夕飯を食べながら、風呂に入りながら、布団にくるまりながら。幸輝は、セツカを思い浮かべては、顔を覆ってごろんごろんし、初恋の毒に犯され続けた。
そんな幸輝の隣で、光は終止、石膏のように固まっていた。自室に戻って一人、畳の上に倒れ込むと、ようやっと光は頭を抱え、「んあー!」と叫んで、足をじたばた動かした。
遥に優しくするって、協力するって決めたのに。でも、幸輝を、傷つけたくない……。だけど、遥を幸輝とくっつけると幸輝を失恋させちまうし、幸輝をセツカとくっつけると遥を失恋させちまう! 一体、どうしたらいいんだ!
「んあーっ」と頭を抱えるが、光は数学が苦手である。恋の駆け引きなど、計算できるはずがない。
光の脳は、プツン、とショートした。
……分からん。無理。そもそも、自分にできることは、何もないのだ……。
何かしたって、今回みたいに、どう転ぶか分からない。それが人生。生きるということなのだ。
だが、世界は、そう悪いようにはしない。なるがままに身を任せ、静かに見守り、誰かが落ち込んだ時、自分に何かできることがあった時、手を差し伸べればいいのだ。それが自分に合っている気がする。約束した手前、遥には悪いけど、どうにかゆるしてもらうことにしよう。
いや。あいつがゆるしてくれるはずないか。ぷうっとむくれた丸顔が瞼の中に浮かび上がる。いつもみたいに、心がざわつく。だけど、なんだろう、これ。少しだけ、ふっと、笑みがこぼれた。
なんか、ムカつくってかんじじゃねぇや。
ま、いろいろと、できることはやってやろう。遥にも、幸せになってもらいたいのだから……。
なんだか少しすっきりして外を見ると、結構綺麗な星屑が、いつもに増して眩しく輝いていた。
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