「何奴?!」
クラスド・エドガーが粉々になった槍を地面へ投げ捨てた。
「そ、その人は……ㇵイルンゲルトよ……」
マルガリータが空から言った。
猪野間は俺の隣へ来て、目を見開いた。
うん??
ハイルンゲルト??
の、後ろ姿が俺には見えるんだけど……。
「ああ、信じられない! あの四大千騎士最強のハイルンゲルトが亡霊となって、現れるなんて!!」
マルガリータは感激して、箒で空を飛び回る。
だが、周囲はいつの間にか、サンポアスティ国の兵が全滅していて、白と騎士の国の千騎士の軍が、俺たちを包囲していた。
「鬼窪くん。行くぞ!」
「あ、ああ……」
ハイルンゲルトが鋼雲剣を放った。
「鋼雲剣!!」
俺もそれにならって、鋼雲剣をクラスド・エドガーに放つ。
二つの轟音と共に爆速の光の束は、その数が人の想像を遥かに超えた。
光の矢となって、クラスド・エドガーの身体を白い鎧ごと貫通する。
「うぐっ!!」
クラスド・エドガーは血を吐いて、倒れた。
そのまま大量の光の矢は、クラスド・エドガーの身体を貫通しながら後ろへと飛び。白と騎士の国の多くの千騎士の身体を貫いていった。
貫通した光の矢は地面に着弾すると同時に、大爆発をした。
辺りに白い色の鎧の破片が無数に紙の如く飛び散った。
「そ、そんな……あれほど頑丈だった白と騎士の国の千騎士の鎧が……まるで、紙切れのようよ」
猪野間は片手で、おでこを抑えながら眩暈を覚える。
うへええええーー!
それは、俺のセリフだあああ。
発動して、敵をなぎ倒していったのは、ほとんど、ハイルンゲルトの鋼雲剣の光の束だ!!
こんなに強かったのか?!
ハイルンゲルトは?!
それから、俺とハイルンゲルトは次々と白と騎士の国の千騎士たちを、なぎ倒していく。
遥か北の方で超高熱の爆発が所々で起き始める。
ヒッツガル師匠とブルードラゴンとクシナ要塞の攻撃だった。
更に充満する黒煙に包まれていく千騎士の軍隊は、その統率を失ってきた。
全滅したサンポアスティ国の兵に代わり、重火器によって武装したクシナ要塞の重銃士団長たちの部隊が俺たちナイツオブラストブリッジに加わった。
気がつくと、俺たちはこの戦争で勝利を掴んでいた。
――――
あの戦争から、なんとか橋を守れた。
ここは、周辺の強国とは異なり、唯一資源が豊富なグレート・シャインライン国。その豪華な装飾のある。広々とした玉座の間にある玉座に、俺は今座っていた。隣には、お妃であるソーニャがいる。
ここに座っていると、いつも思うんだ。
なんだか幸せ過ぎて、夢を見ているような感じだって……。
俺はあの戦争の後。
グレート・シャインライン国の王になったんだ。
だけど、まだ白と騎士の国とは戦争中だった。
クラスド・エドガーが統治していたといわれる国。そして、千騎士の国。それに最強最悪の国と呼ばれる白と騎士の国と……。
「あなた。もうすぐご到着よ」
お妃であるソーニャが隣から囁いた。
「お、おう」
緊張するなあ……。
俺は玉座で、そわそわした。
玉座の間の大扉がゆっくりと開き、従者たちと西と南の国のそれぞれの代表者が到着した。
アリテア王とアスティ女王だ。
あれ??
東の国のクシナ皇帝は??
遅刻かな??
そう思った直後、すぐに玉座の間の大扉が勢いよく開いた。
「うぐっ! 鬼窪王よ! 私でもダメだった!」
クシナ皇帝だ。
連れそう満身創痍の従者たちと共に、血を吐きながら、クシナ皇帝は床に崩れ落ちた。
「だ! 大丈夫か?! どうしたんだ!!」
俺は慌てて玉座からクシナ皇帝へと駆け寄った。
ソーニャもその場で立ち上がった。
「クシナ要塞は壊滅。東の兵は全滅だ。白と騎士の国には、何人たりとも敵わないんだ! いや……人では……敵わない」
「へ??」
「え??」
俺とソーニャは異口同音した。
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