金髪縦ロール無双

~無実の罪で国外追放されたけど、Sランク冒険者になった途端戻って来いと言われましたが戻りません。私の居なくなった国は急激に弱体化したようです~
津ヶ谷
津ヶ谷

第3話 元参謀は国を去る

公開日時: 2020年10月9日(金) 21:40
文字数:1,232

 あれから二日間、牢の中で過ごした。

そして、三日目の朝、牢の扉が開かれた。


「出ろ!」

「いよいよ、この国ともおさらばね」


 アリーセは少し口角を上げた。


「何が可笑しい?」


 アリーセの表情に気づいた衛兵は尋ねた。


「こんな腐った国にいつまでも仕えるよりは、出て行った方が気楽にやれると思ったのですわ」

「そうか」


 衛兵はぶっきらぼうな返事をすると、アリーセをミューレン領地と外を繋ぐ門の前に連れてきた。

繋いでいた鎖を外すと衛兵は荷物をアリーセに放り投げた。


「ほら、預かってた荷物だ。中身は多分そのままだぜ」


 多分という所に引っかかったが、そんなことは別にどうでも良かった。


「武器は?」

「そんなもんを渡して、襲われたらどうする? 元とはいえ、作戦参謀だ。俺たちじゃ相手にならん」


 衛兵はお手上げのポーズをした。

そこまで、高い剣ではないが、お気に入りの武器が自分の手を離れるのは、何とも言えない寂しさがある。


「ま、せいぜい死なないように頑張ってくれ。城壁の外は魔物も多いからな」

「忠告感謝しますわ」

「では、裁判による判決に基づき、アリーセ・ベートを永久追放する。二度とミューレン王国に立ち入ることを禁じる」

「わかりましたわ」


 それだけ言うとアリーセはその場を立ち去った。


 門が見えなくなった所でアリーセは荷物の中身を確認した。


「本当に、ほとんど無くなっていないんですわね」


 しかし、金が半分ほど無くなっていた。


「この資金では、一ヶ月持つか持たないか、といった所ですわね」


 アリーセは小さくため息ついた。


「とりあえず、これからどうするか、ですわね」


 近くにあった、ちょうどいいサイズの岩に腰を降ろすとアリーセは考え込んだ。


「確か、この先にはメールス王国がありましたわね。とりあえずの目的地はメールス王都としますわ」


 考えもまとまった所で、アリーセは立ち上がった。

立ち上がり、数十分ほど歩いただろうか。

囲まれるような気配を感じ取った。


「魔物ですわね」


 普段ならこの程度の魔物造作もないが、今のアリーセに武器はない。


「正直、体術は消耗するから嫌なのよね」


 仮にも、元王国の参謀なのだから体術もそれなりにこなせるが、あまり好かないアリーセ。

その時、ふと自分の腰より伸びた金髪縦ロールが目に入った。


「これ、使えるかも……」


 そう考えていたその時、目の前に狼のような魔物が出現した。


「どうやら、考えている暇はなさそうね」


 アリーセは一か八か、自分の金髪縦ロールに硬化魔法をかけ、重力制御魔法を展開する。

槍のように尖り、刀のような切れ味を持った金髪縦ロールは魔物を一刀両断する。


「これ、意外と使えるわね。でも、魔物相手は勘弁したいかもだわ」


 なにせ、魔物の血が付いてしまうのだ。

気分がいいものとは言えない。


 その後、三体の魔物を、ドリルのように回転させた金髪縦ロールで仕留めると、自分の髪に浄化の魔法をかけ、血を落とした。


「初めてやりましたけど、魔物相手は極力使いたくないですわね」


 そんなことを口にし、魔物の死体を道の隅に寄せた。

いかがでしたでしょうか?

少しでも楽しんでいただけましたら幸いです。


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今日の更新はこれが最後です。

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