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~Eランクダンジョン~
ダンジョンクエストは冒険者ギルドにある“サークル”と呼ばれる丸い装置の上に乗る事で、自動的にそのダンジョン側に設置されているサークルまでテレポート出来る様になっている。
一つのダンジョンに同時に何組ものパーティが挑むのは出来なく、挑戦出来るのは一組のパーティのみ。
挑戦しているパーティが終わったら次の組のパーティが挑む順番式。
当然誰もいなければそのまま待たずにダンジョンに入る事が出来るのだ。
―――……シュンッ……!!
サークルからテレポートしてきたレイとローラ。
今回はEランクダンジョンの中でもソロではなくパーティで挑むものを選んだ。
二人の目の前には四階まである塔が建っている。
これがダンジョン―。
初めて生でダンジョンを見たレイは毎度の如くテンションが上がって興奮している様だ。
「――すっげー!これがダンジョン!すっげー!」
「語彙力の無さよ」
<学習能力もあらぬ>
ローラとドーランに散々言われるレイだがやはり耳には届いていない。
タイミング良く他のパーティがこのダンジョンに挑戦していなかったのでレイ達はスムーズに入る事が出来た
。
ダンジョンの入り口が開くと、目の前には長い通路。
壁に火の灯りが等間隔で並べられているが全体的に薄暗い。
通路の先にはいくつかの分かれ道がありここは一階。
ダンジョンをクリアする条件は大きく分けて二つ。
一つは目的のアイテムを手に入れるか指定モンスターの討伐。
もう一つはダンジョンの最上階に辿り着く事。
レイ達のクリア条件は指定アイテム入手。
このダンジョンの最上階にある“魔草”を見つければダンジョンクリアとなる。
「――それじゃあ最上階目指して頑張りましょうか」
「何か出てきそ~う!早く行こうぜ!」
レイ達のダンジョン攻略が始まった―。
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~Eランクダンジョン・一階~
<――レイ。いつでも戦えるように常に魔力を意識しておくんだ>
「分かった」
一番の目的はダンジョンのクリアではなくあくまでレイの魔力コントロール。
これからは魔力が使えないなど一切言い訳にならない。
先の戦いで使った魔力の感覚を覚えているうちにレイは早速意識を集中し始めた。
息を吸って吐く―。
それと同じぐらい当たり前に魔力を使えなくてはならない。
レイはまだ不安定ながらもゆっくりだが確実に魔力を感じられていた。
(……ほう。ホントに何か感覚を掴んできたか。少しだけ魔力をコントロールしているな)
レイとローラはどんどんダンジョンの奥へと進んでいる。
歩きながらでもレイはしっかり魔力の感覚を得ていた。二人が歩いていると“奴ら”は突然現れた。
「………レイ!敵が出たわ!」
「お!“スライム”!」
ダンジョンの代名詞、スライム。
レイとローラの前に二体のスライムが現れた。
二人の行く手を阻むようにしているスライムに対しレイが一歩前に出た。
「ドーラン!この間の“黒龍の拳”より威力弱い魔法ないの?あれ使った後体がすっげー疲れんだよね」
<それはレイがコントロール出来ていぬからだ。魔力も威力も抑えればいいだけの話……それよりも技名が何ともダサい>
「ダサくねぇよ!むしろカッコいいだろ!」
<いやダサい>
どうでもいい事で言い争いが始まり、マジでどうでもいいと思ったローラが「早くしろ」とレイとドーランに冷たく言い放った。
返す言葉の無いレイとドーランは素直に本題に戻った。
「――で、何か他の技ないの?」
<技など自分次第でどうとでもなる。ダサいドラゴフィストの様に殴って蹴っても良い。安易に言えば我にはまだ翼と尻尾もあるからそれを打撃魔法に使っても良いだろう。一つ助言するのならば我はドラゴンだから炎も吹ける>
「そっか~。打撃に炎ね……。ローラみたいに飛ばせるの?」
<魔力を操れれば出来ることは無限よ。>
「よっしゃ!じゃあ試しにローラのマネしてみるか。一回見てるからイメージもしやすいし」
そう言うとレイは更に集中して魔力を練り上げる―。
運動神経のよいレイはドーランが思う以上に吞み込みも早かった。
一度感覚を掴んだレイはビッグ・Gとの戦闘時よりもスムーズ且つ滑らかに、そしてより多い魔力を生み出したのであった―。
レイはその魔力を見よう見まねでローラのF・ショットの様な火の弾に変えた。
出された火の弾の数は四つ。
ローラよりも弾の数は少ないがその分一回り程大きい火の弾は更にそこから“変化”していく―。
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