窓の外から本格的に朝日が昇って来た。会議が終わり。みんなが出ていくと、ソーニャがヒッツガル師匠と少し話があるといい軍会議室に残った。
サンポアスティ国。
一体。どんなところだろう?
それに、ここラピス城へどこまで進軍しているのだろう?
帰り際に石扉の近くで、オニクボが俺の顔を覗いて急にニッと笑った。だが、目は決して笑っていなかった。
「鬼窪くん。お前、これでマジでいいと思ってるのか?」
「え? いや……??? まさか!」
「あっはーー、いや。違うぜ。俺様たち黒の骸盗賊団は、この戦争がひと段落するまで西の草原で燻っていてやるぜ。その方が安心だろ」
オニクボは口笛を吹いて、正門側の石階段の方へ帰って行った。
一体。オニクボは何を考えているだろう?
さっぱりだよ。
「ふう、オニクボ相手だと緊張するなあ」
そして、今度は通小町が俺を呼び止めた。
「うん??」
「鬼窪。さっきの話の続きだが……。実際はまったく違っていたかもな。私の推測だが、いつもあいつの隣にいて庇っていたんだろ鬼窪は……。だから、猪野間とかにモテていたのは、秋野じゃなくて、鬼窪の方だったのかもな」
「へ……え……そんな……まさかなあ……」
眩しい朝日が通小町の意地悪そうな顔を照らした。
徹夜続きの昨日が終わり、今日が始まった。
強国に挟まれた俺たちには、昨日も明日もないんだ。
気持ちのいい風が吹く日だった。
ところが、前が見えにくいくらい霧が立ち込めていた。
しばらくして、小雨も降りだしてきた。
確か南方のサンポアスティ国って、雨が大干ばつで降らなくなったって言われているんだった。
俺はサンポアスティ国の気持ちがさっぱりわからなかった。
グレード・シャインライン国から資源を奪うとか、食料を奪うとか、そうじゃないだろう。侵略して奪って、一体何が残るんだ。
午前中はさすがに眠いので、みんなで仮眠を取り朝食を摂ると、さあ、出発だ。
「鬼窪くん。じゃ、行くわよ。早く乗りなさい」
「鬼窪。こっちには絶対乗るな」
霧を運ぶ風が強くなってきた。
橋の上で、マルガリータの大きな箒には俺が乗り、隣の通小町はマルガリータのと比べると幾らか小さい箒に跨り、そこにガーネットが乗った。
「飛んで!」
「飛べー!」
二人の掛け声で猛スピードで二つの箒が、遥か南へと飛んだ。
だけれど、通小町はフラフラと、まるで箒が酔っているかのような飛び方だった。でも、通小町の後ろに乗っているガーネットは意外に涼しい顔だった。
「あ! 濃霧で視界が悪いから偵察の意味ないかも!!」
「ふふふふふふ……今頃、気が付いたか、私は目星は付いている。さあ、私について来い!」
マルガリータはやっぱりどこか抜けていた。けれども、通小町はフラフラとしながら、海と山のあるここから南西部の一点に向かう。そこには……ああ。ソーニャも連れてくれば良かったんだ。と、思うほど、見事な海と緑に囲まれた城と城下町があった。
グレード・シャインライン国の本国だ。
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