「う……うーん」
意識を取り戻したんだな。俺……。
意外なことに、ここは海の中ではないらしい。
目を開けると、そこは草原だった。でも、何故?
確か海に落ちたんだよな?
やべえ、昨日の模試の勉強したところを完全に忘れてしまった。
いや、それどころじゃない! 俺は確かあの橋から落ちたんだよな。
未だにわからないことだらけで、頭が混乱していた。
あ、でも。さっきの女の人。ソーニャは無事か?!
草木もあまりない荒れ果てた草原を見つめて気がついた。
あれれ? 怪我が治っている??
痛みや出血はなかった。
俺はすぐに仰向けになっていたが起き上がろうとした。
「一体、ここはどこだ? 空には雲のような……真っ白なパンツがあるし……?!」
上空は雲もなく。まるでスカートの中のようだった。
あ、あれ??
もしかして、ここって??
「キャ―――!」
何故か悲鳴までする。
俺は不思議に思ってスルスルとした絹の中から立ち上がると、そこには一人の少女がいた。黒の長いハットに赤と緑の衣装。片手に箒を持っている。
「ま、魔女……?」
少女はとても恥ずかしがって、俯いていたままで片手を上げた。途端に物凄い勢いで突風が少女の周りに集まる。
やっぱり……。
やばい!!
「わ! ごめーん! ま、待て! 止めてーー! 魔法止め!!」
「……」
少女が手を静かに降ろすと草原の風が急に穏やかになった。
俺はホッとして、胸をなで下ろした。
「ははっ、助けてくれてありがとう……かな?」
「……」
多分、この少女は俺を海から助けてくれたんだろうなと思った。少女は俯いたまま遥か東を指さした。
なんだろう?
首を向けると、あの橋が見える。
それにしても、今の俺って何語で話してるんだろう?
不思議なことだらけだなあ。
「と、遠いなあ。けど、早く戻らないと……いけないんだ」
俺はあのソーニャとかいう王女が気になり出していた。
「今から一緒に飛んで行くのよ。王女様が危険だから……」
え?! き、危険?!
「ああ、あんたの名前は?」
「マルガリータ……ナイツオブラストブリッジの一人」
「そうか……。 ナイツオブラストブリッジ? 俺の名は……」
怖くなって、カクカクと鳴ってしまう足を叱咤していると、いつの間にか、草原の地面が盛り上がってきた。砂煙と共に下品な笑い声が木霊する。
「よー、よー、ちょっと待ってくれよー」
「うーん。うーん。こいつは顔は見えないんだな。でも、いい女の匂いがするんだなあ。こいつは高値だなあ」
「一人は男かあ……こっちは安値だなあ」
「うん?」
突然、土の中からガラの悪い男たちが飛び出してきた。あっという間に俺たちは男たちに囲まれた。まるで、モグラのようだった。その証拠にボロボロの格好の男たちの肩や頭には砂ぼこりが付いていた。
「は、早く逃げよう!」
俺は慌てて少女の方を向いた。
少女は俯いたままだったが。大きな箒を一振りし、顔を上げた。俺の腕を掴んで箒に跨ると、不思議な事に俺たちの身体ごと空中に浮いてきた。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!