ダンジョンを進んでいく三人は、やがて、ある部屋に着いた。そこでジェシカは、声を上げた。
「ジェイ兄、これ超古代文明だよ」
「超古代文明?伝説の大昔に滅んだ現代より発達した文明のことか?」
聞き返すジェイにジェシカは、うなずくと奥の壁の土埃を払った。下から『TOKYO2045』と刻印された文字が浮かび上がった。
「やっぱり・・・・・・」
「つまり何か? ここは超古代文明の一都市『トーキョー』があった場所で、魔術ってのは、呪文でその文明の力にアクセスすることで生み出してたってことか?」
問い詰めるジェイにうなずくジェシカ
「じゃぁ、その古代人とやらは何処に行ったんだよ?」
「分からない。滅んだのか、別の星に行ったのか……」
さらなる手がかりは、ここから飛行船で数日のある島にあるらしい、と付け加えジェシカは、壁文字から目を離した。ふいに離れからアルが叫び声が響いた。
「おいジェイ、ジェシカ、隠し部屋だっ!」
二人は、アルの下へ駆け寄り息を飲んだ。既に部屋の中が何者かに発掘され空っぽになっていたのだ。先に発掘した奴等がいる――魔術をめぐる超古代文明の大発掘時代に入っていることをジェイ達は、悟った。
突然、ジェイを例の奇妙な錯覚が襲った。それもかつてない強烈なものだった。
「ジェイ兄、どうしたの?」
うずくまるジェイに駆け寄るアルとジェシカ。
「……アル、ジェシカ、このダンジョンから逃げるぞ……」
ジェイは、頭を抱えながら荷物を取り走り出した。
三人が飛び出すや否やダンジョンは頭上から突き刺さる光に吹き飛ばされた。
「ジェイ兄、あれ!」
空を指差すジェシカ、火の海と化した遺跡に大型の飛行船が現れ、どこからともなく現れた男達に三人は取り囲まれた。
「久しぶりね、ジェイ」
中の一人がジェイに話しかけた。
「ハンスっ」
男を睨みつけるジェイ。きょとんとするジェシカにアルは、小声で言った。
「あいつは数年前、エリート騎士団にコネで引きててもらいながらジェイを裏切り他国へ買われた・・・・・・オカマだ」
ハンスは、嘲笑いながらジェイに言った。
「ジェイ、お前、まだうだつのあがらない剣士やってんだって?」
「うっせぇっ! 国と仲間を裏切りやがって……」
魔剣に手を掛けるジェイは、だが物も言わずに後ろへ跳ね飛ばされた。
「ジェイ!」
アルとジェシカが駆け寄る中、ハンスは、いつの間にか抜いた剣を鞘に収めながら言った。
「ジェイ、これは旧友からの警告。超古代文明へのおイタはダ~メ、あれは我々のもの、いい?」
そう言い残し、何もできずに見送るジェイ達を嘲笑いながら、去って行った。
「ジェイ兄、だ、大丈夫?」
気遣うジェシカの手をジェイは、払い退けハンス達が飛行船で去った空に向かって喚いた。
「畜生――っ!」
その後ろでアルは、溜息混じりにつぶやいた。
「よりによってハンスとは、な……」
遺跡を発った飛行船でハンスは、発掘した財宝を指し部下達に言った。
「全部、アンタ達にあげるわよ」
室内が騒然と沸く中、ハンスはそっと甲板へ出た。外ではハンスの側近が控えていた。
「遺跡で会ったあの剣士ですが……」
話しかける側近にハンスは、フフっと笑いながら答えた。
「ジェイ?、ステキでしょ。男だからって理由でこのアタシをフった男よ。また、会うだろうから覚えといて」
冗談めかしつつハンスは、懐から一冊の魔術書を取り出した。それは遺跡から発掘した魔術書で、魔力の四要素の一つ、グルーオンを操る理論書だった。
その中のある魔術式に目を止め、ハンスはニンマリほくそ笑んだ。
「E=MC2――この魔術式が正しければ、超古代文明の膨大なパワーが手に入る。この地上に太陽を生じさせるほどのパワーが……」
「楽しそうですな」
横から伺う側近にハンスは、視線を遺跡に残るジェイの方に移し答えた。
「まぁね」
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