自宅にて。
晩飯とお風呂、勉強を一通り終えて、一息ついていたとき、
「今日は頑張っていたわね」
無表情娘、もとい前橋さんからの突然のお褒めの言葉。
「でも、あれは、愛ちゃんは妹って感じがしたし、だからあまり緊張せずに話せたのかもしれない」
「その『ちゃん』付け呼びをあなたがすると何か犯罪めいた匂いがするから嫌なのだけど」
「うっさいな。あの子がそれでいいって言うんだからそれでいいだろ」
「きっぱりと呼び捨てにできないなら、高得点はあげられないわね。今日のところは及第点ってとこかしら」
なんだよ。
褒めてくれたかと思えば、機嫌悪くなりやがって。
ツンデレなんですか! でも、デレてるところは見たことないし、いつも冷めた表情だ。
それっぽく言うなら、クールでツンツン……
クーツンか!
うん。ダサいからこれは広まらないな。
「なにをとぼけた顔をしているの? せっかく応援してあげているのだから、もう少し応援のし甲斐を感じさせてほしいわ」
イラッ
さすがにイラついてきたぞ。
いくら妹っぽいとはいえ、ちゃんと女の子とお話ができたんだ。
もう少し優しさを見せてくれてもいいんじゃないですかね?
だったら見せてやるよ。
俺はできる男だってな!
「ねぇ、ちゃんと聞いて————」
「静香」
「えっ」
しっかりと前橋さんの目を見て、呼び捨てにしてやった。
前橋さんは、最初何が起こったのか分からないような顔をしていたが、段々と耳の辺りが赤くなり始める。
それを見て我に返る俺。
あれ……俺……呼び捨てにしたよね……?
あぁぁぁぁぁ!!!!!!!!
そのまま立ち尽くし、恥ずかしさといたたまれなさと後悔を含んだ複雑な顔をしていることだろう。
思わず顔を覆う。
そして前橋さんは、静かに、そして激しく、俺の腰のあたりをポコポコ殴り続けるのだった。
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