西遊記龍華伝

西龍
百はな
百はな

最低最悪の神

公開日時: 2023年4月21日(金) 16:05
文字数:4,624

源蔵三蔵 二十歳


「いやぁあぁぁぁぁぁ!!」


林杏さんが叫び声を上げた。


「っ!!」


声が出せない鱗青は林杏さんに近寄ろうとしたが、弾き飛ばされた。


結界が張られてる。


あれでは妖は近寄れないだろう。


「まずいな。」


如来の言葉が耳に入った。


かなりヤバイ状態なんじゃないのか…、これ!?


「沙悟浄!!結界を壊してくれ!!」


「結果?」


俺の言葉を聞いた沙悟浄は、スッと鏡花水月を構え林杏さんの元に向かって走った。


タッ!!


「はっ!!」


キィィィンッ!!


ピシッ。


鏡花水月の攻撃を受けた結果にヒビが入った。


「このまま叩っ斬る。」


「させる訳ないじゃん?河童。」


スッ。


沙悟浄の目の前に大きな鏡が現れ、次々に鏡が現れた。


鏡が光出し、俺たちに向かって光が放たれた。


ビュンビュンッ!!


光は砲弾のような形に変わり、次々に放射された。


「おいおいおい!?」


俺は慌て光の砲弾を避け、体制を整える。


キンキンキンキン!!


丁達は光の砲弾を避けながら、化け物と戦っていた。


ジッとその光景を見ていると、丁達は俺と化け物の

距離を引き離そうとしていた。


悟空の命令を忠実に守ろうとしている。


丁達は、本当に悟空の事を思い出したんだ。


「っ!!」


バッ!!


林杏さんに当たる!!


そう思い、俺は急いで林杏さんの元に行こうとした。


だが、俺よりも早く鱗青が林杏さんを抱えて光の砲弾を避けた。


「おかしい。」


如来が毘沙門天を見て呟いた。


「おかしいって、何が?」


「毘沙門天が動かないからだ。何かが、おかしい。」


シュシュシュシュッ。


毘沙門天が指を動かしてる…。


俺はふと、地面に視線を向けた。


地面にはびっしりと梵字が書かれていた。


これを見た如来も、毘沙門天が何をしようとしているのか理解出来たらしい。


この梵字は…、呪術で使う梵字だ。

 

毘沙門天の野郎、俺達に呪いを掛けようとしてんのか!?


「猪八戒、沙悟浄!!今すぐ地面から離れろ!!丁達もだ!!」


「は、はぁ!?ちょっと、待ってって、おわ!?」


猪八戒を抱えて飛んだのは、高だった。


高は次々に仲間達を抱えて、大きな岩の氷柱に捕まった。


地面は紫色の光を放つと、紫色の巨大な蜘蛛の巣が張り巡らせてあった。


ガサカザカザカザ。


そこには巨大な蜘蛛がいて、蜘蛛の巣の上を歩いていた。

 

毒蜘蛛(ドクグモ)か。


毘沙門天はどれだけの呪術を使えるんだ?


式神とは違う別の物を毘沙門天は生み出している。


こんな奴が神なのかよ。


「毒蜘蛛が子を生み出してる。早いうちに、親を殺さねば。ヒノカグツチ、燃やせ。」


如来の言葉を聞いたヒノカグツチが炎を出し、蜘蛛の巣を燃やした。


だが、炎はすぐに消えてしまい、蜘蛛の巣は溶けていなかった。


「やはり、燃えぬか。」


「どうやら、普通の術で作り出した物ではないらしい。毘沙門天の独自の物か。」


「この刀でやるしかないな。体の限界が来る前に仕留めたい所だ。おい、三蔵。お前に返す。」


ポイッ。


俺に向かって如来が何かを投げて来た。


パシッ。


受け取って見ると、経文だった。


しかも、有天経文じゃん!?


「こ、これって。取り返したのか!?」


「本来なら、お前が取り返さなねばならなかったんだがな。今回は俺が取り返してやった。良いな、有天経文を死守しろ。」


ビュン!!


如来はそう言って、毒蜘蛛に向かって飛んで行った。


カサカサ!!


何かが、天井を這ってる音がする。


「お前を喰う。」


声のした方に視線を向けると、丁達と戦っていた化け物だった。


四つ這いになって、俺達の後を追い掛けて来ていたのか!?


気持ち悪!!


「高、三蔵様を連れて距離を取れ。李、胡、行くぞ。」


「「了解!!」」


ビュン!!


丁達は化け物に向かって行き、胡の手裏剣が化け物の体に突き刺さる。


だが、化け物は動きを止める事はなく丁は鎌を振るった。


「石、儀式の邪魔をさせないようにしろ。」


「分かりました。では、経文も取り戻して来ます。」


「お前も、私の妻から手を離して頂きたい。」


毘沙門天はそう言って、鱗青を睨み付けた。


眠っている林杏さんを抱き締め、離さないようにしていた。


「三蔵、お前は僕が殺す。」


「いつの間に飛んで来たんだよ!?」


さっきまで毘沙門天の隣にいた石が、俺の目の前にいた。


石は刀を構え、振り翳して来た。


グサッ!!


高は石の刀を手で受け止め、そのまま石を投げ飛ばした。


石は空中に浮きながら近くにあった岩の氷柱を掴み、投げ飛ばして来た。

 

「ガウッ!!」


「おわっ!?」


「三蔵、捕まれ!!」


高は俺と猪八戒を遠くに投げ、猪八戒が俺に手を伸ばした。


猪八戒の手を取り、無事に近くにあった階段に着地が出来た。

 

ドゴォォォーン!!


グサッ!!


「ガハッ!!」


「お前は邪魔だ。」


砂埃が晴れると、壁に打ち付けられた高の刀に岩の氷柱が刺さっていた。


「高!!テメェ!!!」


「待て、李!!」


丁の言葉を聞かずに怒りに満ちた李が石に向かって、鎌を振り下ろす。


キィィンッ!!!

 

「仲間がやられて怒るんだ。」


「お前等にはないんだろうな、仲間がやられて悲しいって思わないんだろうな!!」


キィィンッ!!


李は鎌を振い、石は攻撃を受け止めては攻撃の繰り返しだった。


李がこんなに強いなんて思わなかった。


「悲しい?悔しい?そんな感情は知らない。ただ、お前等の事は本当に潰してやりたいと思うよ。」


「ハッ、一丁前に怒ってんのか。良いぜ、俺が相手になってやる。」


「鬱陶しい猿だな。」


キィィィンッ!!


李と石が戦ってる間に毘沙門天を止める!!


「猪八戒、沙悟浄!!毘沙門天を止めるぞ!!」


「蜘蛛の巣の隙間を潜って行くしかないな。三蔵は蜘蛛の巣に触れないようにしろよ。お前は人間だからな、俺達みたいに回復は早くねーんだからな。」


「分かってる。」

 

沙悟浄の言葉を聞き、俺と猪八戒、沙悟浄は慎重に蜘蛛の巣の間を潜ろうとした。


「キュイイイイインッ!!」


何かの鳴き声がした。


小さな蜘蛛が俺達に向かって走り出していた。


俺と猪八戒は霊魂銃と紫洸を構え、蜘蛛に向かって銃弾を放つ。

 

パンパンパンッ!!


ブシャッ、ブシャッ!!


数が多過ぎる!!

 

撃ってもキリがない。


無理矢理にでも、下に降りた方が良いな。


「ギュァァァァア!!」

 

ブシャッ!!!


如来が大きな毒蜘蛛の頭を刀で刺していた。


毒蜘蛛が大きく揺れると、蜘蛛の巣も大きく揺れた。

 

小さな蜘蛛はバランスが取れずに下に落下して行った。


「ギュァァァァア!!!」


「暴れんな、毒蜘蛛。楽に逝かせてやるよ。」


如来はそう言って、刀を振り下ろそうとした時だった。


「ひっ、ひっくり返れ。」


グラッ!!


一瞬の出来事だった。


何故なら、俺達は下に降りた筈なのに視点が逆転していた。


説明が出来ない状況になっている。


落下しようとしていたのに、何でひっくり返ってんだ。

 

それも、俺達全員だ。


空間が逆転している。


まるで、小さな箱の中で振られているかのようだ。


「なっ!?何だ!!?」


「どうなってるんだよ、これ!?」


猪八戒と沙悟浄も状況が掴めていなかった。


それもそうだ。


何故、こんな風になっているのか分からなかったからだ。


「ッチ、あのロン毛の仕業か。」


如来の言葉にピンッと来た。


ロン毛…って、あのオロオロしてる金髪のロン毛野郎か。


俺は霊魂銃をロン毛の男に向けて銃弾を放った。


パンパンパンッ!!!


「ヒッ!?」


「ちょろまか避けやがって!!」


「ヒィ!!?」

 

あの野郎、ムカつく!!


ドクンッ。


大きな脈拍の音が聞こえた。

何だ。


全身に鳥肌が立ち、嫌な冷たさの風が吹いて来た。

 

カタカタカタカタ!!


毒蜘蛛達が一斉にどこかに向かって行った。


視線を追うと、その先にいたのは毘沙門天だった。


「あぁ、ようやく会えた。」


毘沙門天がそう言うと、眩い光が放ち出す。



「間に合わなかったか。」


如来は眩い光を見ながら言葉を溢す。


「如来、聞こえる。」


如来の頭の中に観音菩薩の声が聞こえて来た。


「観音菩薩、悪い。復活を止めれなかった。有天経文は取り戻したんだが…。」


「経文を取り戻したんだね、如来は本来の体じゃないから仕方ない。未来もそうなるように回り出してしまったからね。だけど、悪い事だけじゃないよ。」


「それは…、どう言う事だ?観音菩薩。」


「吉祥天と同等に戦える人を、僕の恩人を連れて行くから。」

 

「か、観音菩薩。ちゃんと説明してくれよ!!」


「もう少しでそっちに着く。だから、それまで三蔵達を頼むよ如来。」


「お、おい!?観音菩薩!!」


如来の問い掛けに観音菩薩は答えなくなった。

 

「仕方ねぇ。観音菩薩に頼まれたんじゃ、アイツ等を守るしかねぇな、そうだろヒノカグツチ。」


「仕方がないがな。」


如来とヒノカグツチは三蔵達の元に向かった。



眩い光が途切れ、金髪の長い絹のように細い髪、色白な肌に真っ赤な瞳の女が現れた。


「ふぁわぁ…。」


女は欠伸をしながら起き上がり、抱き締められている事に気が付いた。


「離れろ、妾に触れるのは万死に値する。」


ドカッ!!!


ドゴォォォーン!!


「ガハッ!!」

 

女が鱗青に平手打ちをすると、凄い勢いで鱗青は弾き飛ばされた。


「お立ちなさいな、下郎。」


「吉祥天。」


毘沙門天が優しい顔付きで、吉祥天に近付き膝を付いた。


そして、吉祥天の手を取り甲に口付けをした。


「あぁ、毘沙門天。ご苦労であったなぁ、数百年振りだろうか。」


「相変わらず君は美しい。君の毒蜘蛛達も大きくさせておいたよ。」

 

「そうか、お前は出来る男だ。久しぶりではないか、毒蜘蛛。」


吉祥天はそう言って、大きな毒蜘蛛の背中に腰を下ろした。

 

「あれが、吉祥天…なのか。」


「伝承に乗っていた通りの女だ。見た目は綺麗だが、あの女は女傑だ。」


三蔵の問いに沙悟浄は答えた。


禍々しいオーラを放つ吉祥天は、不気味そのものであった。

 

「腹が減った。あの鈴玉とやらだけでは足りぬ。」


その言葉に反応したのは、三蔵と鱗青だった。


「食べた…のか?鈴玉君を食べたのか…。」


「ん?何だ?お前は。妾に聞いているのか。」


「鈴玉君を食べたのかって、聞いてんだ。」


「ふむ、あぁ、食べたとも。妾の食料だったからな。そんなに見たいなら、見せてやろう。」


パチンッ。


吉祥天が指を鳴らすと、時空に歪みが出来た。


ゴソゴソと吉祥天は時空の歪みの中から、何がを取り出し投げ捨てた。


ドサッ。


出て来たのは変わり果てた鈴玉の姿であった。


「あ、あ、あ、あぁぁあああああ、あああ!!」


鱗青は声にならない叫び声を上げ、鈴玉を抱き締めた。


だが、鈴玉の目は虚で体が氷のように冷たくなっていた。


「あははは!!!何だ、お前?喋れてないではないか!!」


吉祥天は鱗青の事を見て、ケラケラと笑っていた。


パァァァァン!!


シュンッ!!

 

吉祥天の頬に銃弾が掠り、白い頬から赤い血が垂れた。

 「貴様か、三蔵!!」


怒りの表情を見せながら毘沙門天は三蔵を睨み付ける。


「お前等だけは、許せねぇ。神なら、何でもして良

い訳じゃねーぞ。」


「おかしな事を言うな、小僧。神がいるから貴様みたいな生物は生まれ、世界が作られた。つまり、お前は妾達の道具に過ぎぬ。お前等みたいな生物を生み出さないようにすれば良い。そうすれば、妾に口答えする物はいない。お前もだ、下郎。」


ガンッ!!


殴り掛かろうとした鱗青の髪を乱暴に掴み、地面に叩き付けた。

 

「ふむ、体の感覚が戻って来たな。まずは、お前を喰ってやろう三蔵。」


吉祥天はそう言って、三蔵を見つめ不適切に笑う。


「上等じゃねーか、糞女。お前は俺が殺してやる。」

 

「あははは!!糞女なんて、言われたのは生まれて初めてだ。妾を退屈させるなよ。」


ビュンビュンッ!!!


吉祥天の言葉を聞いた毒蜘蛛達が一斉に三蔵に向かって飛ばされた。


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