西遊記龍華伝

西龍
百はな
百はな

三蔵に付けられた枷

公開日時: 2023年3月19日(日) 21:21
文字数:5,081

石達と対戦していた観音菩薩達だが…。


「はぁぁぁぁ!!」


ブン!!


ドゴォォォーン!!


金棒を振り回した明王は、次々に妖怪人間達を殴り飛ばした。


シュシュシュシュッ!!


紫希は沢山の鏡を操り、天部の攻撃を反射し観音菩薩達に攻撃をした。


ドゴォォォーン!!


「おいおい!?何か、いきなり本気出してるじゃね

ーかよ!!」


羅刹天はそう言って、観音菩薩の手を引き、紫希の

攻撃を避けた。


「何らかの目的の為だろうね。もしくは…。」


観音菩薩は手のひらから水晶玉を取り出した。


「何で、水晶玉なんか出してんだよ!?」


「気になる事があるんだ。下界の様子を見る。」


「は、はぁ!?今じゃねーと、駄目なのか!?」


「駄目!!」


羅刹天と観音菩薩の会話を聞いていた如来は、観音菩薩に結界を張った。


「羅刹天、観音菩薩に結界を張った。お前はこっちを片付けろ。」


「お前等、俺を頼り過ぎだろ!?」


如来は刀を持ち替え、石に斬り掛かった。


キィィィン!!


「神器をこんな風に使うのは良くねーよな。」


「貴方に何を言われても、どうでも良い事ですよ。」


石は如来の攻撃を弾き、再び斬り掛かる。


キィィィン!!


「ちょっと、石。何、手間取ってんのよ。」


「これも時間稼ぎだよ。」


「あっそ。ヤバそうじゃないって事ね。」


「そう言う事。」


「「ヴオオオオオオオォァアア!!」」


石と紫希の会話の後、妖怪人間達は如来達に飛び掛かる。


「和尚達がマズいな、それに美猿王も出て来たのか…。毘沙門天の目的は吉祥天を甦らす事。その為には、器が必要…。」


観音菩薩は呟いた後、ハッとした。


「そうか、石達を何でここで妖怪人間を解き放ったのか分かったぞ。羅刹天!!」


「あ!?」


飛び掛かって来た妖怪人間を斬り倒した羅刹天は、観音菩薩の声に反応した。


「お前を今から下界に降ろす!!」


「はぁ!?」


羅刹天は大きな声を出した。


「何か分かったのですか、観音菩薩。」


「あぁ、今は説明してる時間はない。天部、手伝って欲しい。」


「分かりました。明王、如来、その人達は頼みましたよ。」


「「了解。」」


天部の言葉を聞いた明王と如来は、妖怪人間達を蹴

散らし石と紫希の相手をし始めた。


「羅刹天、今からお前を下界にいる法明和尚の所に降ろす。会ったら法明和尚と店にいる女の人を守って欲しい。」


「おいおい、俺に人を守れって言うのかよ。」


「あぁ、じゃないとマズい事になる。」


観音菩薩は札を羅刹天の周りにばら撒き、指を動かした。


天部を同じように指を動かした。


すると、羅刹天の周りにある札が光出し白い煙を放ち出した。


「紫希!!」


「分かってるわよ!!」


石に大きな声を出した紫希は、観音菩薩達の方に鏡を向けた。


「させるかよっ!!おらあぁぁぁ!!」


紫希に向かって、明王は金棒を振り下ろした。


ブンッ!!


「キャッ!!何すんのよ、クソゴリラ!!」


「はぁ!?誰がゴリラだ、俺は明王様だ!!」


「こんのっ、糞野郎!!」


飛びながら明王の攻撃を避けた紫希は、明王に向かって鏡に太陽の光を反射させた。


ブシャアアア!!


太陽の光は光の槍に変わり明王の元に向かった。


「何をしているんですか紫希。」


石は物凄い速さで観音菩薩のいる結果を破り、斬り掛かろうとした。


「「天・地・転・送。」」


観音菩薩と天部が声を合わせて唱えた。


羅刹天を包むように光の布が現れ、ボンッと音が鳴ると羅刹天の姿はなかった。


キィィィン!!


観音菩薩の頭上に石の刀の刃が当たる寸前、一瞬で観音菩薩の元に着いた如来が攻撃を防いだ。


「間に合いませんでしたか。」


「遅かったみたいだな。」


「紫希、引きますよ。」


石は刀を下ろし、紫希に向かって言葉を放った。


「引くって…、ここで!?まだ、こいつの事を殺してないけど!?」


「本来の目的を忘れたのか。」


「ッチ、仕方ないわね。」


ドンッ!!


明王に蹴りを入れた紫希は、大きな鏡を出し中に入ると、石も瞬間移動し鏡の中に入った。


「大丈夫か、観音菩薩。」


「助かったよ。」


「おい、どう言う事か説明してくれ。」


ドサッ。


明王は倒れている妖怪人間達を蹴り倒しながら、観音菩薩の元に辿り着いた。


「石と紫希の目的は、俺達の足止めだ。」


「足止めだぁ?吉祥天の遺骨は持って行かれちまっただろ。毘沙門天を追わせない為の足止めじゃなかったのか?」


「それもあるが、下界の和尚達がいる店の女を攫う事だ。」


観音菩薩の言葉を聞いた3人は、不思議そうな顔し理解出来ていなかった。


「女ぁ?女って誰。」


「人間の女を攫うと言う事ですか?」


「あぁ、吉祥天を復活させる為に必要な生贄(イケニエ)に毘沙門天が選んだんだ。」

明王と天部の問いに観音菩薩は答えた。


「羅刹天を下界に落としたのは、それを阻止する為か。」


「間に合えば良いけど、石達も下界に向かった可能性が高い。」


「なら、俺も行った方が良さそうだな。」


カチャッ。


そう言いながら如来は刀を締まった。


「暫く俺が下界にいた方が良いだろう。もし、女が

攫われていた場合、早く取り戻した方が良い。」


「如来、もし吉祥天が復活してしまったらすぐに天

界に戻って来て。その為にこれを。」


観音菩薩は黄色い札を如来に渡した。


「これは?」


「すぐに天界に戻れる札、と言っても僕が作った物だけどね?この札を破れば戻れるようにしてあるから。頼んだよ如来。」


観音菩薩の言葉を聞いた如来は、跪き「御意。」と呟やいた。




その頃、下界ではー


倒れた三蔵を背負った猪八戒は、法明和尚の元に向かっていた。


猪八戒ー


ひとまず、どこか安全な所に連れて行かねーと。


三蔵のお師匠さんなら、何とかしてくれる筈だ。


タタタタタタタッ!!


「三蔵、しっかりしろ!!」


指先が冷たくなって来てる。


体温も下がってるし、ヤバイなこれ。


顔色もかなり悪い。


ドゴォォォーン!!!


「な、何だ!?」


物凄い爆発音が聞こえてたけど、どこから…って。


「杏庵亭からか!?」


よく見えねーけど、アレは…。


哪吒達か!?


「ゴォォォォォォォ!!」


「へ、蛇!?って、デカ!?」


何なんだよ、あの蛇は!?


おいおい、どうなってんだよ。


タタタタタタタッ!!


俺は走りながら様子を見ていたが、巨大な蛇がこっちを向いた。


「え。」


「グァァァァァァァアイァァア!!」


巨大な蛇は口を開けて俺の方に突進して来た。


ドドドドドドドドドドドッ!!


「おおおおお!?」


三蔵を背負ってる状態だと、紫洸も鉄扇も出せない。


この状況は…、ヤバイ!!


「頭を下げろ、半妖。」


ふいに、男の声が聞こえて俺は咄嗟に頭を下げた。


ドゴォォォーン!!


「キュァァァァァァァァァァ!!」


ブシャアアア!!


ボンッ!!


物凄い量の血飛沫の後、白い煙が立ち込めた。


「えぇ…、アンタもこっちに来ちゃった感じですか?」


空中に浮いていた風鈴が嫌な顔をしながら呟いた。


「風鈴?!お前、こっちに来ていたのか!?」


「あれ?三蔵君達じゃん。ここまで良く来れたねー。」


「江流!?」


煙が晴れると杏庵亭の前には、三蔵のお師匠さんに羅刹天、哪吒の姿があった。


そこに一際目立つ赤髪の男がいた。


「な、如来!?お前、下界に降りて来たのか!?」


「お前だけだと、頼りないからな。現に和尚の事を守れていないだろう。」


「ゔ!!」


羅刹天の知り合いみたいだな…。

「江流!?どうしたんだ、この傷は…。」


三蔵のお師匠さんが近寄って来て、背負われている三蔵を見つめた。


「風鈴、下がるぞ。」


「え?下がるんですか?」


「あぁ、石達が女を捕まえたそうだ。ここにいる理由は無くなった。」


「へー、石は仕事が早いなー。」


「毘沙門天様が早く帰って来いとおっしゃってい

る。早く行くぞ。」


「はーい。それじゃあね、三蔵君。」


ビュンッ!!


哪吒と風鈴は一瞬で姿を消した。


「羅刹天、どう言う事だ。」


「え、え…っと…。」


「女を捕まえたと言っていたが、お前…。」


「し、仕方ねーだろ!?あの女が喧嘩を吹っ掛けて来たんだからよぉ!?」


羅刹天と謎の如来と呼ばれた男が言い争いを始めた。


「三蔵のお師匠さん、三蔵の手当てをしてくれ!!かなりの傷なんだ。」


「分かった。ひとまず、店に戻ろう。」


「俺は泊まった宿から荷物を取って来る。荷物の中にある程度の処置道具がある筈だ。」


俺は三蔵をお師匠さんに預け、泊まった宿まで走った。


バンッ!!


荷物を取り戻った俺は乱暴に店のドアを開けた。


「はぁ、はぁ。三蔵の様子は?」


「2階に移動した。上がって来てくれ。」


お師匠さんの声を聞いた後、急いで2階に上がった。


2階に上がると、ベットで寝ている三蔵は顔色が良くなっていなかった。


「傷は大した事はないが、血を流し過ぎて貧血を起こしている。暫く寝かせておいた方が良さそうだ。包帯はあるか?もう少し巻いておきたいんだか…。」


「あ、あぁ。ちょっと、待って。」


俺は三蔵の鞄を漁り包帯を取り出し、お師匠さんに渡した。


お師匠さんは寝ている三蔵の手を取り、丁寧に包帯を巻いた。


三蔵の体には数箇所に紫色の痣が出来ていた。


「羅刹天。」


俺達の様子を見ていた如来が羅刹天の名前を呼んだ。


「あぁ、分かってるつーの。おい、猪八戒。」


「何?羅刹天。」


「コイツ、呪い掛けられてるみてーだけど。いつ、掛けられたんだ。」

呪い…?


「呪いって、解けてないのか!?」


「あ?どこをどう見たら解けてんだよ。この痣が呪いの証拠だろーが。」


羅刹天はそう言って、三蔵の肌にある痣に触れた。


「嘘だろ…。確かにさっき、がしゃどくろとの戦いの時に風鈴に呪いを掛けられた。だけど、それはまた別の呪いだった。三蔵にがしゃどくろを倒した時に呪いは解けたと思ってたけど…。」


「成る程…。なら、別の呪いを掛けられたって事か。」


「三蔵は大丈夫なのか?」


「お前が説明してやれよ、如来。」


羅刹天がそう言うと、如来が口を開いた。


「枷の呪いだな。陰陽術を使うと自命(ジメイ)を吸い取る枷の呪い。だけど、術者の居場所はこの呪いのお陰で分かる。」


「風鈴達の居場所が?」


「術者を殺さないと、この呪いは解けない。今すぐ死ぬ呪いではないが、ゆっくりとコイツの命を吸い取る。」


「術者を殺せば、江流は助かるんだな。」


水元の手当てを終えたお師匠さんは、如来に尋ねた、


「あぁ、呪いと言うのは術者さえ殺せば解ける。」


「あのガキには教育をし直した方が良さそうだな。」


お師匠さん、怒ってんな…。


「林杏さんは、どうして攫われたんだ?」


「観音菩薩が言うには、吉祥天を復活させる為に必要な存在らしいぞ。」


「もしかして、生贄にするつもりか。」


「だろうな。人間の女と吉祥天は何の関係もないと思うがな。」


「お姉ちゃん?」


如来とお師匠さんが話していると、幼い男の子の声が聞こえた。


声のした方に振り向くと、林杏さんの弟が目を覚ました。


「お姉ちゃんは、どこ?おじさん達は誰?」


お師匠さんは、鈴玉の目線に合わせて話し出した。


「おじさん達は、君達を助ける為にここにいるんだ。」


「助ける…って、もしかして鱗青お兄ちゃんに頼まれて?」


鱗青の事を知っているのか?


「そうだよ、鈴玉君。体の調子はどう?」


「うん。体は平気だよ。お姉ちゃんと鱗青お兄ちゃんは?どこにいるの?」


「2人は少し外に出掛けているんだ。」


「鱗青お兄ちゃん…、帰って来たの?お姉ちゃんの

呪いを解く為に鱗青お兄ちゃん、暫く帰って来なかったから…。」


この子は鱗青に懐いてるみたいだな。


「君はまだ、寝ていた方が良い。大丈夫、お姉ちゃんはきっと、帰って来るよ。」


「本当?」


「あぁ、布団に戻ってゆっくり寝て。」


「う、うん…。」


お師匠さんは鈴玉を寝かせ始めた。


「羅刹天、今すぐ連れ戻しに行くぞ。」


「こき使い過ぎたろ…。連れ戻すっても、場所は分かるのか?コイツが起きてからの方が良いんじゃねーの?」


羅刹天はそう言って、三蔵に視線を送った。


「それも、そうだな…。」


「三蔵が起きてからじゃねーと、風鈴達の場所も分かんねーし。どうせ、毘沙門天の奴は風鈴達といんだろ。」


「羅刹天の癖に賢い事を言うだな。」


「一言、余計だ。」


羅刹天と如来が話している中、俺は寝ている三蔵の手を握った。


悪い、三蔵。


お前の事を守れなかった。


穏やかな顔してるけど、かなり体は辛い筈だ。


そんな事を考えていると、三蔵のポケットが光出した。


ボンッ!!


変な音と白い煙が立ち込めた。


「ゴホッ、ゴホッ!!な、何だ?」


「これは…、式神か?」


咳をしている羅刹天を他所に、如来は冷静に状況を分析した。


ピョンッ。


白い煙の中から兎の耳が見えた。


煙が晴れ現れたのは、兎耳をした女。


黒と薄ピンクのツートンカラーのふわふわの髪に白い肌に黒とピンクのオッドアイ。


肌けた短めの白い着物、お尻にはフワフワの短めの尻尾。


「ど、どこですか、ここはぁぁぁぁぁ!!」


女の叫び声が店に響いた。

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