翌朝、アリーセはお昼の少し手前で目が覚めた。
「だいぶ寝てしまったわね」
きちんと休んだからか、体は随分と楽になった。
アリーセは顔だけ洗うと、階段を降りた。
「おはようございます。朝食、いいですか?」
「はいよー」
主人は気前よく返事をし、アリーセが差し出した銀貨一枚を受け取った。
昨日と同じ席に腰を下ろした。
頬杖を付き、ボーっとしていると、朝食が運ばれて来た。
「お待ちどう」
「ありがとうございます」
朝食はハムサンドとサラダ、アイスティだった。
「頂きます」
よく寝て、よく食べて、アリーセは随分と顔に精気が戻って来た。
あっという間に朝食も平らげると、チビチビと食後のアイスティーを飲んだ。
「嬢ちゃんはこれからどっか行くのか?」
食器を下げに来た宿の主人が話しかけて来た。
「はい、王都に行こうと思っておりますわ」
「そうか、王都にか。嬢ちゃんの実力がどれくらいか分からないが、気をつけてくれよ。ここいらで盗賊が出るって話だ」
「大丈夫ですわ。こう見えてもそこらの盗賊よりは強いですわ」
アリーセは立派に育った胸を張った。
「はっは、俺とした事が、野暮な心配しちまったな」
「でも、忠告は感謝致しますわ」
アイスティーを飲み終わったアリーセは、席を立った。
「それでは、お世話になりましたわ」
「おう、また戻って来たら寄ってくれ。サービスしとくぜ」
「ええ、その時は是非、お願いしますわ」
ここに来て、人間は皆んな悪い人ばかりでは無いと、しみじみと感じた。
アリーセは街を出ると王都の方向に歩みを進めていた。
ここから王都までなら、歩いても半日といった所だろう。
「この森を抜けたら王都が見えるかもしれないわね」
アリーセは目の前に広がる森を見て言った。
「一応、気配探知を発動しておきましょう」
スキル『気配探知』を常時発動させ、森に入っていく。
道はある程度整備されており、迷うという事は無かった。
「このペースなら楽勝ですわね」
アリーセは、体力には自信があった。
なにせ、軍で鍛えて来たのだ。
「あれは……」
前方で馬車が停車しているのが見えた。
それも、かなり装飾が豪華である。
どこぞの貴族であろう。
アリーセは無視して、進もうとしたが、どうやら様子がおかしい。
「盗賊か……」
アリーセはため息混じりに呟いた。
「助ける義理なんか無いが、このまま見捨てるのも寝覚めが悪いか」
アリーセは自分の体に強化魔法、自慢の金髪縦ロールに硬化魔法と重力制御魔法をかけ、走った。
「酷いわね……」
アリーセが到着した頃には騎士が血を流し、倒れていた。
硬化させた金髪縦ロールで、賊の剣を受け止める。
アリーセはこの金髪縦ロールを防御に使おうと決めていた。
攻撃に使うと、それこそ寝覚めが悪そうだ。
「貴様、何者だ? わざわざ、俺たちの獲物になりに来たのか?」
賊は笑みを浮かべた。
「は? キモいんだけど」
「調子に乗るなよ。俺たちが遊んでやるよ」
賊の視線がアリーセの胸に落ちた。
「やってみなさいよ」
アリーセの目に怒りの灯火が灯った。
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