金髪縦ロール無双

~無実の罪で国外追放されたけど、Sランク冒険者になった途端戻って来いと言われましたが戻りません。私の居なくなった国は急激に弱体化したようです~
津ヶ谷
津ヶ谷

第5話 メールス王都へ

公開日時: 2020年10月10日(土) 19:03
文字数:1,218

 翌朝、アリーセはお昼の少し手前で目が覚めた。


「だいぶ寝てしまったわね」


 きちんと休んだからか、体は随分と楽になった。

アリーセは顔だけ洗うと、階段を降りた。


「おはようございます。朝食、いいですか?」

「はいよー」


 主人は気前よく返事をし、アリーセが差し出した銀貨一枚を受け取った。


 昨日と同じ席に腰を下ろした。

頬杖を付き、ボーっとしていると、朝食が運ばれて来た。


「お待ちどう」

「ありがとうございます」


 朝食はハムサンドとサラダ、アイスティだった。


「頂きます」


 よく寝て、よく食べて、アリーセは随分と顔に精気が戻って来た。

あっという間に朝食も平らげると、チビチビと食後のアイスティーを飲んだ。


「嬢ちゃんはこれからどっか行くのか?」


 食器を下げに来た宿の主人が話しかけて来た。


「はい、王都に行こうと思っておりますわ」

「そうか、王都にか。嬢ちゃんの実力がどれくらいか分からないが、気をつけてくれよ。ここいらで盗賊が出るって話だ」

「大丈夫ですわ。こう見えてもそこらの盗賊よりは強いですわ」


 アリーセは立派に育った胸を張った。


「はっは、俺とした事が、野暮な心配しちまったな」

「でも、忠告は感謝致しますわ」


 アイスティーを飲み終わったアリーセは、席を立った。


「それでは、お世話になりましたわ」

「おう、また戻って来たら寄ってくれ。サービスしとくぜ」

「ええ、その時は是非、お願いしますわ」


 ここに来て、人間は皆んな悪い人ばかりでは無いと、しみじみと感じた。


 アリーセは街を出ると王都の方向に歩みを進めていた。

ここから王都までなら、歩いても半日といった所だろう。


「この森を抜けたら王都が見えるかもしれないわね」


 アリーセは目の前に広がる森を見て言った。


「一応、気配探知を発動しておきましょう」


 スキル『気配探知』を常時発動させ、森に入っていく。

道はある程度整備されており、迷うという事は無かった。


「このペースなら楽勝ですわね」


 アリーセは、体力には自信があった。

なにせ、軍で鍛えて来たのだ。


「あれは……」


 前方で馬車が停車しているのが見えた。

それも、かなり装飾が豪華である。

どこぞの貴族であろう。

アリーセは無視して、進もうとしたが、どうやら様子がおかしい。


「盗賊か……」


 アリーセはため息混じりに呟いた。


「助ける義理なんか無いが、このまま見捨てるのも寝覚めが悪いか」


 アリーセは自分の体に強化魔法、自慢の金髪縦ロールに硬化魔法と重力制御魔法をかけ、走った。


「酷いわね……」


 アリーセが到着した頃には騎士が血を流し、倒れていた。


 硬化させた金髪縦ロールで、賊の剣を受け止める。

アリーセはこの金髪縦ロールを防御に使おうと決めていた。

 攻撃に使うと、それこそ寝覚めが悪そうだ。


「貴様、何者だ? わざわざ、俺たちの獲物になりに来たのか?」


 賊は笑みを浮かべた。


「は? キモいんだけど」

「調子に乗るなよ。俺たちが遊んでやるよ」


 賊の視線がアリーセの胸に落ちた。


「やってみなさいよ」


 アリーセの目に怒りの灯火が灯った。

 

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