アリーセ・ベート、ミューレン王国の軍事作戦参謀だ。
長い金髪をいわゆる縦ロールにし、令嬢のような服装をしているアリーセ。
確かに、澄んだ青色の瞳と白い肌、美人と言えるであろう。
参謀とは軍隊の総指令官的な役割を果たす、大事な役職だ。
アリーセは23歳の若さにしてその役職に就いた。
彼女が参謀の役職に就いてからというもの、ミューレン王国は負けを知らなかった。
それほどアリーセは優秀だったのである。
しかし、そんなアリーセの順風満帆な生活は長くは続かなかった。
若い女が軍隊の総司令官なのだ。
反感を覚える者も少なからず居た。
「参謀、四千の兵がこちらに向かっています」
「では、こちらは三千五百の兵を出す。北の砦の衛兵五百を残し、こちらに招集せよ」
「はっ!」
今日の作戦も上手くいっていたはずだったが……。
――
「ど、どうしてこうなったんですの……」
アリーセは薄暗い牢の中に閉じ込められていた。
ちなみに、アリーセは戦闘の時は口調が変わるのだ。
「ふっ、悪く思うなよアリーセ。お前が目立ち過ぎたのがいけない」
アリーセを参謀に置くことを最後まで反対していた、バスラ―公爵の姿があった。
「どういうつもりですの?」
「どうもこうも、お前には消えてもらうのさ。私の部下の罪を被って消えてもらうのさ。いつまでも若い女を参謀のお座に就かせておいては、我が国が舐められる」
公爵はどうしてもアリーセを失墜させたいようである。
「こんなことが明るみに出たら、国王も黙ってないのではなくて?」
「要らん心配をするな。全ては根回し済みである」
公爵は不敵な笑みを浮かべた。
「せいぜい、裁判までそこで大人しくしているんだな」
それだけ言い残すと、侯爵はアリーセの前から立ち去った。
「あの、バカ公爵め」
何度かこの鎖を外してやろうと試みたが、特殊な素材を使っているらしく、アリーセの手持ちのものだけでは、どうにもならなかった。
これも、アリーセの実力を多少は警戒してのことだろう。
牢に閉じ込められて三日。
食事は一日に二回。飲み物は死なない程度にと言った感じだ。
ずっと太陽の光を浴びていないアリーセは、今が何時かも分からない。
「出ろ!」
衛兵によって牢の扉が開けられた。
おおよそ、四日ぶりの外である。
アリーセは鎖につながれたまま、どこかに連れていかれる。
「どこに行くつもりですの?」
「黙って歩け」
しかし、アリーセはどこに向かっているのかの見当は付いていた。
もう、十年以上もこの国に、この王都に住んでいるのだ、大体の所には足を運んできた。
「裁判所、ですわね……」
「今からお前の裁判だ」
この時、アリーセは自分が何の罪で投獄されているのかも知らされていなかった。
「私は何の罪ですの? きちんと説明してください」
「それは俺の口からいう事ではない」
アリーセは裁判所の中に連れられて行った。
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