振り下ろされた巨大こん棒はローラを捉える――。
……………が、こん棒はローラを直撃する寸前で止まっていた――。
「――なッ……⁉⁉」
スローモーションに見えていたレイの視界は通常に戻る。
こん棒が止まってビッグ・G本人も驚いている様子だ。
どうやら自分で止めたのではないらしい。
それどころか逆に動かそうと力を込めているのかビッグ・Gの体が小刻みに揺れていた。
こん棒が当たる寸前、ローラは顔を外に向け目を瞑っており突如こん棒が止まった数秒後にやっと目を開けていた。ビッグ・Gが止めた訳でもなければローラが魔法を使った気配もない。
「ど………どうなってるの……?」
困惑するローラ。
レイもその場にただただ立ちすくし、静かな空気が流れていた。
“一体何が起きている”―。
その場にいる全員がそう思った瞬間、一つの声が静寂を破った。
<――だから早く魔力を扱える様になれと言っておるのだ……レイよ>
声の主はドーラン。
間一髪の所でこん棒を止めたのはドーランであった。
「……ドーランッ!!」
<よいかレイ……。弱者というものは何も出来なければ何も守れん。自分の死に方すら選べぬ。どんな強者でも倒せる力を手に入れろとは言わぬが、失いたくなければ“大切なもの”を守れる力を手に入れろ……誰よりも強くな>
いつもの軽い口調のドーランとは違い物凄く言葉に重みを感じたレイ。
魔力もまともに扱えずハンターになり確かにずっと外の世界に浮かれていた。
その結果招いた事態がこれだ―。
ドーランと出会って、魔力というもの使える様になってまだ二、三日しか経っていないが、これから自分達がやろうとしている事はとても危険で困難であると分かっていた。
分かっていたのに一番大事な事を後回しにしてしまった。
外の世界への好奇心とドーランへの信頼と安心。
これがレイの危機感や緊張感を欠落させていた。
簡単に言えば己の考えも覚悟も甘かったのである―。
――――バチンッッ!!!
ドーランにそう言われたレイは両手で思いっ切り自分の顔を挟む様にビンタした。
レイなりに気合いを入れ直したのであろう。
思いのほか痛かったのか目にはうっすらと涙が滲み、頬は赤くジンジンとした痛んだ。
「う~ッ……いって……。自分でやっといて涙出てきた……」
<気を張れ。その程度ではロックロス家に辿り着くどころか今死ぬぞ>
「……ありがとうドーラン……。お陰で浮かれ気分が直ったぜ。ずっと魔力が使えない事を言い訳にしてた……。どこまで出来るか分からないけど本気でやるよ。」
<心配するなレイ。主には我が付いている。あんなデカいだけのゴブリンなど二万匹いたとて暇つぶしにもならぬわ>
気合いを入れ直したレイはおふざけ無しの真剣モード。
ビッグ・Gを睨み魔力を練り上げていく―。
力ずくで動こうとしているが全く動けないビッグ・Gは唸り声だけ挙げていた。
その隙にローラは逃げ、ビッグ・Gと距離を取る。
一度深呼吸し冷静なったローラも攻撃態勢に入った―。
「ドーランありがとう!助かったわ!……レイッ!私が援護するからさっきのドラゴンの腕の魔法出す準備しといて!私の魔力じゃアイツに致命的なダメージは与えられない」
「分かった!留めは俺に任せろ!」
<作戦は決まったか?じゃービッグ・Gを動かす。期待してるぞ二人共>
レイとローラがやる気になったのを見て、お手並み拝見と言わんばかりにドーランが魔法で止めていたビッグ・Gを解放した。
自由に体を動かせるようになったビッグ・Gも鬱憤を晴らす様に空に向かってけたたましい雄たけびを上げた。
地響きする程の轟音。再び戦闘モードに入ったビッグ・Gも本気になり魔力が一気に強くなった。
レイ&ローラ vs ビッグ・G
両者本気の戦いの火蓋が切って落とされた―。
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