ナイツ・オブ・ラストブリッジ

この橋は絶対守りきってみせる!
主道 学
主道 学

66

公開日時: 2024年1月2日(火) 23:16
文字数:1,402

  巨大な蝿が佇んでいた。


「な!? なんだ! この大きな蝿は??」


 ふしゅーーー、と巨大な蝿が大口を開ける。


「あ、あれが、クラスド・エドガーなのか??」


 巨大な蝿の口から白い煙が吐き出された。


「避けろ!!」

「う、うわ!!」


 俺は白い煙を躱すため。横に飛ぼうとしたが、オニクボが俺の右肩をがっちりと掴んで、石階段の上へと引っ張った。途端に、さっきまで俺がいたところは、真っ白くなり、ウジが湧く腐敗した空間となった。それと同時に恐ろしいまでの悪臭が辺りに漂った。


「あいつの強さはまだ未知数だが、これだけはいえる。絶対に近づくな!! 俺は逃げるぜ!!」


 オニクボが二階へと駆け上がって行く。

 俺は神聖剣を構えて、クラスド・エドガーへ突撃した。


「うおおおおーー!! 相手がどんな化け物でも、叩き斬ってやるぜ!!」


 ザシュっと、巨大な蝿の腹部を斬り裂いた。

 クラスド・エドガーという名の蝿は、断末魔を上げた。


 よ、弱いぞ??

 この蝿??


 はっきりいって、楽に勝てるぞ……??


 巨大な蝿が呻きながら、口から卵を吐き出した。

 物凄い悪臭が急激に辺りに漂う。

 卵が地面に落下すると、割れて、中から……鎧を着た大人の男性が現れた。


「へ?」


 巨大な蝿は、まだ卵を幾つも吐き出している。

 卵が割れ、大人の男が生まれていく。

 その男たちは、こちらを確認すると、剣を構えて突進してきた。


「うへええええ!!」


 俺は神聖剣を構えて、迎え撃つ。

 だが、突然。

 右肩が乾いた爆破音と共に、破裂した。

 激痛が走る。


 巨大な蝿の方を見ると、今度は卵から格好からして、魔法使いの女性が生まれていた。

 

 次は槍使い。

 その次は僧侶。


 と、地下いっぱいに卵から生まれた兵が溢れ出す。


 カキ――ンン!!


 一番最初に生まれた騎士の刃を神聖剣で防いだ。

 だが、あまりにも重い一撃だった。


「う、うわ! こいつら強いぞ!!」

 

  俺は右肩を抑えながら、次々と斬り込んで来る騎士の猛剣戟を躱した。

 正直、卵から生まれた騎士の剣戟を躱すだけで、精一杯だった。

 

 だが、騎士に隙が生まれた。

 俺は騎士の振り上げた剣を、身を低くして神聖剣の横薙ぎで胴を斬った。騎士が腹を抑えて倒れると、今度は魔法使いが火炎の魔法を撃ち放つ。


 火炎は、右足を横にずらして、そのまま横へ転がり込んで躱した。


 その次は、槍使いの槍が俺の胸元目掛けて突き進んできたので、神聖剣で槍を払う。


 軽いステップで、石階段まで後ずさると、愕然とした。

 未だ。巨大な蝿が次々と卵を生んでいる。

 卵は無尽蔵に生まれ、祭壇の床が見えなくなるほどだった。


 悪臭で鼻が曲がる。


 俺は一階へと逃げた。

 石階段を必死に駆けていると、倒れたはずの騎士や槍使い。魔法使いに僧侶。格闘家のような上半身裸の男性などが追い掛けてくる。


 石階段から這い出た俺は、回れ右して、廊下を走ってなるべく広い場所を探した。


 だが……。

 その時。


 騎士たちと同じく。地下から這い出たシャーマンのような格好の老人が、黒い靄のようなものを右手から放った。


 靄は廊下一杯に広がった。


 俺は顔をしかめ。

 左手で口を抑えた。


 けれども、身体中が悲鳴を上げるほどの激痛が走った。


「痛ってーーーー!!」


 む、無理だ!!

 きっと、口を抑えても身体の皮膚から靄が浸透してきているんだ。


「ぐわっ!!」

「へ??」


 その苦痛の言葉は、俺からじゃない。

 ハイルンゲルトの声だった。

 俺の身体から黒いオーラが溢れ出す。

 肉眼で見えるほど、鮮明なハイルンゲルトの亡霊が天高く昇っていってしまった。


読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート