「王女。その通りかも知れません」
「そうか! オニクボよ。マルガリータも気を付けてくれ。我が城の国宝の力。思う存分使ってくれよ」
「はい!」
「承知しました!」
翌朝、思わぬエロハプニングがあったが、無事に俺とマルガリータはブルードラゴンの背に乗り、途方もない西を目指すことになった。どんなエロハプニングだったかというと、一階にある石造りの大風呂で朝風呂を楽しんでいた俺に、湯気で見えにくかったから良かったものの。何食わぬ顔の服を脱いだソーニャが乱入してきてしまったことだった。
そういえば、水の神殿から地上へ出てから、風呂へ入りたかった人は俺だけじゃなかったんだな。
「いたたたた……。なあ、マルガリータのお師匠ってどんな人なんだ」
未だ。平謝りしまくったり、真っ赤になってしまったほっぺと頭をしたりして、顔を摩りながら俺はブルードラゴンの背に乗り、マルガリータに聞いた。マルガリータのいつも空を飛んでいる大きな箒は今は、ドラゴンの背に括り付けてあった。
「へ? え……ああ。言ってなかったわよね。うーん。尊敬はしてるんだけど……一言でいうとどこかがすっごくすっぽ抜けてるお人だったわね。あ、そうだ。どうせ西へ行くならヒッツガルお師匠様も連れていって御助力を願ってみましょうよ」
「そのヒッツガル師匠って、強いのか?」
「ええ、私なんて足元にも及ばないわ……あ、でも。まったく役に立たないかも知れないわね」
「???」
ブルードラゴンは前方を向いてグングンと遥か西へと飛んでいく。だけど、俺たちの言葉を聞いていたのか下方を向くようになった。速度は徐々に落ちていって、体で受ける風の抵抗が弱まってきた。
しばらくすると、草木も少ない荒れ果てた地に、ポツンと一軒の赤い屋敷があった。その屋敷は煙突から煙を立てている。
そういえば、もう昼時だ。ラピス城からブルードラゴンに乗って随分飛んだな。
ブルードラゴンが急にその赤い屋敷へ下降していった。
俺たちに気を使ってくれたんだ。
俺は中学の時から体力には自信があったが、俺の後ろに座っているマルガリータは疲れたのか今では無言になってしまい。ひたすら俯いていた。
こう見ると、この人ってなんだか見た目は陰キャなんだなあと思えた。でも、何故か実際の性格はその逆だった。
「うーん。お腹空いた……あら、良い匂い?!」
マルガリータは顔を上げると、真っ先に下を向いた。
「あ、ヒッツガルお師匠様のお屋敷だわ!」
「よ、よし! あ!あれれ?? あれは?!」
「うん?? ここからじゃ、小さくてよく見えない! けれど……最悪みたい」
下方には複数の黒の骸盗賊団がヒッツガルの屋敷を囲んでいた。
「そんな……生きていたなんて……。鬼窪くん! このままだときっと正体がバレるてしまうと思うわ! ほら! あの人!」
「え? 誰だ? ここからよく見えるなあ……」
「あそこに薄っすら見える人影……こんな上空まできてしまう威圧感! 間違いないわ! あの人! あの史上最凶最悪の黒の骸盗賊団の頭領オニクボよ!」
徐々に地面が近づいてきた。
きっと、ブルードラゴンも野生のカンで危機的状況。このヤバさに気が付いてくれたんだ。下の草原には、派手な緑色と赤色の服を着た初老の人物が黒の骸盗賊団に囲まれ……倒れていた。
「お師匠!!」
マルガリータは咄嗟に火炎弾を黒の骸盗賊団の端に向かって数発放った。
凄まじい豪炎と爆風で盗賊団が何人か吹っ飛んだが、それと同時に黒光りするナイフがマルガリータの胸部へ向かって飛んできた。
「あ、危ない!!」
俺は即座に神聖剣でそのナイフを弾いた。
「ち、ちくしょおおおお! こうなりゃ!」
俺は焦って、ブルードラゴンが草原に着地する前に地面へと飛び降りた。
強い衝撃を足へ受けると共に、荒れ果てた草原に着地した。幸い。ヒッツガル師匠と思しき人は特に目立った外傷はないようだ。
「良かった……う!!」
俺はゾクリとした。
凄まじい威圧感が俺へ押し寄せてきた。
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