「な?! 西田!!」
それも、俺のもっとも身近な存在。
西田 円《まどか》という名の……幼馴染だった……。
マルガリータが大きな箒で庭園の隅に着地した。
俺は急いで神聖剣を抜き、サンポアスティ国の兵を迎え撃つ。
元々、着地点の庭園には見張りの兵が数十人もいた。
茶褐色の鎧を寸断していくと、吐血したサンポアスティ国の老兵の一人が、俺の顔を見て驚いた。
「お、お前も……い、異世界人か?!」
「ああ。そうだ」
「どうりで、強いわけじゃー!」
そう言った老兵が斬りかかってきたが、袈裟斬りでさばく。老兵が事切れると、俺は軽いステップでサンポアスティ国の兵を次々と、唐竹割り、横薙ぎ、逆袈裟に斬っていった。
マルガリータが後ろで口笛を吹いた。
「相変わらず鮮やかねえー。鬼窪くん。その調子で女王の間まで行きましょう」
「お、おう! 何故か体が勝手に動くんだ」
俺とマルガリータは、庭園から緑色の蔓と流れ落ちる水流を避けて、東の門を神聖剣で叩き割って、城内へと突入した。
そこは蔓の張り巡らされた外廊下だった。俺と大きな箒を担いだマルガリータは必死に女王の間まで走る。
「はあ、はあ……鬼窪くん。私の体力じゃ残念だけどここまでね……後は鬼窪くんだけで戦って」
「ああ、わかった! そうだマルガリータ! 通小町に治してもらってくれ。多分、体力も回復するから」
「わかったわ」
俺はマルガリータを残して、蔓を避けながら、ひたすら外廊下を突っ走る。
南国を思わせる高価な花瓶や、花が飾られたカラフルな外廊下だった。内廊下には、書斎が見えたり、客間が見えたりするが、どれも無人だった。
等間隔にある外へと繋がる巨大なガラス窓には、今も真っ白な入道雲が見える。
「うおおおおーーー!!」
「ヒーハー――!!」
「ラピス城の騎士だ!! 仕留めろーーー!!」
サンポアスティ国の多くの兵が巨大な窓ガラスを突き破って、サーフィンで俺のいる外廊下へと突っ込んできた。
「うへえええええーーー!!」
俺は驚いて、神聖剣を闇雲に振る。
途端に、サンポアスティ兵の数発のライフル銃が火を吹く。一発の弾が俺の肩をかすった。
「痛ってーーーー!!」
「大丈夫?! 今、場所を移動するから!! 強制転移!!」
「へ??」
突然、俺の足元から凄まじい光が発した。激しい光で目を覆うほどだった。
と、激しい光が止むと、いつの間にか外廊下ではないところに俺は立っていた。
「うん?? こ……ここは、きっと城の外から見たサンポアスティ国の女王の間だ!」
間違いないはずだ。
ここは女王の間だった。
「お主が鬼窪か?」
「へ……え……」
「お主が鬼窪かと聞いている?」
「あ……」
俺は呆気にとられ、はいと頷くことも、言葉もでなかった。
サンポアスティ国の女王が目を奪われるほどの美人だったからだ。
浅黒い整った顔立ちに、背が高く。理知的と捉われるオールバックの黒髪は、後ろ側は長く床まで自由に伸ばしている。その女王の傍にいる二匹のライオンも煌びやかな銀色の毛をしていた。二匹のライオンは座ったままじっとしている。
女王の周りにいる大勢の兵たちは、立派な茶色のフルプレートメイルを着ていた。
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