「ふッ……ふッ……」広い領地、その森の中で一人の青年が剣を素振りしていた。
黒髪の少年は強さを極めていた。剣を持った誰もがそれを望むのは当たり前、そして少年には才能があった。
その理由は剣聖を一族、レスティアル家である一人であること……。
「ソー兄!ソー兄!」13歳の少年ソージ・アルト・レスティアルには11歳の妹ソピア・アルト・レスティアルが向こうから手を振り走ってきた。
その手には剣が握られていた。
幼い頃からでもう剣とは一心同体みたいなものだった。
「ソピア……」
「お兄ちゃん行こ!」昔から甘えん坊で修行の時はふざけているようだが、実力は親父にも認められている。
剣聖の血はソピアの方が多いのではないかと俺も思うが、そんな嫉妬心は少しは……少しはあるがその感情はソピアの可愛さで調和されている。
俺はそんな妹に連れられ、親のいない家に向かった。家に帰ると俺は剣を磨き、妹は早速料理を作り始める。
「今日は何もなかったか?」
「ん……別に……」
最近、ちょっとした出来事が起きているのだ。
光の国の辺境で暮らしているが、地位は最高位の家系である。だから他の大貴族に絡まれている。
「そうか……何かあったら俺に言えよ」それが兄としての役目であり、大貴族同士で争う位になったら親に迷惑がかける可能性がある。
「大丈夫だよお兄ちゃん、さぁできたよ!」テーブルの上に料理を乗せた。
「どう、おいしい?」毎回聞くこの質問、味が変わっているかもしれないとソピアは毎日聞いてくるのだ。
「あぁ、うまい!」
「ありがとう!」寂しいことなんてない、二人で支え合うと言われ、そして決めた。
この家の周りには草原が広がっているが、光の領域エレクシアの領域内で魔物はいない。
だが敵は多かったのだ。
「はぁ~……」ソージは今日の疲れを流し、浴槽に浸かった。
「お兄ちゃん……一緒にいい?」まさかとは思ったが、ソピアはお風呂の扉を開け、俺を覗いた。
14と12の二人が一緒にお風呂なんていい歳だと言うのに……。
だが入りたい理由としては単純に生まれつきの兄に向けての甘えん坊か、寂しいのか、離したいことがあるのか……。
今の歳だと隠し事など当たり前……だがお兄ちゃんなら話せる!っていうことか?
ソージの頭の中では考えが加速する。
「いいよ、来な」スペースを開け、ソージは決断をした。金色の髪の毛だから剣聖の力を多く継いだのかと髪色で剣聖候補もあったが……。
全裸のソピアは美しく、二方に分けた金色の髪が白い肌に流れるように触れる。
そして背中合わせに二人は少し狭い風呂に入った。
「狭くなったな……」
「うん……」
こんなソピアは久しぶりだな……修行のせいかが出ないときは俺の所へ来ていたが、今では飲み込みも早くなって実力は既に越えているのかもしれない。
「親父は誰を剣聖にするのかな?」
「私は、お兄ちゃんと一緒なら何にでも……」
それは完全なる本音であり、その言葉の中には悩み、不安な気持ちが溢れる。
ソージはそれを分かっていた。
「あぁ、ずっと一緒だ……」
「ありがとう……」小声で呟き、深く湯に浸るソピア……ソージは支え、支えられることを知り、全部わかっているからこそ、その思いを軽くするのが兄としての役目なのだ。
翌日、昼頃……ソージはいつものように木の人形を前に5つ前から右やら左やら遠くから見て全て見えるように複雑に設置した。
戦いに置いて、自身と敵が向かいあい戦うのは闘技場か、統括者を相手にするのみ……。
取り巻きや兵と言ったものは問答無用で殺しに来る。
最初の戦いでは止まってなんていられない、これは、全力で走りすれ違い様に斬る訓練だ。普通なら右を斬り、即座に左に斬るのは動作に時間がかかる。
だが剣聖なら舞うように斬れるとか……。
「まぁ、それは歴代最強様を見た人が言っていたんだよなぁ~」そう呟き、自分にできるのかと歴代の剣聖と自分を思い浮かべると必ず思う。
だが劣ってて当たり前、と今は言いたい。
一様ソピアは出来る……。
ソージは練習用の剣ではなく、黄金の剣を手に取っていた。練習用とそれでは重さが同じだけであとは全然だが、剣を握る時にまずは重さに早く慣れるとだとグアは言い、筋肉の痛みで修行ができないなんて許さないと……。
まぁ、これは俺もソピアも大丈夫だ。
そうじゃなけりゃ、あの《神星剣(しんせいけん)》と同じ重さのこの世界に二つある神器《純龍剣(じゅんりゅうけん)》を握れるはずがない。
神器は使用者の思いで形を変える。
武器そのものではなく、ソピアなら刀身が細剣のほどではないが小柄な自分に合わせ、細い……。
そしてソージは剣を抜き、構える。
道順を浮かべ、標的を凝視した。
「ふッ――」剣聖を見た者は早すぎると言う……空気の抵抗がないのかと、剣聖の修行では空気と同化、無駄な動きは必要ない……だが斬った後は好きにしろと……。
全く面白い歴代に伝わっている剣聖の修行法だ。
まず一人目は大振りである。当然だが一刀で首を斬るのが剣聖、一人目の首を斬り、即座に往復し、一人目の後ろの二人目は右側だ。
そして剣と同時に一周回り、遠くの三人目を倒し、その流れで上に上げ、四人目を縦に斬り裂き、五人目は心臓を貫き、すれ違いでそのまま剣に力を入れ、左半身を横に裂けた。
木の人形は普通の人間より硬いが、人間だけを相手にするはずもないのが剣聖だ。
「まぁ、こんなものだろう」この言葉は自分の中ではうまくいったということだ。
「お兄ちゃん!」すると土手の上でソピアが叫んだ。
「どうした?」ソピアが慌てている……これはただ事ではない。
「フローゲンとアフィリエとグランガムがお兄ちゃんに決闘だっていって……」
「マジかよ……」三人は大貴族、つまりは喧嘩を吹っ掛けられたということだ。
剣聖の家系を汚したいのか分からないが、その家系の俺達は町中に出たら大貴族たちの標的となる。
前も同じことがあったが、嫌な予感はもう的中なのは間違いない。
「分かった……行こう!」
剣聖の子の物語はもう少し続く……。
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