俺も自然に頷き。神聖剣を構えると、ブルードラゴンはコックリと頷いた。俺は勢い良く幾重にもブルードラゴンを覆っている光の帯を一刀両断にした。
大量の水泡と渦潮が発生した空間で、俺の隣にいたソーニャは冷静沈着だった。
一切、ブルードラゴンに臆することもなく。ブルードラゴンに向かってコクリと頷くと、上に向いて遥か地上を指差した。ソーニャの合図にブルードラゴンは力強く頷いた。そして、辺りを凄まじい衝撃が襲う。水の神殿全体が激しく揺れ出したんだ。
ブルードラゴンが水中で羽ばたいたからだ。
あっけなく水の神殿が崩壊していく。
俺とソーニャはブルードラゴンの近くの宙を泳ぎながら、さすがに真っ青になって戸惑い顔を見合わせた。ブルードラゴンがクイっと長い首を自らの背に向けた。
(よしっ!! やったぞ!! こいつは貴重な戦力になる!! なんでかブルードラゴンは俺とソーニャと仲が良いみたいだし!!)
ソーニャがすぐにブルードラゴンの背に乗り、俺もそれに続いた。
爆発したかのような水泡が周囲に飛び散った。
水圧も水の神殿の石の天井も物ともせずに、ブルードラゴンが地上へと破壊的に昇っていく。
激流の中。
俺とソーニャは二人で、ブルードラゴンの背でいつまでも抱きついていた。
グングンと高速で地へと昇るブルードラゴンの勢いに、俺とソーニャは歯を食いしばって体がねじ曲がるかのような水圧にお互い耐えていた。
水飛沫の凄まじい爆音が辺りに鳴り響く。
俺は海中からブルードラゴンが出たのだろうと、ソーニャの胸元に埋めていた頭を引っ張り出した。ソーニャも俺の胸元から顔を出し、辺りを見回す。
もう、すでにブルードラゴンは海から空高く舞い上がっていた。
遥か下方に橋が見える。
「うん??」
「気が付いた! あれね!」
「はっ! 俺って……いつまで……」
「うん?」
遠い西の方からガルナルナ国の正規軍が見える。
一言でいうと確かに大軍だった。
「ソーニャ。三万以上いないか? あの正規軍?」
「うん。軽く四万はいる」
「どうする?」
「……確か、ドラゴン族には強力なブレスがあるって、書物で読んだわ」
「ドラゴンブレス……??」
「そう」
俺は自然とキュッと、力の入った目でガルナルナ国の正規軍を見つめていた。
全ての兵士……いや、騎士が馬上から旗を掲げている。
見たこともない旗だ。
恐らく、あれがガルナルナ国の国旗なのだろう。あれ?? 土煙で良く見えなかったが、馬に乗っているのは全ての騎士じゃなかった。あれは、兵士だろうか? 軽装の青い鎧を着た兵士たちは歩いていたり、大きな迷彩色の戦車を押していた。
迷彩色の戦車は手押しのようで、前方に大筒があるけど、後ろは車輪と台だけだった。乗っている人も二人だけで、後は手押しの人たちが大勢後ろに付いていた。だからか、戦車は動きも遅い。
空を飛んでいる俺たちが背に乗っている巨大なブルードラゴンに、ガルナルナ国の正規軍が気が付いたようだ。
急に幾つもの戦車の大筒がこちらに向かって火を吹いた。
高速の砲弾が飛んでくる。
ヤ……ヤバいぞ!!
「ブルードラゴン! 避けろーー! 緊急回避だーーー!」
「あ!!」
「あ、ソーニャーー!!」
俺の叫びも虚しく。ブルードラゴンの胸に砲弾が次々と当たっていく。爆発の衝撃でソーニャがドラゴンの背から落ちてしまった!!
白い鎧が太陽の光を反射しながら遥か地上へと落下していく。
だが、更に悪いことにはブルードラゴンが怒りだして、ガルナルナ国の正規軍向かってドラゴンブレスというのを口から吐き出した。
凄まじい青い炎だった。
遠い西の草原がガルナルナ国の正規軍と共に一瞬でただの焼け野原となった。
俺はソーニャを追って、遥か地上へと落下した。俺の身体は急速にブルードラゴンの体から離れていった。
気づけば、地上へ落下しているソーニャまで俺は無我夢中でジタバタしていた。
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