「ガァーッ、ガァー」
「ゴロゴロ、にゃわわわ。」
ーカランッ、猫族の女性の手から空になった瓶が落ちる。二人の座席には開けられたままのトランクと空の瓶が散乱していた。
お腹を出しながら眠る猫族の女性、瓶を抱えたまま床に眠る鉱山族ドワーフのおじいちゃんは周りの乗客に介抱されながらこの便の終点『長越』へ向かい、また『霧江』へと戻る。
「にゃい!!ミャーのまたたびがぁ〜!!にゃぁぁぁいぃぃぃ!!」
車内では女性の叫び声がこだました。
◆
「ただいま帰ってきましたー!!」
オフィスの扉を開けて挨拶をする。すれ違う人たちが皆んな「お疲れ様」と声をかけてくれる。だがヒソヒソと隠れるように「ご愁傷様」と聞こえる。ハーフエルフの麗奈さんがこちらに近づいてきてにっこりとしている。あれェなんか嫌な予感が……
「春ニくん、お疲れ様。何か変わったことがなかったかな?」
「さ……さぁ?」
麗奈さんの後ろには正座でしょんぼりしているドワーフのおじいさんと涙を流す猫族の女性がいる。
「仲良くお喋りしてたお二人?」
「仲が良すぎて車内で大騒ぎだったんだってね。でもそういう時は私たちが対処しないとだよね〜。
はい、そこに並んで正座しなさい。」
綺麗で一瞬で骨抜きになる笑顔の後ろには、般若が見えた。炎と謎のゴゴゴッって感じの効果音のおまけ付きで。
「「「ヒィぃぃ」」」
三人はそれから麗奈さんの気が済むまでお説教された。
(((もう二度と怒られないようにしないと。)))
だが繰り返す、彼女はまた月照帝国へ、おじいちゃんはお酒を買いに行く。そしてまた神の悪戯とも言わんばかりに向かいの席になってしまう。
そしてまた三人で怒られるー
この一連の過程がこの列車の恒例イベントになってしまうのであった。
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