「な、何よ。剣なんて構えて……私を殺す気?」
「ああ、今じゃ敵だ」
「う……」
通小町がさっさと後ろを向いて逃げ出した。
俺はその隙を逃さなかった。
「せ! 聖女様!!」
騎士たちがうろたえているところに、飛び込んだ。俺はあっという間に神聖剣で大勢に斬り込む。それから、騎士隊長のような人も斬ると、騎士たちの状況が総崩れになった。
「こ、こいつ。騎士ではないぞ。あの盗賊衣装! 恐らく最凶最悪の盗賊のオニクボの息子だ!!」
騎士の誰かが言った。
戦慄が騎士たちの周囲に充満した。
「う、うわわわあーーー」
「う、退避ーーー!」
「退避ーー!」
騎士たちがバラバラと元来た十字路に逃げて行く。俺は後を追わずに、一人でアリテア王のいる王の間へと向かった。
ヒタヒタと俺の足音だけが大理石の階段に響いた。ここは白一色の階段だ。奥行きがあって、壁にはどれも鎧が中心にある絵画がたくさん飾られていた。
俺は王の間へ通じる大扉を見つけた。
中へ入ると……。
「え?!」
中には、豪奢な部屋の中央に、一つの金色の鎧がポツンと置いてあった。
その鎧にゆっくりと近づく者がいた。
その大男は金色の鎧をがっしりと着ていく。
間違いなかった。
アリテア王だ。
「貴様が鬼窪か……まずは、天晴と言わせてもらおう。だが……ここが貴様の永遠の眠りゆく場所だ!!」
アリテア王が壁に立て掛けられた金の斧を持ち出した。
俺に向かって、ずんずんと歩いてくる。
そのアリテア王の奥にある玉座には……通小町がいた。
「うりゃあああーーー!!」
最初に仕掛けたのは俺だった。
神聖剣でありったけの剣戟を食らわした。
ガッキ―ン! と、いう派手な音と火花が飛んだ。
う、腕が痺れるだけだった!
アリテア王は微動だにしていない。
相手の鎧は全くと言っていい。
無傷だ。
「無駄だぞ!!」
アリテア王は直立不動のまま金の斧を振り下ろした。俺は軽いステップで後退して躱すと、考えた。
守神アリテア王の鎧はどんなことをしても傷つけられない! 例えフルプレートメイルの金の鎧をなんとかしてもアリテア王は倒せないだろう。どんな深い傷でも治してしまう通小町が後ろにいるからだ。
さあ、どうする?
アリテア王が仕掛けた。
金の斧が横薙ぎに振り回されていく。
俺はその攻撃を次々と躱していった。
このままだと、体力のジリ貧だ。
さあ、どうする?
「ふふふふふふふ。鬼窪くん。あなたはここで終わりよ! さっき本当に怖かったんだからね! ここで鬼窪くんさえ、死ねば。この国は私のものになる!! さあ、アリテア王よ! 鬼窪くんを倒すのよ!」
「……」
アリテア王が一瞬。通小町の方へ顔を向けた。さすがに……怒っているんだろうなあ……。
アリテア王は兜を付けているが、兜と鎧の隙間があった。
「見えたーーーー! 隙ありーーー!」
俺は急いで跳躍すると、およそ自分の出せる最大のスピードで、アリテア王に飛び込み。兜と鎧の隙間の首筋目掛けて神聖剣で突きを放った。
サクっという鮮やかな音がして、アリテア王の首から信じられないほどの血が噴き出た。
「ぐっ!」
「アリテア王! 今すぐ治します! うりゃ!」
通小町が慌てて片手を向けて回復魔法をアリテア王へ放つ。
俺はこの戦いで大事なのはスピードだと考えるに至った。
通小町の回復魔法の光がアリテア王を包み込む前に、玉座で立っている通小町の背後へ回り込んだ。
「もう、寝ろ!」
俺は通小町の後頭部を神聖剣の柄で思い切り小突いてやった。
通小町は片手を挙げたまま昏倒する。
「勝負あったな……」
「ま、またもや天晴!」
アリテア王はその場で崩れ落ちた。
…………
「うん?? 外が騒がしいな?」
俺はステンドグラスの窓から外を見てみると……大量破壊兵器でも放り込んだかのような大破壊がガルナルナ国の至る所の軍事施設らしいところで起こっていた。
大量の煙を巻き上げ。物々しい大砲は全て吹っ飛び。堅牢な建造物は跡形もなくなり。陣形を組んでいた大勢の騎士たちも退却している。
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