様に多部と身体を合わせる気は毛頭なかったし、仕事が遣り易くなるので、一緒にランチをするぐらいは良いと思っていた。

 

 その後、ベランダに出されていた雨水に濡れた重いカーペットを捨てに行った。和夫はこんな事までする為に帝丸ホテルを辞めた訳ではないと自問自答していた。こんな酷い扱いを受ける為に富士ホテルズジャパンに転職したつもりは全くなく、自身の運の悪さを憂いていた。

 

 つづく

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