「見えた!!」
俺はライラックの懐寸前でジャンプして前転した。目の前にがら空きのライラックの背中と白いマントが見える。
髑髏の短剣で心臓の部分に突きを放った。
が、ライラックは振り向き様に大盾で短剣の突きを弾いてしまった。
俺は軽いステップでバックして態勢を整えた。
ライラックも後ろへ後退して態勢を整える。
「ふうっ、ふうっー……うう……。貴様! 本当に私に斬られそうになって、ただ逃げ回っているだけだった。あの時のオニクボの息子か?!」
「ああ、そうだ!! いや、ちがーーう!! 俺は普通の高校生だったんだ!」
「何? 高校生?? とは、一体何だ!!」
「ただの学生さ!!」
俺は神聖剣を遥か上空へ向けて構えた。
そして、気合いと共に最上段からの神聖剣を振り下ろそうとした。
が、遠い橋の方から数発の大砲の弾が俺に向かって飛んできた。
俺を爆風と熱が襲う。凄まじい轟音と衝撃と共に目から火花が飛んで、耳がキ―ンと鳴った。何が起きたのかわからない。激しい頭痛と耳鳴りを抑えて、周囲を見回すと、いつの間にか俺の前には、風に包まれたマルガリータが右手を挙げて立っていた。激しい砲撃を空気が振動するほどの突風で全て弾いてしまっている。砲弾は橋から海の方へ吹っ飛んで爆発する。
「ふーっ、危ない。危ない。……鬼窪くん無事?」
「ありがとうな。マルガリータ」
「無事で良かった。大砲の弾は私に任せて。でも、今度からは騎士団たちはどうしようもないからね。自分でなんとかしてね。じゃ!」
「へ?? ライラックもか??」
マルガリータは再び大きな箒へと跨ると空を飛んだ。そして、次々と撃たれる砲撃を風で弾き飛ばしていく。
「騎士団の数はまだ半端じゃないし! お、俺だけでどうしようっていうんだ!!」
「ふふふふっ。よーっし、これならば! オニクボを数で押し潰せーー!! 全軍突撃ーーー!!」
橋の向こうから大勢の騎士団がライラックの命を受けて、俺に突撃してくる。
「なん?? や、ヤバくない?!」
俺は冷や汗を掻いて、咄嗟に神聖剣を構えた。
土煙を上げ、橋の向こうから軽く5000はいく青い鎧の騎士団が俺に統率のとれた動きで前進してくる。
「加勢するよ!」
「オニクボよ! 私も加勢するわ!」
ラピス城からは、大女とソーニャの二人が剣をそれぞれ振り上げて、俺の傍へと駆け寄って来た。ソーニャも大女も大した怪我はない。
「王女はお下がりください!」
「でも、下がっても意味はまったくないんだよ!」
大女の一声にソーニャが剣を構えた。
辺りは迫り来る騎士団の耳を塞ぎたくなるような足音が轟き。不穏な空気が流れ始めた。
「あ?! やっと来たわ! 援軍よ!」
空中のマルガリータが大砲の弾を弾きながら、西の方角を指差した。
その時、 血の臭いを乗せた一陣の風が吹いた。橋の向こうから騎士団とは違う土煙が昇りだした。凄まじい数の黒の骸団の男たちが参戦してきたんだ。騎士団と黒の骸団は橋の向こうであっという間にぶつかり合い激しい交戦状態となった。遠くから剣戟や怒号の声がここまで聞こえてくる。
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