光と茜の差分

裏組織のトップエージェントが超絶美少女になって世界を救う
天澤清二朗
天澤清二朗

第98話 ~レゾナンスキラー~

公開日時: 2023年9月30日(土) 14:09
文字数:6,884



「おう来たかっ、こっちは今優勢だ」


 各隊長達が揃ったからか、長島が少々の余裕を持ちながら赤鬼への構えを解かず一言。

 赤鬼の苦痛で歪む表情から判断するのであれば優勢と言えば優勢なのだろう。だがそれは茜が腕を切り落とし、その隙をついたに過ぎない。

 そして赤鬼は長島の挑発を受けて表情が怒りで歪む。


「ナニガ優勢デスカッ! イイ気ニナルンジャナイデスヨ!」

「お、あいつは……」

「ああ、四年前の」

「本当に赤鬼っすね」


 大島、中島は四年前のリベンジとばかりに睨みつけ、小島は初見なので目を丸くする。

 各々思う所はあるだろうがそんな時間は無かった。

 次の瞬間、赤鬼は床の畳がめくれ上がるほどの踏み込みを見せ、一瞬で長島との距離を詰めていたのだ。


「なっ」


 赤鬼初手の拳が長島を襲うが寸でのところで躱した。

 だが一発では終わらない。二発三発と拳は打ち込まれていく。その巨体からは想像もできないくらいに拳は早く、長島でも避けきる事が出来ない。

 

「くぅ」


 長島は腕でガードする。しかし共鳴力で強化しているとはいえ、それで耐えれる程赤鬼の拳は軽くはない。

 次々と襲い来る拳に応えるように長島の悲痛なうめき声。

 悪い事に長島は盾を捨ててしまっている。生身で赤鬼の拳を耐えるには限界があった。

 しかしそこで赤鬼の連打が止まる。それはまた茜が赤鬼の腕を切り落としたからではない。


「おいおい、うちの総隊長をボコってんじゃねぇぞ! 赤鬼野郎!」


 大島だった。持ち前の怪力を生かし拳を繰り出す腕ごと小脇に抱えて関節をきめ、放さない。


「アノ時ノ力自慢デスネッ」


 赤鬼も大島の事を覚えていたようだ。

 強化型の等級が同じでも個人差はある。その中でも大島は力が一つ抜きんでているようだ。


「久しぶりだな! てめぇを今日、ここで張っ倒す!」

「ヤレルモノナラ」


 赤鬼はもう片方の腕を振り上げようとする。


「ヤッテミ――」

「そんな事はさせないさ」


 赤鬼は片膝を地面について体制を崩してしまう。

 

「何!?」


 中島が赤鬼の膝裏を蹴り膝を突かせたのだ。更にもう片方の手を後ろ手に捻って引いて、関節をきめる。


「前もこんな感じだったな、赤鬼っ」

「ソー……アナタモイマシタネ」


 赤鬼の左右を大島と中島で挟み羽交い絞めにする。


「バット、コノ後アナタ達ハ私ノフルパワーデ吹キ飛バサレタノデハ?」


 赤鬼はニヤリと笑い大島を不気味に睨みつける。

 関節をきめた所でどうやら赤鬼は意に介していないようだ。


「ああ、だろうな」

「でも前と違うのはここに小島がいるという事だ」

「そういう事っす」


 何倍にも膨れ上がった赤鬼の肩。

 トンっと、小島が小気味よい足音を響かせて乗り上げる。その右腕には共鳴力の濃度が濃くなっているのか、小島の小さな拳が歪んで見える。


「はあああ!」


 小島の掛け声と共に振り降ろさる拳。

 強力な共鳴力が拳から放出される。大きな岩ですら粉々に破壊する小島の共鳴力。

 続いて強烈な衝撃波の余波が周囲を襲う。


「どうっすか!?」


 そして命中した赤鬼の頭は粉々に吹き飛んで無くなってしまった。


「やったか!?」


 頭が吹き飛んだ赤鬼の体から一度皆距離を取る。

 支えを無くした赤鬼の巨体は鈍い音を立てて倒れ、動かなくなった。


「どうやら……やったみたいだな」


 右腕を負傷したのだろう。長島は苦痛に表情を歪ませながら腕を抑えて呟いた。

 各隊長達も少し離れて注視するがしばらく経っても動かない。


「皆さん気を付けて……腕を飛ばしても生えてくる怪物ですよ」


 だがそこで茜がそう警告する。

 飛空艇アシェットではクリスがバドルの頭を打ち抜いたが一度は倒れたものの復活したのだから。

 それを聞いて皆再度赤鬼を見るがやはり動かない。頭も生えてくる気配がない。


「まあ頭を飛ばせば死ぬだろう」

「ゾンビゲーの基本っすね」


 中島も小島も警戒をといて一息つく。


「おい、長島っ、大丈夫か!?」


 大島は長島に駆け寄った。

 機動隊総隊長である長島は先程赤鬼の巨体から繰り出された拳を数発受けてしまっている。


「ああ、だが右腕だけだが……骨がいったなこりゃ……」

「立てますか?」


 だらんと腕を垂らして苦々しく笑う長島。森島に支えられてやっとの思いで立ち上がる。


「やったんですね」

「ああ、リベンジ成功だ」

「赤鬼も大した事なかったな!」

「ああ、後は制圧するだけだ」

「長島さんは休んでおくといいっすよ」


 と、既に勝ちは確定したと、それぞれの表情からは笑みがこぼれている。

 本当に赤鬼は死んだのか。ここからは茜も分からない領域だった。

 バドルは頭を銃弾で撃ち抜かれても平気だった。だが今回は頭を完全に吹き飛ばしている。小島の言うように死んで動き出すゾンビも頭を吹き飛ばせば死んでしまうのだ。

 そんな完勝ムードの中、茜だけは赤鬼の状態を未だに注視していた。まるで死んだようにピクリとも動かない。


「死んだのか……本当に?」


 更に茜はある人物も注視していた。それは若頭と呼ばれる獄道魁人だ。

 魁人は赤鬼に命令したり喝を入れたりと色々口を出していた。だから赤鬼の事を良く知っているのではないかと。

 玄とジュリナはおろおろとうろたえている。対して魁人は壁に寄りかかって腕組みをしたまま体勢を変えることはない。表情すら一切変える事もない。

 本当に死んだのだろうか、と茜が赤鬼と魁人を交互に見て魁人を見た時だった。

 魁人の口角が上がる。

 茜は全身を悪寒が走るのを感じ、目を見開いた。


「まだ終わってない!」


 茜は赤鬼の状態を確認するよりも先に口を開く。そして振り向いたその先には信じられない光景が広がっていた。

 頭のない赤鬼が立ち上がり、頭が瞬く間に復元していくのだ。


「え?」


 長島に肩を貸す森島が振り返ると山のように大きな体を持つ赤鬼がすぐ後ろに迫っていた。

 あまりの出来事に皆一瞬体が硬直しあっけに取られてしまう。


「油断大敵デスネ」


 赤鬼の頭は下半分だけが修復されている。完全に修復されていなくても喋る事ができるようだ。

 そして避ける暇もなく、近くにいた中島と小島を赤鬼の手足が襲う。


「くそっ!」


 中島は何とか手で盾を作るが長島同様、防ぎきれるものではない。

 赤鬼の拳は中島の左腕ごと体を捉えていた。肉が押しつぶされ、筋肉の繊維がぶつぶつと切れていく。更に骨の折れる音。その骨が皮膚を突き破って出てくる生々しい音。

 

「ぐぁ」

 

 その衝撃は胴体にまで及ぶ。恐らく肋骨まで衝撃は達しているだろう。

 中島は吹き飛ばされ壁に激突する。

 そして赤鬼の強襲の範囲には小島もいる。小島は後退って避けようとするが距離が近すぎた。


「やばっ」


 殺される。

 そう小島の頭によぎった言葉を目の前に出てきた巨体がかき消した。

 大島は両腕を前に出して盾を作るがバリーの怪力の前にそれも無意味だった。盾は簡単に破壊され、骨の折れる音と凄まじい衝撃が大島を襲う。更にその衝撃で吹き飛ばされ、小島に激突し二人とも吹き飛んでいった。


「中島! 大島!」

「小島さん!」


 長島と森島が叫ぶ。

 バリーの言う通り、皆油断し過ぎていた。だがそれも仕方のない事だった。頭を吹き飛ばしても尚、起き上がって来るとは誰も予想出来なかっただろう。そしておそらく赤鬼は死んだふりをして隙を伺っていたに違いない。

 茜も未知の領域。茜のフォロー虚しく戦力が大幅に削られてしまった。


「くそっ……左腕がやられた……あばらも何本か」


 中島は左腕を抑えてよろよろと立ち上がる。何とか致命傷には至らなかったようだ。

 だが大島は違った。


「いてて……すまないっす大島さん。大丈夫っすか?」


 小島がすぐ傍に一緒に吹き飛ばされてきた大島に駆け寄って抱き起す。それとほぼ同時だった。

  

「ガハッ……ゲホッ」


 大島が吐血した。あばらが折れ、どこかの臓器に刺さってしまったのだろう。

 大島は咳き込み、上手く息が出来ないのか呼吸が荒く苦しそうな表情。


「しっかりするっす! 大島さん!?」

 

 状況が一転する。

 優勢だった状況から怪我人が続出してしまった。

 

「小島! 大島を隊員に渡せ!」

「は、はいっす!」


 長島が命令し小島は大島を引きずりながら出口へ向かい別の隊員に引き渡す。


「アララ、勢イ勇ンデ乗リ込ンデキタ割ニ、随分ト早ク帰ラレルノデスネ。マダオ茶モ出シテイナイトイウノニ」


 赤鬼が長島の命令を聞いて嘲笑し挑発する。


「デスガ、コレダケ土足デ踏ミ荒ラシタノデスカラ報イハ受ケテモライマスヨ」


 更に赤鬼は嘲笑を不気味な笑みに変えて敗走する大島と小島を追走する。

 戦闘不能になった大島にとどめを刺すつもりだろう。

 その時、長島が口を開き、叫んだ。


「作戦Bを開始する!」


 長島の声に赤鬼の足は止まった。

 

「オヤ? 作戦Bデスカ?」

 

 赤鬼は第二の作戦に警戒しているようだ。


「作戦B!」

「作戦Bだあ!」

「作戦B!」


 機動隊員達は次々に叫び作戦変更を伝えていく。

 すると大広間の入り口から大勢の機動隊が雪崩込み、二列横隊を作り出す。

 前列は片膝を突いて身を低くし、手には警官標準装備の拳銃が握られている。

 そしてその銃口は全て赤鬼に向けられていた。


「撃て!」


 横に並んだ機動隊は銃を構え一斉に発砲する。

 何発もの銃声が鳴り響き自動小銃のように破裂音を鳴り響かせる。

 辺りは硝煙で視界が悪くなり、火薬の臭いで溢れかえる。

 だが肝心の赤鬼は巨大な腕でガードし、あまり堪えていないようだ。


「ナンデスイマサラ? ソンナモノキキマセンヨ?」


 更にニヤリと笑う余裕まである始末。

 そして弾は無限にあるわけではない。全て打ち込めば再装填する隙ができる。それが機動隊員達の命が終わる時だ。

 かくして、徐々に射撃の間隔が間延びしてきた。


「ハハハッ、撃チ止メデスネ! デハソロソロ」

「こっちだ怪物!」

「ハーン?」


 赤鬼が見れば壁に背を預け、左腕を負傷した中島がいた。その右手には他の機動隊員達と同じ拳銃が握られている。

 何を今更と、赤鬼は片唇を引き裂かんばかりに釣り上げ白い歯を見せる。


「ダーカーラー、意味ガナインデスヨ! 馬鹿ナノデスカアナタ達ハ!」

「くたばれ」


 中島は赤鬼を真似して片唇を釣り上げて笑う。

 そしてトリガーが引かれた。





◇昨日、第一会議室



「作戦B?」


 長島がそう茜に問い返す。


「そうです。皆さんが強いのは分かります。ですがその作戦が何らかの理由で頓挫した時の事を考えておくべきです」


 茜は不安だったのだ。

 もしもその赤鬼が終末の悪魔だった場合、達人等級が四人いるとはいえ苦しいかもしれない、と。

 バドルは何本もの触手を操っていた。だから単純に比較する事は出来ない。しかし同等とはいかないまでも未だ不確定要素が大きい。どんな能力を持っているかもわからないのだ。


「他に何か秘密兵器とかある人いらっしゃいますか?」


 茜が冗談交じりに言うと長島が手を上げる。

 

「俺は一つ、手榴弾を持ってきた。四年前の突入時に返却し忘れていたものだ」」

「手榴弾ですか」


 手榴弾もかなりの破壊力はある。だが小島の共鳴放出と同じくらいの威力だ。逆境を一転させるものではない。


「他には?」


 すると一人だけ真っ直ぐに手を上げる男がいた。

 中島だった。


「はい、中島さん」

「俺はさ、一応武器開発の科学研究課にいたんだ。そこで、まだ試作段階の弾丸を一発だけ……無理言ってもらってきた」

「弾丸?」


 中島は上着の胸ポケットから手のひら大のケースを取り出した。それを開くと一発の弾丸が動かぬよう固定されており、鈍く光っている。

 

「それは?」

「通称レゾナンスキラー」


 中島は怪しく笑い、その弾丸を二本の指で掴んで見せる。

 茜は目を輝かせてそれをみる。

 

「れ、レゾナンスキラー!? 何ですかそのカッコイイ名前の弾丸は!?」


 茜はいつの間にか中島の目の前にまで身を乗り出していた。間にいる長島と大島の上から身を乗り出して。

 老会達の思惑を知りたいという欲求然り、古代の遺物での釣りも然り。茜の好奇心は今に始まった事ではない。新しい技術に興味津々なのだ。


「ちょ、茜さん……太ももが」

「お嬢ちゃん、胸が当たってんぞ……まあいいけどよぉ」


 茜はそんな事関係ないとばかりに身を乗り出したまま。

 長島と大島は剣のように女性に耐性が無い訳ではないのだろう。いい大人だ。だが顔をニヤつかせている事には変わりはない。

 それを小島と木島ににじっとりと睨まれて二人共表情を正す。


「それで、そのレゾナンスキラーとは!?」

「あ、ああ。君ミリオタか何かかい? まあいいか……見た目は普通の9ミリ弾。だがこの弾丸は今では禁止されてるダムダム弾を使用している」


 中島の言うダムダム弾とは人体に当たった弾丸が潰れて弾け、その破片が体内に残ってしまうという危険な弾丸だ。


「その体内に残った破片がレゾナンスの共鳴力に反応して共鳴し始める。ターゲットとなったレゾナンスとは逆の位相でな」


 長島や森島達は皆一様に首を傾げている。誰もピンときていないようだ。

 だがそこで茜がつまり、と口火を切る。


「イヤホンとかに使うノイズキャンセリングみたいなものですか?」

「ん……まあ、君の言う通りだ。理解が早いね」


 全て説明し終わる前に茜が結論を言ったので中島は消化不良のようにうなだれてそう言った。

 共鳴力はレゾナンスの意思に合わせて共鳴する。それを操り、身体能力を強化したり物を破壊することが出来るのだ。だがその共鳴と逆位相の共鳴を引き起こし相殺すればレゾナンスは共鳴力を使えなくなる。という原理だった。


「効果は五秒程度。まあ五秒もあれば小島が倒せるだろ?」

「余裕っす」


 だがそこで茜が疑問を口にする。


「それならもう実用出来るのでは? 何故試作品なんですか?」

「ああ、それね……」


 中島は言いにくそうに口を開く。

 通称レゾナンスキラーはその仕様上、弾丸の破片を体内に留めるダムダム弾を使用しなければならない。だがそれは国際的に使用を禁止されているのだ。実際に使用したと分かればただでは済まないだろう。


「だから無理言って、というよりもその……さ、分かるだろ?」

「……盗んで来たと?」


 茜はジト目で中島を見つめる。

 中島はそんな茜にたじたじだ。

 その弾丸を作った科学研究課も国際ルールに違反した弾丸が紛失し、バタバタ慌て始める頃かもしれない。


「秘密だよ? 可愛らしいお嬢さん」


 という事で作戦会議は終了し、各自獄道組突入の準備にひっそりと取り掛かるのだった。

 茜の役目は終わった。だから帰ろうとしたところを木島に呼び止められた。


「あ、茜ちゃん」

「え? あ、木島さん、どうしました?」

「ごめんね、ドッキリ失敗しちゃって」


 と、申し訳なさそうに謝って来たのだ。


「いえいえ、でもまさか木島さんと森島さんが恋人同士だったとは想定外でした。まあ結果的に森島さんを説得する事出来たのでオッケーです」


 茜はアルドマン孤児院での警官の反応を見て説得は簡単だと高を括っていた。

 だが森島の粘り強い抵抗に手を焼いてたところだったのだ。木島がいなければ森島を説得できなかったかもしれない。


「まだ恋人ではないんだけど」

「え?」


 小島が言っていた。突入前に告白していたと。

 恐らく森島はその返事はまだもらっていないのだろう。


「何故自ら死亡フラグを立てに行くような事を……」

「死んだことにされたのは私だけどね……それで茜ちゃん。私に何かできる事ある?」


 今回木島は作戦に参加していない。突入部隊からも外されているのだ。死んだ人間が生きて隊に加わっているとしたらちょっとした騒ぎになってしまう恐れがあった為。

 だが木島も獄道組を潰す為にやって来たのだ。何もせずにはいられないのだろう。と言っても長島達からは外れろと言われている。

 だから茜に何かないかとやって来たのだろう。


「うーん、じゃあ、一つ頼みが」

「何でも言って! 茜ちゃん!」



◇獄道組


「な、なんですかこれは……」


 茜の体程もある太い腕と天井に頭が付きそうなほどの巨体がみるみるうちに萎んでいく。

 更に赤い肌は黒く、赤鬼に変身する前のバリーが姿を現した。

 

「ナ、ナ、何故デスカ!? 共鳴力モ使エナイデスヨ!?」


 バリーは信じられないと両の手の平を交互に見る。更に体をくまなく見回すがもう完全に赤鬼になる前の体に戻ってしまっている。

「小島ああ!」


 バリーに銃弾が撃ち込まれた直後、間髪入れずに中島が叫ぶ。


「もういるっす!」


 小島は既にバリの目の前にいた。右腕には共鳴力をたぎらせて。


「ウ、ウェイ――」

「終わりっす!」


 小島の拳はバリーの顔面を真正面から殴りつけた。

 勢いそのままに共鳴力が放出され、バリーの頭が消し飛んだ。畳にはバリーの血が吹き付けられたように放射状に飛び散っている。

 バリーは人の形のまま後ろに倒れたのだった。


「今度こそやったっすね!?」


 小島はバリーの首無しの体がまた動きださないか注視している。

 茜もまたその体と魁人を交互に見る。魁人は腕組みを解き、壁にもたれていた体を起こす。そして口元は歪み、あまつさえ舌打ち。

 

「……どうやらそうみたいですよ」


 それを見て茜もそう小島に言い聞かせる。

 その時だった、バリーの体がビクンと動く。


「はっ!?」


 小島はその動きにびくついて拳に共鳴力を急いで溜め直す。

 だがその後、バリーの体は動くことはなかった。

 こうして長島、大島、中島と負傷者は出たものの、四年越しの復讐劇は幕を閉じたのだった?


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