二人が下に降りると、昭治と聡一郎のぷりぷりした声が玄関口から聞こえてきた。
「そうちゃんの分からずや! 水鬼に負けたくせに! 僕だって本気出したら、そうちゃんの封印なんか、ちょちょいのちょいで破れちゃうんだからね!」
「悔しいことを掘り返すなっ! 勝手に破ったら、もうお前とは縁を切るからな!」
「年上に向かって、どうしてそんな言葉づかいをするんだ! 先輩として恥ずかしいねっ! ふん! はるちゃん、帰るよっ! お邪魔しました! 貴重な時間を頂きありがとう!」
二秒くらいしてからやっと、遥は、「じゃーね」と光を見上げた。玄関の真ん中でずっしりと立つ聡一郎に小さな声であいさつをし、長靴にのそのそ、足を入れる。
横を見ると、セツカがブーツのチャックを上げていた。前に流れた長い髪から、浮かない顔が透けて見える。
右手首にはまだ、紫色の腕輪が輝いていた。
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