「ヒーハー!」
「撃て! 撃てーーーー!!」
「追えーー!」
サンポアスティ国の兵たちが、追ってくる。
うへええええ。
通小町よ。
いいぞ!
なんだか頼もしいぞ!
そこは、飛んでくる銃弾も少ない。サンポアスティ国の兵がもっともいない網目のようなものだった。何故なら……。俺たちは、オニクボが先に倒した兵たちが多いところを通小町と飛んでいったからだ。
オニクボが通った空路から、サンポアスティ国の兵が空からたくさん落ちてきていた。
「鬼窪……。皆、死んでいるぞ?? でも、何故?」
不思議だ。
上空から落下しているオニクボに斬られた兵たちは、みんなおっかないほどの苦悶の表情をしているんだ。
よく見ると、サンポアスティ国の兵たちは、斬られたところが、手や足だった。怪我は大したことがないんだ。
なのに、どうして??
「鬼窪! これは多分、毒だ。斬られたところは皆大したことがないからだ。 オニクボの武器には何か強力な毒が塗られているんだよ」
小さめな箒に乗った通小町が、サーフィンから落ちたその兵たちを見て、皆毒によって倒されていると考えたみたいだ。
「じゃあ、アスティ女王も?!」
「ああ、そうだろうな! 急いで行くぞ! オニクボより先にアスティ女王を倒すんだ! じゃないと、アスティ女王が死ぬより恐ろしいひどい苦しみを受けてしまうぞ!」
そりゃ、まずいな!!
「わかった! 通小町! 頼む! 急いでくれ!!」
――――
サンポアスティ国 女王の間 別名ライオン宮
「おや?」
女王の傍のライオンの一匹が総毛だった。
アスティ女王が不審に思って小首を傾げた。ライオンを窘め。右手で玉座の後ろにある。とある武器をそっと探った。
未だに鬼窪のことを案じていた西田は、エスニックな巨大な窓ガラスの窓際でサンポアステイ国の兵の隊長と話していた。
「今、鬼窪くんはどこにいますか? 怪我とかしてない?」
「はい。目下、箒に乗った聖女と共に、ここブルー・アクア・クイーンへと向かっているとのことです」
「箒? 聖女? なんのこと?」
「いや、事実を言ったまででして……」
突如、黒い影が空から現れて、巨大な窓ガラスが割れた。
アスティ女王の傍の一匹のライオンが激しく咆哮した。
「きゃー!」
「な、なんだ!! 」
何が起きたのかと、サンポアステイ国の隊長は、武器を構えたが、瞬時に何ものかの武器で喉元を掻き斬られ絶命した。西田は反射的に窓ガラスから女王の傍へ転移した。巨大な窓ガラスから現れたのは、酷い形相のオニクボだった。すぐさま、多くの見張りのサンポアスティ国の兵が倒れる。
「ふふふふ、会いたかったぜー! やっと会えたぜ。ここにいるのはわかっていたぜ。俺さまは憎い相手だと臭いでわかるんだぜ。さあ、血を巻き上げて踊ろうぜ! 苦しい苦しいブラッディ・ダンスだ!」
「お主! 黒の骸盗賊団の頭領のオニクボか?!」
「鬼窪くん?? え??」
オニクボは人差し指を面前に上げてから、窓の下の遥か下方を指差した。
「あいつは、まだ空にいるんだ。誰にも邪魔なんて野暮なことは……」
「??? 鬼窪くんのパパもこの世界に来たの?? 鬼窪くんのパパって、こんな顔だったっけ??」
「だー!! ややこしい!! 黙れこの!!」
やたら首を捻り出す西田に向かって、オニクボが短剣を投げた。だが、サンポアステイ国の近衛兵の一人がそれを叩き斬った。
それと同時に、オニクボが目にも止まらぬ猛スピードで、近衛兵たちの袂へ次々と入り、即座に短剣で全ての近衛兵の手足や胴に傷を負わした。
「うっ!」
「……」
「……」
途端に、近衛兵たちが苦しみもがいて、倒れだした。
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