陰陽醒戦ブライトネス!

-戦鬼伝×陰陽道外伝-
鈴奈
鈴奈

公開日時: 2021年5月28日(金) 20:00
文字数:708

 夕飯を食べながら、風呂に入りながら、布団にくるまりながら。幸輝は、セツカを思い浮かべては、顔を覆ってごろんごろんし、初恋の毒に犯され続けた。


 そんな幸輝の隣で、光は終止、石膏のように固まっていた。自室に戻って一人、畳の上に倒れ込むと、ようやっと光は頭を抱え、「んあー!」と叫んで、足をじたばた動かした。


 遥に優しくするって、協力するって決めたのに。でも、幸輝を、傷つけたくない……。だけど、遥を幸輝とくっつけると幸輝を失恋させちまうし、幸輝をセツカとくっつけると遥を失恋させちまう! 一体、どうしたらいいんだ!

「んあーっ」と頭を抱えるが、光は数学が苦手である。恋の駆け引きなど、計算できるはずがない。


光の脳は、プツン、とショートした。


 ……分からん。無理。そもそも、自分にできることは、何もないのだ……。


何かしたって、今回みたいに、どう転ぶか分からない。それが人生。生きるということなのだ。

だが、世界は、そう悪いようにはしない。なるがままに身を任せ、静かに見守り、誰かが落ち込んだ時、自分に何かできることがあった時、手を差し伸べればいいのだ。それが自分に合っている気がする。約束した手前、遥には悪いけど、どうにかゆるしてもらうことにしよう。

いや。あいつがゆるしてくれるはずないか。ぷうっとむくれた丸顔が瞼の中に浮かび上がる。いつもみたいに、心がざわつく。だけど、なんだろう、これ。少しだけ、ふっと、笑みがこぼれた。


なんか、ムカつくってかんじじゃねぇや。


ま、いろいろと、できることはやってやろう。遥にも、幸せになってもらいたいのだから……。

 なんだか少しすっきりして外を見ると、結構綺麗な星屑が、いつもに増して眩しく輝いていた。

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