アリーセは盗賊、5人に囲まれていた。
周りには倒れた騎士たちが居る。
貴族の騎士を倒すのだから、この賊は、それなりに強いのだろう。
「減らず口叩けるのも今のうちだぜ、嬢ちゃん」
賊は剣を構えた。
「お前らこそ、私を前にして剣を抜いたんだ。覚悟した方がよい」
アリーセは完全に、戦闘モードのスイッチが入ってしまっていた。
「どうやって戦うんだ? 見た所、ろくな武器も持ってないじゃないか。まさか、その金髪でか?」
「その通りだ」
アリーセの言葉に、賊は笑い声を上げた。
「イキがってんじゃねぇ!」
2人同時に剣を振り下ろして来た。
1人は正面、1人は背後からだ。
「遅いな」
アリーセは背後の剣を硬化させた、金髪縦ロールで、受け止め、正面の剣を、人差し指と中指の間に挟んで受け止めていた。
そのまま、後ろに蹴りを入れ、後ろの敵を10メートルほど吹っ飛ばす。
「何、剣が、動かねぇ」
「私が持って居るんだから当然だろう」
「そ、そんな馬鹿な……」
アリーセは一瞬、剣を放すと、賊の手首を持って、思い切り投げ飛ばした。
「かはっ」
肺の空気が衝撃により、口から出される。
どうやら、そのまま気絶している様子だ。
「お前らも遊ぶか?」
残りの賊は3人。
アリーセは少し、口角を上げた。
「あ、当たり前だろ!!」
そうは言う賊だが、剣先がガタガタと震えている。
「そんなに震えてどうした?」
アリーセは余裕の笑みを浮かべていた。
「おらぁ!!」
残りの賊が、剣を大振りし、同時に襲って来た。
それを、後ろに跳躍することで躱す。
一気に間合いを詰めると、2人の鳩尾に、拳を叩き込んだ。
「もっと周りを見る事だな」
その場に倒れ込み、起き上がる事は無かった。
「後は、お前だけだぞ?」
「き、貴様、いったい……」
「私が誰かなんて、お前らは知る必要はない」
そう言うと、アリーセは間合いを詰め、腹に蹴りを撃ち込んだ。
「うっ……」
賊は情けないうめき声を上げると、その場で意識を刈り取られた。
「馬鹿め」
そう、アリーセが呟いた時、豪華に装飾された馬車の中から、燕尾服を身に纏った、初老の男が降りてきた。
その男はアリーセに綺麗に一礼すると話しかけてきた。
「私、メールス王国侯爵家、家令を務めております、ロルフと申します」
「アリーセです」
「この度は、我々の窮地を救って頂き、ありがとうございました」
そう言うと、またも綺麗に一礼した。
「ロルフ、大丈夫ですか?」
馬車の中から、綺麗なドレスを身に纏った、白い髪の少女が、顔を覗かせた。
「お、お嬢様。まだ、危険ですから馬車の中に」
「その心配はないですわ。賊はこいつらで最後のようですから」
アリーセは戦闘スイッチがオフになっていた。
「ええ、本当ですわ。私は、アリーセ・ベート、旅の者ですわ」
そう言うと、アリーセは微笑みを浮かべた。
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