幸輝と光と聡一郎が駆けつけた時には、もう、手遅れだった。
光が昭治の腕を肩にまわし、病院へ運ぼうとしたが、聡一郎が首を振って制した。
声もあげず、ただぽたぽたと涙を落とす遥を前に、幸輝も、光も、泣くことなんかできなかった。
二人の唇に、噛んだ跡が赤く残った。
外の椿が一輪、音もなく、ぽとりと落ちた。
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