ナイツ・オブ・ラストブリッジ

この橋は絶対守りきってみせる!
主道 学
主道 学

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公開日時: 2024年1月2日(火) 23:15
文字数:2,024

  俺は白い煙を神聖剣で上段から白い煙へ振り下ろす。

 白い煙が左右に霧散した。

 

「みんな! 休憩時間だ! うりゃーー! 範囲完全回復魔法!」


 通小町が俺たち、ナイツオブラストブリッジとクラスメイト全体に回復魔法を唱えた。


 巨大な光が俺たちを、いや、甲板ごと包み込んだ。

 お蔭で、俺の体力はすぐに全快になった。   


「がんばれ! そのまま勝つんだ!!」


 通小町は、なんと甲板の端っこを陣どって、回復魔法を唱え続けた。


 これによって、俺たちは不死で無敵の戦士になった。


「みんな無事か! 白と騎士の国が見えてきたぞ! そのまますぐに本城へ乗り込む!」


 ソーニャが一体の獣を斬り伏せながら叫んだ。


 俺も獣を斬り伏せながら、北の方角を見ると、濃い白煙で覆われた広大な王城があった。その周辺には真っ白な様々な建造物が建ち並ぶ厳かな城下町が佇む。まるで、白い雪が降り積もっているかのようだった。


 段々と、白き輝く希望が、トルメル城の裏門の入り江へ近づくにつれ、腐敗臭が強くなって来た。


 俺は鼻を抑えた。


「な、なんて……ひどいんだ……」


 トルメル城は、腐敗がかなり始まっていた。

 ぶすぶすと至る所から煙を発し、見たこともない魔物が外廊下や内廊下を徘徊している。人はいない。


 無人だった。


 ここに、暴君クラスド・エドガーが……。


 甲板のまだいる獣をほったらかして、トルメル城の入り江に飛び込んだ。


「うん??」


 地面の砂が何か変だ。

 ぐしゃりとしている。

 

「う、うわ!!」


 それは腐り落ちた何かの腕だった。


 周辺には、同じような得体の知れないものが地面に落ちている。


 は、早く!

 元凶を倒さないと!


 クラスド・エドガーは、謁見の間にいるはずだ!!


 入り江から正門まで、俺は走りに走る。

 ねっちょりとした白い砂浜を駆け。

 幾度も得体の知れないものを踏んづけた。


 やっとのことで、たどり着いたトルメル城の正門は、やはり白く覆われていた。ぶすぶすと煙を巻き上げ、腐敗している。


 仕方なく。正門を神聖剣で、叩き割って、俺は謁見の間まで、廊下をまた走った。

 

 城の中は獣の数が増えてきた。 

 おびただしい白い煙を躱しながら、斬り伏せて、斬り伏せて。


 ようやく、二階へといく石階段のところへたどり着いた。


 その時、俺は右肩に鋭い痛みを覚えた。

 右肩辺りのワイシャツがいつの間にか大きく破れていて、白い煙が直に肌に当たっていたのだ。

 

「つつつつつーー……痛ってえええ!」


 俺は顔をしかめて、二階の階段を上がる。

 だが、二階の階段上に巨大な腐敗した象のような獣が佇んでいた。

 象はノシノシと、俺に接近してくる。

 俺は軽いステップで、逆に相手に素早く近づくと、神聖剣でまず長い鼻を切り裂く。それから、巨大な象が暴れ出したので、後しろへ空中で一回転してから、鋼雲剣を放った。


「鋼雲剣!!」


 光の爆速は全て、象を貫通する。

 腐敗した巨大な象がぶっ倒れた。

 それと同時に周囲に白い煙が充満した。


「ふうーっ」 


 俺は苦しい息でも急ぎ。階段を上がり、踊り場へ出た。


「うん??」


 二階への廊下は今にも静かに腐り落ちようとしていた。

 足場がかなり悪い。

 だが、荘厳な謁見の間への大扉はすぐそこにあった。


 俺はジャンプして、大丈夫そうな足場へと着地しては、それを繰り返した。謁見の間の大扉までくると、神聖剣で扉を破った。


「やった! ここまで来れたぞーーー!!」


 けれども、玉座には……暴君クラスド・エドガーの姿はなかった。


「奴は……祭壇にいるぞ。鬼窪くん」

「?? その声はオニクボ?!」

  

 振り向くと、オニクボが左腕を真っ白にしながら、佇んでいた。


「ははっ! 俺としたことが、ドジっちまいやがった……」

「え? え?」


「祭壇にいる……。過去にクラスド・エドガーと呼ばれた化け物がな……」

「ば、化け物??」

「それは、会えばわかるってもんだぜ。……すまんが、俺はクラスド・エドガーとは二度と会いたくないんでな。お前たちを道案内だけしてやることにした……ついて来い」

「ああ……」


 暴君クラスド・エドガーが化け物??

 一体……??


 俺は謁見の間から、オニクボについていき今度は祭壇へと向かった。

 床がもろくなっているけど、オニクボは安全な足場だけ選んで跳躍して着地いく。俺もそれに習った。


 ここは、広大なトルメル城の二階だが、オニクボは獣を瞬殺しながら一階へ降りていった。獣にも髑髏のナイフの猛毒は効くようだ。


 オニクボは一階へたどり着くと、豪奢な廊下を突っ走り、広い大聖堂へと入る。そのど真ん中を指差した。


「ありがとな。オニクボは……これからどうするんだ?」 

「さあな……。お前の味方が来たら、全員道案内してやるよ」

「ああ、そうしてくれ」


 俺は大聖堂の床にぽっかりと開いた地下への石階段を降りていった。中は足元が見えないくらいに、薄暗い。階段を慎重に降りていくと。やがて、小さな祭壇を見つけた。トルメルの国旗が両端に幾つも立ててある。その奥にそれはあった。


 地下にある全てのロウソクが急に灯った。その明かりに照らされた小さな祭壇の前に……この世のものとは思えない。


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