ナイツ・オブ・ラストブリッジ

この橋は絶対守りきってみせる!
主道 学
主道 学

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公開日時: 2023年11月15日(水) 01:19
文字数:1,849

 俺は猪野間に目線で合図をすると、ダクトまで走った。

 蜘蛛型警備ロボットが口から火を吹く。

 俺はその火炎放射を避けて、ダクトの中へと飛び込んだ。


 猪野間も付いてきて、ダクトへ飛び込むが。


 ダクトの中は非常に狭かった……。


「ちょっと……鬼窪くん!」

「え??」

「どこ触ってるの……」


 ポカンと頭を叩かれた。


「あ! ごめーーん!」

 

 俺は頭を摩りながら、今度はダクトから脱出するために出口を探して這いつくばる。


 ダクトの中は、真っ暗で、出口はまだ見つからなかった。


 しばらく、隣にいる猪野間と密着しながら出口を探すと、西の方に光が差していた。


 そこへと向かう。


 ここまでは、さすがに蜘蛛型警備ロボットは追ってこなかった。

 俺は猪野間と進むと……。

 

 なんとか、無事にダクトから外へ出ることができた。そこは広大なコインランドリーだった。

 

 この辺りは、多分。

 無人だけれど、居住区なんだ。


 コインランドリーは黄色が基調の部屋で、洗剤の匂いが部屋一杯に充満していた。


「ここらへんは、兵は外で戦っているから無人なのよ」

「そうなのか……ソーニャたちはどうしたんだろう?」


 俺はコインランドリーからエレベーターの扉まで歩いて行った。

 

 いい匂いだけれど、俺は昔から洗剤の匂いを大量に吸うと眠くなるんだなあ。


 心なしか俺は急いで歩いた。


 猪野間の方を向くと、制服の汚れをここで落としたかったようで、チラチラと一つのコインランドリーを見ていた。


「鬼窪くん。あそこのエレベーターから上へと行けるわ。クシナ皇帝は別のエレベーターに乗り換えるか、8階のエレベーターホールから階段を使わないといけないの。それと、鬼窪くん。クシナ皇帝はかなり強いわよ。気をつけて」

「わかった。任せろ。必ず倒してみせるさ」


 ボタンを押して、エレベーターの扉が開くのを待った。


「鬼窪くん……ちゃんと、勉強してるの? クシナ皇帝の武器はあの斬功狼よ」

「斬功狼? って、何?」

「ふぅー、あのね。古くからある大妖刀とも呼ばれるほどのクシナ帝国の国宝よ。どんなに固いものでも斬れる刀なの」


 それって、何でも斬れる刀かな?

 でも、神聖剣なら大丈夫な気がする……。


 なんたって、こっちもグレード・シャインライン国の国宝の一つだ。


「あ、そうそう。通小町のやつがこの世界に17年前に産まれたっていうんだ。不思議だろ? 猪野間もそうなのか?」

「ええ、そうよ」

「うへええ……」


 猪野間は即答して、遠い目をした。


「私の場合は、クシナ帝国の有名な街で育ったの。子供の頃から鬼窪くんや前世の記憶を正確に覚えていたわ」

「頭は混乱したのか? 俺は今、混乱している……」


 この世界って一体??


 なんで、俺だけ海の中??

 猪野間は長い黒髪を掻き上げてから、首を縦に振った。


「ええ、少しだけ混乱したわ。その時から何故かひどく不安になって、近くの本屋で独学で補助魔法を学んだり、猪野間一刀流の稽古を始めたの。そして、私が17歳の時に、クシナ皇帝陛下の誕生日パレードで、今の家族と離れていた時に、悪漢に路地裏に連れていかれそうになったの。だけど、お忍びで出店を覗いていたクシナ皇帝が助けてくれたの」

「ふーん。良かったな。あ、それが恩か?!」


 猪野間はクスリと笑って、腰にぶら下げた刀の柄をポンと叩いた。


「あ、でも。一人でも倒せたわ。悪漢があまりにも滑稽だったから」

「あ、ああ……それはご愁傷さまで……」


 ポーンっと、音が鳴ってエレベーターの扉が開いた。

 俺と猪野間が箱へ入ると、猪野間が意外な顔でこくりと頷いた。


「鬼窪くん。このエレベーター……10階までは行けるみたい」

「うん?」

「恐らく……身分の高い人がこの居住区にいたんだと思う。普通こんなに上へはいけないの」

「ふーん……でも、それはラッキーだ」


 猪野間が押したボタンは10階だ。

 箱はグングンと上昇する。

 


 エレベーターが上へと行く途中で、誰かが乗ってこないかと警戒する。だが、いつまでたっても、誰も乗ってこなかったようで、ホッと胸をなで下ろす。


 ラピス城は無事かな?

 ソーニャたちが心配だ。


「10階に着いたわよ。クシナ皇帝は多分、この上の階にいるわ」


 俺は神聖剣を鞘からゆっくりと抜いた。

 扉が開くと、豪奢なカーペットが敷かれた廊下へと出た。


「あそこの階段から上りましょう」


 猪野間が指差す方を向くと、左側に透明な階段があった。殺風景な廊下で、辺りは静寂が包んでいた。今のところ、俺と猪野間の足音しかしなかった。


「うん??」


 俺の感がこの先は危険だといっている。

 クシナ皇帝とは違う重圧を感じた。


 この感じ……この重圧感。

 

 オニクボだ!


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