やっと異空間の手掛かりを掴みその封印の解き方まで分かりそうだった矢先、ローラ「不可能」のという冷たい言葉で一気に奈落の底に落とされたレイ。
余りに残酷なその言葉に暫く思考回路が停止した―。
「………ッ…と…………っと…ッ!…………――――ねぇ!ちょっとってば!!」
「……お、おう…!!」
ローラの呼びかけにやっと反応したレイ。
「大丈夫?急に固まったけど」
「ああ…大丈夫…!ちょっと驚いただけだ…。それより、封印の解き方が分かるのになんで不可能なんだよ?」
「もし書物に書かれている通りだとしたらね…この世界に無数に存在するダンジョンの中から“九つ”のアイテムを集めないといけないの」
「たった九個?ダンジョン行った事ないけどそれなら簡単そうじゃん」
「バカね!そこら辺にあるアイテムじゃなくて、必要な九個全てリバースダンジョンの最下層にあるようなレアアイテムなのよ。…ね?この時点でほぼ不可能よ。実力もさることながらそもそリバースダンジョンなんて“ランク”が足りないわ。レイはハンターランク何?」
「……………俺そもそも冒険者ギルドに登録すらしてない……」
「――お疲れ様でした」
ローラは深く一礼してこの話を終わらせた。
「おいおいッ、待ってくれよ!冒険者ギルドはこれから行ってちゃんとハンター登録するからさ…!そのアイテムの事詳しく教えてくれよ!」
「アンタまさか登録すらしてないとは…。それにいくらハンター登録したからって“Sランク”なんてなれるのほんの一握りよ⁉仮に実力があったとしても何年かかるか分かったもんじゃないわ」
ローラは現実的に考え、残念だけど諦めたらとレイを促すが、何とも飄々にレイはこう答えた。
「まぁそもそも焦ってはいないから時間の問題は解決だな!そのSランクってのがどの程度の実力か分からないけど…ドーランの強さでいけるかな?」
<まだ我を見くびっているのかレイ。人間レベルのSランクなど我にかかれば一瞬でなれるわ!>
「それを聞いて安心したぞ!って事でランク問題も解決で…後はそのリバースダンジョンのアイテムだな…流石にこれは探さないといけないか?ひょっとしてイヴ分かったりする?…あ!無理だ。流石に妖精王でもそんなの分からないか。異空間も知らなかったし!」
「――何を言っておるバカ小僧がッ!!」
(…ラッキ~!食いついてきたぁ。)
そう―。
ローラの話を聞いた瞬間レイには一つの完璧なシナリオが頭に浮かんでいた。
まず冒険者ギルドでハンター登録するのはいとも簡単だ。自分の身を守れ、最低限の魔力の強さがあれば誰にでも出来る。
今までの魔力0のレイでは確かに不可能であったが今は違う。ドーランというドラゴンの魔力を持っているからだ。後はリバースダンジョンに挑むのに必要なSランク。これは先のアルカトラズで十分すぎる程ドーランの魔力の強さを理解した。魔力の強さだけなら楽勝だと思うが念のためドーランを挑発しておく。
そして封印を解くのに必要だと言う九個のアイテム。無数にあるダンジョンから探すとなると一苦労だが、そのレアアイテムの場所がリバースダンジョンと分かっているなら話は早い。
上手くいけば妖精王と言われるイヴならその場所ぐらい分かるだろうと、ドーランのついでにイブも挑発したら見事に食いついた。
王とか言われてる奴はやっぱプライド高いな~と思うレイだった。
レイは檻を破壊した時に利用された事を根に持って仕返しのチャンスを伺っていたのだ―。
こうも上手く事が進むと思っていなかったレイは必死に笑いを堪えている。
「無理すんなってイヴ。千年も閉じ込められてちょっと疲れてるんだよ…封印解くのに必要な九個のアイテムぐらい俺らで探すからさ。いくらイヴでも分からないだろ?」
「舐めるんじゃないレイ!!私はあんな所何時でも出られたわ!お前達じゃリバースダンジョンを探すだけで人生終わりだが私なら一瞬で全部分かるよ!」
まんまと挑発に乗せられたイヴは魔法を繰り出す。
魔力の光が辺り一面を照らした次の瞬間、それは形を変え九つの光の玉となりレイ達の頭上に現れた。
光の玉にはそれぞれリバースダンジョンと思われる建物が映っている。
「――これってもしかして……」
「そうさ。この世界に数多存在するダンジョンの中でもリバースダンジョンは全てで九つ。その全てのリバースダンジョンの正確な場所から出てくるモンスター、最下層のレアアイテムも私にかかりゃ全て分かるどころか“今すぐにでも”ここに全アイテム集めてやろうか?フッハッハッハッハッ!」
「フェアリー・イヴってそんな反則技まで使えるの……?」
イヴの圧倒的な力にレイは勿論ローラも驚いていた。流石、妖精王と謳われるのは伊達じゃない。
全ハンターが目指してもリバースダンジョン全てを攻略なんて未だかつて誰も成しえていないのではないだろうか。
手掛かり0から早くも全て揃ってしまいそうだ。
「ローラ!この九個のアイテムあれば封印解けるんだよな?」
「え、ええ……。確かにそうだけど……そっか、そう言う事ね」
ローラは一人何かを納得して頷きながらレイ達に続きを話し始めた―。
「どうした?」
「書物にはまだ続きがあるの。きっとこの“イヴの力”を恐れていたロックロス家と魔女がイヴ一人では封印が解けないようにしたんだわ……。書物に書かれている封印の解き方はその九個のアイテムと“そのアイテムを手に入れた四人”の魔力がないとダメなの」
「ゲ~……やっぱ流石に反則過ぎたか。それってズルせず“パーティ”組んでダンジョン攻略しろって事だよな」
ローラ曰く、このレアアイテムは封印を解く為の特殊アイテムであり、それを生み出したのも恐らくロックロス家だと言う―。
何でもこのアイテムは人間の魔力を感知出来る用にようになっており、見事リバースダンジョンを攻略し手にしたパーティ四人の魔力がアイテムにインプットされるらしい。
つまりこれはローラの言った通りイヴ一人の力では突破できない「イヴ封じ」と言ってもよい。
これによりレイ達は正々堂々とリバースダンジョンを攻略しなければならなくなった―。
<どこまでも余計な事をしてくれるな。ロックロス家>
「この古魔法には魔女の呪術が絡んでる。大抵魔女の呪術は“条件”つき。その分普通の魔力より効果が高いから、下手な事すると最悪異空間の封印が解けなくなるかも……。逆を言えば、書物通りにパーティ組んでアイテム集めれば封印を解くことが出来ると思う」
「まぁいいじゃねぇか!異空間に辿り着くにはリバースダンジョン攻略するしかない!場所は分かるんだから後は仲間集めてアイテム集めよう。な!焦る必要ないんだからゆっくり行こうぜ」
こうしてレイ達はリバースダンジョン攻略へ向けて動き出すのであった―。
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