アリーセは魔物の死体を隅に除けると再び歩き出した。
幸いなことに、この辺りの地理情報は全て頭に入っていた。
参謀という役職柄、地理情報も戦の優劣を、大きく左右するのである。
「確か、この方角に進んでいけば森を抜けるわね」
アリーセは太陽の位置で方角を確認すると、森を抜けるべく、歩みを進めた。
「ふぅ、何とか抜けれたわね」
空が夕焼けに染まり始めた頃、アリーセは森を抜けていた。
そのまま、メールス領へと入るべく歩いた。
「暗くなってきてしまったわね」
夕焼けが暗闇に変わり始めようとした頃、街の明かりが見えた。
メールス領の街だろう。
「今日はこの街に一泊するとしますわ」
街に入るのに検問などは実施されなかった。
メールス領の中でも外れの街だから警備も薄くなるのであろう。
街に入ると適当に歩きながら今夜の宿を決める。
一番栄えていると思われる通りに宿屋の看板を発見したので、アリーセはそこに入った。
「一泊したいのですが、今からでも行けますか?」
アリーセは宿屋の主人に尋ねた。
「おう、部屋なら空いているぞ。嬢ちゃんみたいな別嬪さんが来るとは珍しいな。旅の途中かい?」
「まあ、そんな所ですわ。それで、おいくらですの?」
「銀貨5枚だ。食事は別料金で銀貨一枚からだ」
「今すぐ食事はできますか?」
「ああ、大丈夫だぞ」
「じゃあ、一泊と食事一食で」
そう言ってアリーセは、銀貨で6枚を宿屋の主人に差し出した。
「それじゃあ、これが部屋の鍵だ。今、食事を作るからそっちの食事スペースで待っていてくれ」
「分かりましたわ」
アリーセは宿屋に併設されている、食事スペースの隅の席に座った。
「お待ちどう」
待つこと数分、食事が運ばれてきた。
「もう、夜で余り物になっちまってすまんな」
運ばれてきたのは、焼きおにぎりにサラダ、スープだった。
このところ、まともな食事にありついていない、アリーセにとっては十分すぎるほどの食事であった。
「ありがとうございます。十分ですわ」
そう言ってアリーセは微笑んだ。
「美味しいー」
空腹もあり、あっという間に食事を平らげてしまった。
「親父さん、ごちそうさまでした。食器、ここでいいですか?」
「ああ、そこに置いておいてくれると助かる」
「はい、それでは、おやすみなさい」
「ゆっくり休んでくれ。明日は昼までにチェックアウトしてくれたらいいから」
「ありがとうございます」
アリーセは食器を片付けると階段を上がり、渡された鍵で部屋を開ける。
「疲れたぁあ」
荷物を床に置くと、ベッドにダイブした。
決して、フカフカという訳では無いが、牢の中よりは何倍も快適だ。
久しぶりに、ちゃんとした睡眠がとれるということもあり、ベッドに横になると、すぐに睡魔に襲われた。
電気を消し、布団をかぶると、やがて意識を手放した。
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