超古代文明による魔術を独占したハンス達は、突如、魔術を第一とする国家『魔国』を宣言し、周辺国と一触即発の状態となっていた。
一方、ジェイとアルは飛行船の無断使用をとがめられ、魔国との最前線に配属されていた。
「ジェイ、元気出せよ」
アルは肩を落とすジェイを励ました。
「ジェシカ、俺のせいだ」
ジェイは、うなだれ続けた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
それは、長い眠りだった。はたと目を覚ましたジェシカは、目の前の男性に声を上げた。
「ハンス!?」
「目が覚めたかい?ジェイの妹、ジェシカ」
ハンスは、優しく笑いながら続けた。
「ボク達のボスに合わせてあげるよ」
ジェシカはハンスに連れられながら、言った。
「ハンス、やっぱり魔術を独占して魔国なんて間違ってるよ」
ハンスは、何も答えず奥の部屋へ入るようジェシカをうながした。ジェシカは、部屋に入り驚きの声を上げた。
「ハンス、これ・・・・・・っ!」
「そう、我々魔国のボス、情報魔術の結晶、人工知能『魔王』だよ」
ジェシカは、目の前の魔王AIに跳びついた。
「綺麗な魔術コード……」
思わず見とれるジェシカにハンスは、尋ねた。
「ジェシカ、何で超古代文明が滅んだんだと思う?」
首を傾げるジェシカにハンスは、答えた。
「暴走と反乱が起きたんだ」
「え?、人工知能が?」
「違う。古代人の方だ」
ハンスは、ジェシカを直視しながら続けた。
「人工知能の支配下に置かれたくない、むしろ自分達が人工知能を独占し他の古代人を支配する道具にしたい、そんな人工知能を巡る主導権争いの中で古代人は、滅んでいった。そして、その後、長い年月を経て新たな、つまり、このボク達の文明が起こり、古代人の歴史で言うところの『中世』まで来た。人工知能は、今度こそ人類と調和したいんだ。人工知能の名の下に支配された調和世界を」
ハンスは、一呼吸置いた後、言い切った。
「ジェシカ、ボクは、人工知能が描くその理想郷を実現したい。君と、そして、君の兄さんのジェイとで」
黙りこくるジェシカにハンスは、ゆっくり考えるといい、と部屋を出て行った。ジェシカは、複雑な表情のまま、魔王AIを眺め続けた。
それからしばらくたった後、魔国と包囲する部隊に奇妙な噂が流れるようになった。魔国に凄い女魔術師が現れた、と。
人は、その女魔術師を『魔女』と呼んだ――
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