西遊記龍華伝

西龍
百はな
百はな

バトルロワイヤル開催 参

公開日時: 2023年3月15日(水) 19:50
文字数:4,466

沙悟浄ー


悟空を呼び出す少し前に遡る。


「3335番は次の試合相手が辞退しましたので、繰り上げで試合を行う事になりました。」


「どっちみち、試合はやるんだろ?わざわざ、呼ば

なくても良いのに。」


「いえ、対戦相手が辞退した場合はすぐに知らせるようにと言われてますので。なので、試合は20分後に行います。」


毘沙門天にか…。


俺はふと、悟空に視線を向けた。


悟空の隣に座ってる男は誰だ?


何か、甲斐甲斐しく悟空の世話してるけど…。


ただの親切なら良いけど…。


悟空の事を知っていて、わざと近付いた可能性もある。


ここは悟空を呼び出して、あの男から引き離すか。


パチッ。


俺がジッと見ていると、悟空と目が合い手招きをした。


悟空は男に何かを言って俺の所に来た。


「何だよ。」


「次の対戦相手が辞退したから、試合は20分後だって。」


「へぇ、辞退ねぇ…。どんどん辞退してくれねーかな、そしたら楽なのに。」


「あの男は知り合いだったのか?」


俺がそう言うと、悟空は一瞬考え込んだ。


「男…、あー。さっきの男か?全然、知らねー奴。」


「知らない奴に世話されてたのか?お前って奴は…。危機感があるようで、ないんだな…。」


思わず頭を抑えてしまった。


「知らなねー奴の筈なんだけど…、知ってる奴に似てたんだよな。」


「そうだったのか?だったら、呼んで悪かったな。」


「いや、別に良い。」


悟空の顔色も良くなったみたいだし、安心かな。


「なぁ、辞退する奴が増えてるみたいだぞ。」


俺達の近くにいた豚の妖達が話している話題が耳に入った。


「30組ぐらいだったか?辞退したのって。」


「あぁ、だけどさ…。その30組がこの闘技場から出た姿を誰も見てないらしいぞ。」


「え?誰もって、どう言う事だよ。誰かしらは見て

るだろ?」

「だから、見てないから騒ついてんだろ?」


辞退した奴等の姿を見てない?


どうなってるんだ?


悟空はふと、空を見上げてた。


「あー、やっぱり。」


「やっぱりって?」


「上、見てみ。」


「上…?」


俺は疑問に思いながらも空を見上げた。


闘技場一面の空に梵字が浮き出て広がっていた。


「何だ?」


「結果が張られてんな。内側からは出れない結果が。」


「毘沙門天の仕業か?」


「多分…。それと、耳貸せ。」


悟空に言われたまま、耳を傾けた。


「行方が分からない妖達は、恐らくだが殺されてると思うぞ。」


「殺されてる?もしかして…。」


"毘沙門天"かと口パクで言うと、悟空は頷いた。


「まぁ、俺達を逃すつもりはねーんだろ。ここで潰しておきたいだろうからな。」


「おいおい、毘沙門天の野郎は本気じゃねーか。」


「俺は500年前から喧嘩売られんだぜ?今更、こんなので怖がったりしねーよ。」


悟空のこう言う所は尊敬するな。


「悟空が怖がったりする所を逆に見てみたいわ。見る事は無さそうだけど。」


「あ?そんなのある訳がねーだろ。」


「だろうな。ま、体調が戻ったみたいで安心したよ。」


「本調子じゃねーのは確かだな。まぁ…、なんだ、その…。」


悟空が急に吃り出した。


ん?


「どうしたんだ?」


「だから、その、お前の足を引っ張る時もあるかもしれねーから、そん時は頼むわ。」


俺は悟空の言葉を聞いてびっくりした。


何を言い出すかと思えば…、そんな事か。


「プッ、」


「あ、テメ!!何、笑ってんだ!?」


「あははは!!悪い、悪い。何んだよ、そんな事

か。あー、全く素直じゃねーな。」


「いつまでも笑ってんじゃねーよ!?」


ガシッ!!


悟空はそう言って、俺の胸ぐらを掴んだ。


「そんな事、言わなくても大丈夫だよ。お前のサポートをする為に俺はここにいるんだ。だから、ちょっとでも体調が悪くなったらすぐに言う事。良いな?」


「分かった。」


パッと悟空の手が離れた。


「3335番!!試合が始まりますよー!!!」


「呼ばれたな、行けるか?」


「俺はいつでも行けんだよ。」


悟空は生意気な返事をする。


側から見たら俺達は仲良く見えないかもしれないが、これが悟空なりの愛情表現なんだって分かっている。


だから、悟空の言葉が乱暴でも気にはならない。


「次の対戦相手もパパッと片付けますか。」


俺はそう言って、台に上がった。



孫悟空ー


「3335番対1457番の試合が始まります!!」


河童の妖怪の叫び声と同時に現れたのは、俺達よりも大きい鬼の妖怪達だった。


「おうおう、こんな小さいのが俺達の相手かぁ?」


「ガハハハ!!妖に見えんなぁ?あぁ?」


鬼の妖怪達は俺と沙悟浄を馬鹿にした目で見下ろし

て来た。


俺は三節棍を構えた。


「沙悟浄、お前は左の馬鹿をやれ。俺はこっちの糞野郎をやる。」


「左の馬鹿担当ね、了解ー。」


沙悟浄は笑いながら槍を回し構え直した。


「試合、始め!!!!」


河童の妖怪が試合開始の合図を出した時だった。


「こんの、クソガキがぁぁぁあ!?」


右側の鬼が怒りのまま拳を振り下ろして来た。


ブンッ!!!


ガシャーン!!


鬼の拳を上に飛んで避けると、俺が立っていた台が

粉々に粉砕された。


俺は空中で回転しながら三節棍を鬼の後頭部に叩き付ける。


ドゴーンッ!!


威力はあるが、鬼には効いていない様子だった。


「何だぁ?そのよわっちい武器はよおおおおおお?!」


左側にいた鬼が空中にいる俺を掴もうと手を伸ばして来た。


タタタタタタタッ!!


ビュンッ!!


沙悟浄が勢いを付けて飛び、空中に浮いて来た。


「ガハハハ!!」


背後にいる沙悟浄には気が付かないで俺を掴もうと手のひらを大きく広げた時だった。


ビュンッ!!


ブジャァァァァ!!


沙悟浄が槍を振り回し鬼の手を切り落とした。


「グァァァァァァァアイァァア!!」


手を切られた鬼は溢れ出ている血を止めるように、手を押さえていた。


「テメェ!!!」


沙悟浄の姿を見た右側の鬼が沙悟浄に殴り掛かろうとした。


俺は空中に浮いたまま三節棍を構え直し、鬼の右目を叩いた。


ドゴーンッ!!


ブジャァァァァ!!


鬼の右目から血が噴き出た。


「「ワァァァァアアアア!!!」」


闘技場にいるギャラリー達が騒ぎ出した。


「きざぁぁまああ!!!」


地面に着地した俺を鬼は睨みながら叫んだ。


「さっきまで余裕そうだったのに、笑えるな。」


「あぁ?!テメェ、馬鹿にしてんのか!?」


「おら、来いよ。遊んでやる。」


俺はそう言って、鬼に向かって指をクイッと動かした。


それを見た鬼は怒りに狂い俺に向かって来た。


そろそろ、"アレ"を使ってみるか…。


「オンキリク、シュチリビリタカナダ、ナサヤタンバヤ、ソワカ。」


*霊力補助の術である*


そう言って、指を軽く鳴らした。


ギュインッ。


三節棍がさっきよりも重くなった。


これが妖怪に効くかどうか、コイツで実験してやるか。


俺は重くなった三節棍を構え鬼の頭蓋骨に向かって、思いっきり振り回した。


「ハッ。」


ブンッ!!


ゴキュッ!!


頭蓋骨の折れる音が闘技場に響き渡り、鬼の頭が見えなくっなった。


ドォォォーン!!


「あ?」


どこに行った?


鬼の頭。


「は、はぁぁぁぁぁぁぁあ!?」


沙悟浄が相手していた鬼が叫んだ。


「あー、うるせぇな。」


俺は耳を抑えた。


「なぁ、コイツの頭がどっか行ったんだけど。」


そう言って、俺は沙悟浄に声を掛けた。


「おい、お前が飛ばしたんだろ…。あそこにあるだろ。」


沙悟浄は壁際を指差した。


俺は促されたまま壁際に視線を向けると、鬼の頭が壁際に飛んで行ってたようだった。


「どうすんの?両手、切り落としちゃったけど…。まだやる?」


沙悟浄はそう言って、鬼に尋ねた。


「やめだ、やめだ!!!降参だ!!!」


「しょ、勝者、3335番!!」


鬼の言葉を聞いた河童の妖怪が旗を上げた。


「「ワァァァアァァァァァア!!」」


「すげー!!3335番!!」


「連勝かよ!?」


ギャラリー達が再び騒ぎ出した。


「おい、さっきのはどうやったんだよ。」


沙悟浄が耳打ちして来た。


「あー、あれな?術だよ、術。」


「じゅ、術?」


「この三節棍は妖怪退治専用の武器で霊力を補助すれば、力が強大になるんだよ。それをやっただけ。」


「馬鹿力だろ…。俺も使いてーな…。」


「教えてやろうか?」


「本当か!?」


沙悟浄がガキみたい喜んでやがる。


コイツもこんな顔するんだな…。


「お前も案外、ガキなんだな。」


「え!?初めて言われたんだけど…。」


「お前に陰陽術が使えんのかなー。」


「あ、馬鹿にしたな?そんなの、やってみないと分からないだろ?」


沙悟浄って、素直だよな…。


「今度、教えてやるよ。今は経文を取るのが先だ。」


「そうだな。次の試合が終わったら準決勝か。」


「案外、早く決勝戦まで行けそうだ。」


俺達が話しているとを2人の人物が見ていた。



「さすがの美猿王だねぇ。」


風鈴はそう言って、悟空の戦いぶりを見ていた。


「ちょっと、美猿王って…。カッコイイじゃん!!何で教えてくれなかったのー!!」


真秋は風鈴の背中を叩いた。


「いてて!!口止めされてんだから仕方ないでしょ?」


「口止めって…、哪吒か。」


「美猿王は哪吒のお気に入りだからねぇ。特に真秋の悪い癖が出ちゃうから内緒にしてたんでしょ。」


「悪い癖って何よ!?」


風鈴はやれやれと言って言葉を放った。


「人のお気に入りが欲しくなるでしょ。」


「別に人の物を欲しくなったつもりはないわよ。」


「どの口が言ってんだか。」


「ねぇ、変わってくんない?」


真秋は風鈴に向かって笑い掛けた。


「がしゃどくろとの計画をアンタがやって来てよ。代わりに私がここに残るから。」


「ほら、出た。」


「風鈴だって、その方が面白そうだって思ってる癖に。」


「良いよ、変わっても。」


「やった!!アンタの好きに動いても良いから。」


真修の言葉を聞いた風鈴はニヤリと笑った。


「なら、そろそろ行こうかな。」


「相変わらずねー。行動が早い所は。」


「ちょっと、やりたい事があるからねー。」


ビュンッ。


風鈴はそう言って姿を消した。



源蔵三蔵 二十歳


「どこにいるんだよー!!」


俺は町中を走り回りながら猪八戒の姿を探していた。


そんなに離れてはないと思っていたけど、かなり距離が出来ちゃったのかな…。


タタタタタタタッ。


「おーい!!猪八戒!!」


こんなに探しても猪八戒の姿が見当たらないなんて、おかしい。


タタタタタタタッ。


タタタタタタタッ。


タタタタタタタッ。


あれ?


この食器屋さんの前、何回も通ったよな?


タタタタタタタッ。


また、この食器屋さんの前に戻る。


戻って来てる?


異様な静けさに俺の足音しか聞こえない。


戻ろうとしても戻れない。


ゴンッ!!


戻ろうとすると、見えない壁にぶつかる、


見えない壁に触れてみると、指先に電気が走った。

閉じ込められてる。


ここは結界の中…か?


ドゴォォォーン!!!


「グァァァァァ!!!!」


「っ!?」


妖怪の叫び声!?


俺は声のした方に向かった。


タタタタタタタッ!!


「こんのっ、骸骨!!鬱陶しいなっ!!」


パンパンパンパン!!


「猪八戒!!」


「三蔵か!?」


骸骨の群れの中に猪八戒の姿があった。


紫洸を使って骸骨達に攻撃をしていたが、効いていないようだった。


俺は霊魂銃を構え骸骨の群れに向かって走り出そうとした時だった。


「来るな!!!」


猪八戒が俺に向かって叫んだ。


その時だった。


誰かが背後から俺の顔に優しく触れた。


「捕まえた。」


その声がした瞬間、俺の体が黒い穴に引き摺り込まれた。


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