ナイツ・オブ・ラストブリッジ

この橋は絶対守りきってみせる!
主道 学
主道 学

15

公開日時: 2023年9月26日(火) 19:42
文字数:1,928

 「五年前というと、私が14歳の時か……確かお父様が生きていた頃だな。ここラピス城が危機に陥って、ハイルンゲルト率いるラストブリッジナイツが三日三晩も激しい戦闘をしたと聞いた。その後に無事、橋の下にある神殿へと封印したとお母様から聞いたことがあるな。私はその戦いは見ていなかった。すまない。では、みんな……。今夜は寝ずに水の神殿で水遊びといこう。あ、みんなじゃない。泳げないガーネットとマルガリータはこの城に残っていてくれ。ただし、万が一の時のために戦いの準備をしていてくれ……。もし、私とオニクボが戻らなかったら……」

「へ……え……??」


 うーん……ソーニャが俺より年上だったなんて。

 ガーネットが大食堂の奥からビールの大ジョッキのお替りをしてきたが、こっちは年上の方がいいんだよな。

 俺はこの最悪の危機の中で、どうでもいいことを考えていた。

 

 うっ、俺も……泳ぎはダメなんだけどな……。

 学校じゃあ、水のハンマーって呼ばれていたっけ。


「よしっ! それじゃあ、行こう! オニクボ!」


 俺はソーニャと正門まで走った。

 はあ~~、今日は徹夜か~。

 仕方ないかな。

 料理美味かったし。

 そのお礼しないと。


 ほとんど食べてないが……。


 うん? それにしても、どうやって封印されたドラゴンを復活させられるんだろう? それらしいことができるのはマルガリータだけだろうに……。


 大食堂の空気は未だに豪勢な料理の美味しそうな匂いで満たされていた。 


 俺は大食堂からの扉から、正門目指して突っ走るソーニャの後を追っていた。ソーニャはやはり王女だった。どこかしら、焦っているかのような感じで一目散に城外へと走っていた。俺も橋を守ると決めたし、ソーニャを追い掛けながら辺りを見回した。調度品やドアが全て石造りで、ここはラピス……石という名前の通りの城なんだなと思った。


「わっ!! ソーニャ?!」


 石造りの正門を抜けると、なんとソーニャはすぐに白い鎧を着たまま海へと飛び込んだ。


「こうなりゃ! 水のハンマーの俺も!」


 俺もこの盗賊団の服装のまま海に飛び込んだ。


 ザブンッ!


 と、俺はあっという間に轟々と音のする激しい水の流れの海の中の奥深くへ沈んだ。

 そういえば、この橋の下の海は俺がこの世界に来た時に最初にいたところだ。


 一体。

 なんでこんなところに来たんだろう??


 ソーニャは水の神殿の場所を知っているようで、真っ直ぐに海の底へと泳いでいる。

 海の中の水はやや透明だった。


(うん?!)


 海中でソーニャは平泳ぎをして下方へと向かっていのだが、プレートメイルの白い鎧と白いマントによって、普段は見えにくい白のミニスカートの隙間から……。


(おや?! なんか真っ白な……??)

 

 俺は顔を真っ赤にして頭を強く振ると、


(今はラピス城の最大の危機なんだ! 貴重な王族のパンツを見てる場合じゃないんだ!!)


 そろそろ息継ぎが必要になるころには、海の底に朽ち果てた古い神殿が見えてきた。恐らくあれが水の神殿だ。


 先頭のソーニャは水の神殿の居所をしっていたようだったが、さすがに入り口までは知らない様子で、しきりに水の神殿を中心にぐるぐると泳いでいた。


 俺は苦しくなって口を抑えながら水の神殿を遠目で凝視すると、神殿の中央に小さな光を見つけた。そして、そこへ通じる崩れかけた正門があった。


 闇雲に泳いでいたソーニャの手を取り、神殿の入り口を目指す。


(この神殿には……強力なドラゴンが今も封印されているんだ。ひょっとしたら、かなりヤバい戦闘になるかもな)


 俺は内心自信があった。

 また、勝てるんだって……。

 ハイルンゲルトにお礼を言わないとな。


 神殿の入り口は、ヒビの入った巨大な石の門だった。所々に倒れた石柱があり水泡が至る所から湧き出ていた。

 なんだか神殿自体が呼吸しているかのようだった。

 

 さすがに海の水が冷たくなってきて、息が苦しい。急いで石の門を潜り抜けると、あとはしばらく必死に一直線に神殿の奥へと向かうだけとなった。


 石壁も石の天井も光源がなくて、うす暗かったが。ただ、真っ正面に小さな光源があった。


 ソーニャはいつの間にか俺の右腕を掴んで泳いでいたが、前を指差した。

 俺は神聖剣を握り、前方に現れた光源を見つめた。

 

 それは台座に鎮座している。幾重にもある光の帯で覆われた巨大なドラゴンだった。


(デカい!! この台座の面積だけで俺の学校の体育館が埋まるんじゃないか? それにドラゴンも!! デカいぜ!!)


 俺は台座に近づくと、周囲に水泡が巻き上がった。

 

(うん? このドラゴン……呼吸しているんだ?! だけど……)


 ブルードラゴンがこちらに鋭い目を向ける。そこは体育館並みの水没した広い空間だった。水は冷たくて、俺は身を引き締めた。ブルードラゴンは俺の顔を見て何故か笑っているような感じがしてきた。


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