ナイツ・オブ・ラストブリッジ

この橋は絶対守りきってみせる!
主道 学
主道 学

37

公開日時: 2023年10月20日(金) 02:53
文字数:1,202

  窓の外から本格的に朝日が昇って来た。会議が終わり。みんなが出ていくと、ソーニャがヒッツガル師匠と少し話があるといい軍会議室に残った。


 サンポアスティ国。

 一体。どんなところだろう?

 それに、ここラピス城へどこまで進軍しているのだろう?


 帰り際に石扉の近くで、オニクボが俺の顔を覗いて急にニッと笑った。だが、目は決して笑っていなかった。

 

「鬼窪くん。お前、これでマジでいいと思ってるのか?」

「え? いや……??? まさか!」

「あっはーー、いや。違うぜ。俺様たち黒の骸盗賊団は、この戦争がひと段落するまで西の草原で燻っていてやるぜ。その方が安心だろ」


 オニクボは口笛を吹いて、正門側の石階段の方へ帰って行った。

 一体。オニクボは何を考えているだろう?

 さっぱりだよ。


「ふう、オニクボ相手だと緊張するなあ」

 

 そして、今度は通小町が俺を呼び止めた。


「うん??」

「鬼窪。さっきの話の続きだが……。実際はまったく違っていたかもな。私の推測だが、いつもあいつの隣にいて庇っていたんだろ鬼窪は……。だから、猪野間とかにモテていたのは、秋野じゃなくて、鬼窪の方だったのかもな」

「へ……え……そんな……まさかなあ……」


 眩しい朝日が通小町の意地悪そうな顔を照らした。


 徹夜続きの昨日が終わり、今日が始まった。

 強国に挟まれた俺たちには、昨日も明日もないんだ。

 気持ちのいい風が吹く日だった。 

 ところが、前が見えにくいくらい霧が立ち込めていた。

 しばらくして、小雨も降りだしてきた。

 確か南方のサンポアスティ国って、雨が大干ばつで降らなくなったって言われているんだった。


 俺はサンポアスティ国の気持ちがさっぱりわからなかった。


 グレード・シャインライン国から資源を奪うとか、食料を奪うとか、そうじゃないだろう。侵略して奪って、一体何が残るんだ。


 午前中はさすがに眠いので、みんなで仮眠を取り朝食を摂ると、さあ、出発だ。


「鬼窪くん。じゃ、行くわよ。早く乗りなさい」

「鬼窪。こっちには絶対乗るな」


 霧を運ぶ風が強くなってきた。

 橋の上で、マルガリータの大きな箒には俺が乗り、隣の通小町はマルガリータのと比べると幾らか小さい箒に跨り、そこにガーネットが乗った。


「飛んで!」

「飛べー!」


 二人の掛け声で猛スピードで二つの箒が、遥か南へと飛んだ。

 だけれど、通小町はフラフラと、まるで箒が酔っているかのような飛び方だった。でも、通小町の後ろに乗っているガーネットは意外に涼しい顔だった。

 

「あ! 濃霧で視界が悪いから偵察の意味ないかも!!」

「ふふふふふふ……今頃、気が付いたか、私は目星は付いている。さあ、私について来い!」


 マルガリータはやっぱりどこか抜けていた。けれども、通小町はフラフラとしながら、海と山のあるここから南西部の一点に向かう。そこには……ああ。ソーニャも連れてくれば良かったんだ。と、思うほど、見事な海と緑に囲まれた城と城下町があった。 


 グレード・シャインライン国の本国だ。


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