西遊記龍華伝

西龍
百はな
百はな

乱戦 壱

公開日時: 2023年3月20日(月) 23:18
文字数:5,003

その頃、三蔵達は波月洞に到着していた。



源蔵三蔵 二十歳


ズゥゥゥン…。


洞窟の入り口から嫌な気配を感じた。


それに、空気が重い。


「妖怪の吹き溜まりだな、ここは。」


気配を感じた如来は、ハッと短い息を吐いた。


「行くぞ。」


羅刹天が先陣を切り、波月洞の中へと入って行った。


俺達も羅刹天の後を追うように、波月洞の中へ入ったが…。


想像していたよりも綺麗で、幻想的な風景が視界に入り驚いた。


「めちゃくちゃ、綺麗じゃん。外からじゃ、想像付かなかったな。」


猪八戒は周りを見ながら呟いた。


「この洞窟は結構、広いぞ。部屋も幾つかあるし。」


ドゴォォォーン!!


洞窟内に大きな音が響き渡る。


「な、何だ!?」


揺れに耐えながら、俺は言葉を放った。


ドタドダドタドタ!!


「し、侵入者だ!!」


岩の階段を上がって来た妖達が、俺達の姿を見て叫んだ。


「ッチ、コイツ等を黙らせる。」


カチャッ。


羅刹天は背負っていた大きくて、刃の太い刀を取り出し、目の前にいる妖達を斬り始めた。


ブシャアアア!!


「アガァァァァァァ!!」


「ギャァァァァァ!!」


「オラオラオラオラ!!ガハハハ!!」


妖怪達の叫び声を聞いた羅刹天は、笑いながら妖怪達を次々に斬って行く。


「侵入者は、どこだぁぁああ!!」


「あ、あそこにいるぞ!!」


ドタドダドタドタ!!


後ろからも妖達が!?


この波月洞の中にどれだれの妖がいるんだ!?


「まずは、この妖達から片付けないと駄目そうだな。」


お師匠はそう言って、霊魂銃を取り出した。


「三蔵、俺から離れんなよ。」


紫洸を取り出していた猪八戒が、俺の手を引き後ろに下がらせた。


「わ、悪い。」


「オラァァァァァ!!」


剣を持った妖が猪八戒に向かって、振り下ろして来た。


猪八戒は妖怪の腹を足で蹴り、引き金を引いた。


パンパンパンッ!!


「グァァァ!!」


「ハッ!!」


パンパンパンッ!!


揺らいだ妖の間から、お師匠は霊魂銃の引き金を引き、後ろにいる妖達を撃った。


「ウギァァァア!!」


「羅刹天!!1人で突っ込むなよ!!」


「あ!?俺様に指図すんな!!」


お師匠は羅刹天を追いながら、言葉を放った。


羅刹天はお師匠の言葉を聞いて、喰って掛かる


「あの2人って、面識あるの?」


「いやぁ…。無いとは思うけど、お前が起きる前からあんな感じだったぞっと!!」


パンパンパンッ!!


俺の問いに答えながら、猪八戒は再び紫洸の引き金を引いた。


「オラァァァァァ!!退きやがれぇ!!」


グサグサクサ!!


羅刹天はどんどん妖達を斬り倒し、階段を降りて行く。


「羅刹天無双だな。よし、そのまま斬り倒せ。」


「おうよ!!って、お前も戦えよ、如来!!!」


「ん?羅刹天、手伝って欲しいのか?なら、手伝うが。」


「はぁ!?手伝わなくて良いし!!俺1人でやるし!!」


如来の言葉を聞いた羅刹天は、再び妖達を斬り出した。


「如来様、最初から手伝う気は無いようですね…。」


「こう言う時は、羅刹天のような者がやるのが良い。それに、本来の目的の為に力を温存しておかないとね。」


「は、はぁ…。」


「ほら、後ろからも来たぞ。」


「分かりましたよ…。」


お師匠と如来は話していたが、お師匠は何故か疲れていた。


ドゴォォォーン!!


再び、波月洞の中は激しい揺れに襲われた。


「うわぁあぁぁ!!」


「お、落ちる?!」


「うわぁぁあぁぁぁぁぁあ!!」


揺れに耐えきれなかった妖達は、階段から落ち落下して行った。


ドゴーンッ!!


グシャ!!


見えない暗闇からは嫌な音と叫び声がした。


この下は一体…。


「その下には怪物がいんだよ。」


そう言ったのは、鱗青だった。


「怪物って…?」


「牛魔王が最近、飼い慣らした怪物。餌に妖を食ってんだよ。今、落ちて行った奴等は食われたな。」


「そんなサラッと…。」


本当に鱗青達は今の仲間達に情が無いんだろうな…。


ズキンッ!!


体に鈍い痛みが走った。


「ヴッ。」


「三蔵!?大丈夫か!?」


猪八戒は俺の体を支え、背中を撫でた。


痣の所が痛い。


やっばり、ここに風鈴がいるんだな。


「侵入者って、君達だったのか。」


頭上から声がした。


見上げると、宙に浮いている風鈴と石の姿が見えた。


「あははは、三蔵君。顔色が悪いけど、大丈夫ー?術が使えない君は、ただの人間だもんね?」


風鈴は馬鹿にしながら俺に問い掛けた。


「馬鹿にしやがって…。」


俺の言葉を聞いた石は口を開いた。


「術が使えないのに何故、ぞろぞろと引き連れて来たんですかねぇ。」


「そりゃあ、呪いを解きたいからじゃないの?」


石と風鈴は俺をまた馬鹿にしながら会話をしていた。


「あの2人が邪魔しに来たと言う事は…、儀式の邪魔をされないようにか…。力を少し使うか。」


如来はそう言って、瞳を閉じた。


「え、え?」


瞳を閉じた如来の額にもう一つ、目が現れた。


その瞳がガッと開いた。


「見つけた。あそこにいるのか。」


瞳を閉じたまま如来が言葉を放つと、風鈴と石の顔から笑顔が消えた。


「如来様の能力、神眼(シンガン)だ。如来様の神眼は、どこに何があるのか、人や動物、全ての生命の場所が分かる。どうやら、如来様は毘沙門天の居場所を突き止めたようだ。」


お師匠の言葉を聞いて、如来の額にある眼の正体が分かった。


「羅刹天、まだ戦えるか。」


「あ?」


如来の言葉を聞いた羅刹天は、頬に付いた血を拭き取り振り返った。


「余裕だし、誰に聞いてんだ。」


「それでこそ、羅刹天だ。あの下にいる化け物をやれるか?」 


羅刹天は如来の言葉を聞いて、ニヤァッと笑った。


「そこの近くにいるんだなぁ?毘沙門天が。」


「あぁ、あの怪物がいたら邪魔なんでな。」


「殺しがいのある奴だと、良いがなぁ!!お前も付いて来い!!」


「は?」


羅刹天に声を掛けられたお師匠は、目を点にした。


ガシッ!!


お師匠の手を掴んだ羅刹天は、階段を飛び降りた。



「はぁぁあぁあ!?」


「アハハハハハ!!」


「お、お師匠!!?」


飛び降りて行った羅刹天とお師匠の姿は、暗闇の中に吸い込まれて行った。


「あの怪物を倒せると?アハハハハハ!!面白いなぁ。毘沙門天様に怒られないように、足止めさせて貰おうかなぁ。」


ボッ!!


ゴォォォォォォォ!!


炎炎と燃える炎の中から、大きな車輪が現れた。


「あれは…、火輪(カリン)。神器か。」


「御名答です、如来様。この火輪は僕の意のままに操れるんですよね。」


如来の問いに答えるように指を動かすと、火輪は炎を纏わせ如来の元に向かって飛ばされた。


ゴォォォォォォォ!!!


「あ、危ない!!」


「慌てるな、三蔵の小僧。」


ゴォォォォォォォ!!!


如来の背中から大きな炎が現れ、炎の中から大きな

手が伸びた。


ガシッ!!


大きな手が向かって来た火輪を受け止めた。


ゴォォォォォォォ!!


「ガハハハ!!俺の武器がこんな所にあるなんて、

おかしいよなぁ?如来。」


炎の色をした魔人が現れ、如来に声を掛けた。


「あれは…、ヒノカグツチ!?どうして、如来の背中から現れたんだ??」


「俺の背中にはヒノカグツチの式神を掘り込んである。コイツは自分の意思が強過ぎて、札に収まらんかったからな。仕方なく、俺の背中に閉じ込めたんだが…。こうして、俺の意思とは反して勝手に出て来る。」


「ガハハハ!!なぁ、如来よ。このガキ共は殺して良いのか?」


「お前の好きにして良いぞ。」


「ガハハハ!!我の好きに暴れられる。こんなに昂ったのは何百年振りだ!!」


「神と戦うのは初めてだけど、それぐらいの相手じゃないとね。」


火輪を自分の元に戻した風鈴は、炎を大きく燃えさせた。


シャッ!!


石が俺達に向かって、刀を振るうと光の刃が俺達に飛ばされた。


ビュンッ!!


「あっぶな!!」


猪八戒は俺の頭を掴み無理矢理、体勢を変えさせた。


「キャッ!!」


「潤、大丈夫か?」


「は、はい…。」


キィィィン!!!


石は素早い動きで銃弾を弾き飛ばした。


「コイツ、ちょろちょろ避けやがって!!」


「ほら、脇腹かガラ空き。」


ズシャッ!!


「猪八戒っ!!」


猪八戒の斬られた脇腹から血が吹き出した。


「この野郎、なめやがって。」


パキパキパキパキ…。


猪八戒の周りに鉄で出来た槍が何本も現れ、石に向かって投げ飛ばした。


ビュンッ!!


ビュン、ビュンッ!! 


グサッ!!


避けきれなかった石の腕に鉄の槍が刺さった。


「お前、動きが鈍くなったんじゃねーか?」


「たまたま、当たっただけで、大喜びかよ。」


敬語じゃなくなった石は、猪八戒を睨み付けた。


俺が術を使えたら…、猪八戒は怪我をしなかったかもしれない。


寧ろ、ここにいる事が俺が皆んなの足を引っ張って要るんじゃないだろうか。


「ご主人様。潤、役に立ちます。」


「え?何をする気なんだ?」


潤の手には杵(キネ)が握られていて、白い光の球が幾つか浮いていた。

 

「月は全てを照らし、月は全てを見透かす、月は邪を祓う光。」


カンッ!!!


潤はそう言って、杵を階段に叩き付けた。


フワッ!!


俺の体が宙に浮き、光り輝いた。


何が起き起きているのか、自分自身が全く理解出来ていなかった。


だが、体に力が漲(ミナギ)るのが分かる。


パァァァァァァァァ!!!


「三蔵の体が光った!?どうなってるんだ?!」


「潤の月の能力、"禊"が発動した。」


「禊って、体を清める事の事だっけ?」


「そうだ、言葉の通り月の光は邪を祓う。」


猪八戒の問いに如来が答えた。


「うわー、呪いが祓われちゃう。」


風鈴は月の光を見ながら苦笑いをし、言葉を溢した。


「式神とは、面倒臭い。」


「よぉ、ガキ共。俺の事は無視か?」


石の言葉を聞き終えたヒノカグツチは、風鈴と石を

掴み壁に投げ飛ばした。


ドゴォォォーン!!!


「ご主人様、体の調子は如何ですか?」


階段に着地した俺を気遣うように、潤が尋ねた。


胸にある痣が消えていて、さっきまで着ていた服が変わっていた。


黒い衣服に白い百合の花と月が刺繍されていて、負っていた傷が全て治されていた。


「潤が治してくれたのか?」


「は、はい。あ、あの…。」


「ありがとう、助かった。」


「は、はい!!」


俺は霊魂銃を構え、体勢を整える。


「完全復活ですか?三蔵様よ。」


「猪八戒、あぁ、お陰様で絶好調だ!!」


「三蔵の小僧、お前等はこの2人の相手をしろ。」


俺と猪八戒の会話に如来が入って来た。


「俺は下に行って、儀式を止める。お前等も片付いたら下に降りて来い。ヒノカグツチ、俺は下に行くぞ!!飽きたら戻って来い!!」


如来はヒノカグツチに向かって言葉を吐いた後、階段を降りて行った。


「行かす訳がないだろ。」


ビュンッ!!


石は階段を降りる如来に向かって、刀を振り下ろした。


俺は石の元に走り出そうとした時、潤が刀を投げて来た。


「ご主人様!!」


パシッ!!


俺は刀を受け取り、石が振り下ろした刀を受け止めた。


キィィィン!!


「小僧、良くやった。褒めてやるぞ。」


「はいはい!!それはどうもっ!!」


如来はそう言って、再び階段を降りて行った。


「まさか、その刀は月刀(ゲットウ)か。」


*月刀 

月を光を浴びた刀の事で、月の加護を受けた刀*


石は俺の持っている刀を見て呟いた。


ジュウ…。

 

月刀に触れた石の指が焼ける音が耳に響いた。


バッ!!


俺から距離を取った石は、風鈴に耳打ちをしていた。


「あの刀に触れたら指が焼けた。どうやら、僕達のような半妖や妖怪を斬る為の刀のようだ。」


「へぇ、なら。あの刀は毘沙門天様に捧げたら、喜びそうだね。」


ゴォォォォォォォ!!!


火輪が俺に向かって飛んで来た。


「三蔵!!そっちに飛んで行ったぞ!!」


「おっと。」


ガシッ!!


猪八戒の言葉を聞いたヒノカグツチが火輪を受け止めた。


「ヒノカグツチ!?止めてくれたのか?」


「あの兎が泣きそうな顔をしてたからなぁ?それに、俺は妖共を殺せたら満足なのだ!!」


「は、はぁ…?」


「おら、小僧!!あのガキ共を倒すぞ!!」


「お、おー?」


ヒノカグツチの勢に押されながらも言葉を放った。


「その刀、欲しいなぁ。僕達に頂戴よ?」


「は、はぁ?」


風鈴は何を言って…。


この刀が欲しいって…。


「駄目です!!その刀は、ご主人様のです!!」


「っ!?う、潤!?」


「あ、そっか!!この子を連れて行けば良いんだ。兎ちゃん?」


風鈴はそう言って、潤の目の前に立った。


「なっ!?」


しまった!!


「や、やめて下さい!!」


潤の手首を掴んだ風鈴は、顔を近付かせた。


「毘沙門天様の所に行こうか。」


「や、や。」


バッ!!


「やめろ。」


猪八戒が風鈴と潤を引き剥がし、紫洸の銃口を向けた。


「猪八戒さん!!」


「女の扱いから教えてやろうか?」


「アハハハハハ!!お断りしますよ。」


「じゃあ、死ね。」


パァァァァァァァァン!!


発砲音が波月洞に響き渡った。


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