裁判所に入ると証言台の前に立たされる。
もちろん、鎖が繋がれたまま。
アリーセはここで初めて自分の着せられている罪を知ることになる。
「罪状、アリーセ・ベートは、先日の戦で罪なき一般人を傷つけた。傷害罪が問われている。間違いないな?」
裁判長、ベルガウがそう尋ねた。
「はい?」
間違いでしかない。
アリーセは普通に作戦の指示を出していただけなのだから。
「間違いでしかありませんわ。私は作戦参謀、自ら前線に立つことはほとんどありませんわ」
アリーセは容疑を否認した。
やっていないものは、やっていないのだから、認める方が負けだと思ったのだ。
「認めないということですか?」
「やっていないのですから、認めませんわ」
一応、アリーセを弁護する弁護人もいるのだが、形だけといった所だろう。
ほとんど、何もしゃべらない。
裁判長を初めとする、アリーセ失墜を企むものたちの一方攻撃である。
「認めない、ということは、罪を重くする行為でもあるのですよ?」
「無実なのに認める方がよっぽど嫌ですわ」
こうなったらアリーセも意地である。
絶対認めてやるもんかと決め込んでいる。
しかし、公爵の根回しは流石と言えるものであった。
証拠の捏造、目撃者のでっち上げ、アリーセを消すことに執念を掛けていると言っても過言ではなかった。
「目撃者も揃っていますし、使われた剣はあなたが愛用しているものですね?」
そう言って裁判員がアリーセの没収されていた愛刀を掲げた。
「目撃者は公爵のでっち上げだ。おおかた、金でも積まれたんだろう。その剣は確かに私のものだが、そんな剣はこの国に何本あると思っている?」
「あなた、公爵様に対して無礼ですよ」
いくら、数々の歴戦を制した作戦参謀でも、この状況は八方塞がりである。
何を言っても、公爵の思うつぼであることをアリーセは察した。
「…………」
「ほう、今度は黙秘ですか。黙っていても状況は変わりませんよ?」
「喋っても変わりませんわ」
「そうですか」
これで、この日は閉廷となった。
再び、アリーセは牢の中に閉じ込められる。
「公爵め、覚えていなさいよ」
アリーセは憤りを覚えた。
そこから、更に二日が経過した。
「出ろ!」
衛兵により、牢の扉が開けられた。
どうやら裁判の判決が出たようだ。
随分と早い判決だ。
恐らく、公爵の圧力がかかっているのだろう。
裁判所に連れていかれ、再び、証言台の前に立たされる。
「判決を言い渡す。アリーセ・ベート。一般市民に対する無意味な武力の行使とみなし、国外追放に処す」
『国外追放』それは、二度とこの、ミューレン王国に入れない事を意味する。
まあ、死罪にならなかっただけ、マシなのかもしれないが。
「三日後、アリーセ・ベートをミューレン王国より永久追放する。以上で閉廷する」
こうして、アリーセは為す術無く、無実の罪で国外追放という罪を負った。
『出る杭は打たれる』とはこのような事を言うのであろう。
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