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「鬼邦くん! ご飯出来たって!」
「う、うーん……うん???」
目上には控えめな女性の胸が……。俺はどうやら木製の二段ベッドの下で寝ていたようだった。
「ちょっと、どこ見ているのよ!」
「わ! ごめん! って、あれ?? 前にもこんなことなかったっけ??」
ここへ来てから頭が混乱することが多いな……。
そういえば、学校……どうなったんだろ?
休学扱いかな?
「おーい! マルガリータ。テーブルにもう載っけておいたぞー」
「はーい!」
このログハウスを連想される木材でできた部屋の奥から若々しい声が聞こえて来た。部屋の奥もここからでは薄暗いけど、どうやら同じ造りだ。
って、誰?
俺は起き上がると、部屋の奥へとスタスタ歩くマルガリータについていった。案の定。部屋の奥も木の香りが充満している。
それに美味しそうな食べ物が木製の大きなテーブルに所狭しと載せられていた。恐らくは大半がマルガリータの食べ物だろうな。
黒の骸盗賊団の洞窟を思い出す木の実や果物。後は、豚などの肉類にパン。それらがてんこ盛りにテーブルに置かれていた。
俺は草原で倒れていた初老の男の人がテーブルに座っているのを発見した。
初老なのに声や顔は若々しかった。何故なら白髪だからだ。実際に年齢は40代にも見える。凛々しい顔をした人だった。
ああ、そうか。この人が……。
「お師匠。こちらがさっき盗賊団から私たちを助けてくれた鬼窪 功一くんです」
「おお、ありがとう。私はマルガリータの師匠をしているヒッツガルという者です」
「俺は意識を失っていたけど……お互い無事で良かった」
「あ……。そのことなんだが。最初に謝っておく。すまないな。盗賊団の頭領オニクボを撃退したあれは私の究極魔法の一つブレンド・ファイアだったんだが……」
「お師匠は魔方向音痴だから」
ヒッツガル師匠の顔色を窺いながら、マルガリータがクスリと笑って言った。
「魔方向音痴?」
「そ、魔法の狙いが完全にコントロールできないの」
「そう、本当に申し訳なかったね。あれは私の中でも強力な魔法だったから」
ヒッツガル師匠が俺にひたすら謝っていた。そんなヒッツガル師匠にマルガリータは再び笑って、テーブルの席に着くと料理にパクついた。
「まあ、いいけどな。熱かっただけだし」
俺はまた貴重な戦力を得たと思った。
でも、当然。魔法の方向さえ間違えなければだけど……。
そういえば、魔法の方向で思い出したけど、今頃ラピス城は無事だろうか?
もう、ここへ来てから一日は経っているんだ。
うーん。元の世界では一週間は優に経っているはずだけどな。
俺は親が何とかしてくれるだろうと思って、学校を諦めた。
けれど?!
留年はしたくないな。
あれから秋野は無事だろうか?
俺は木の実を食べながら、そんな仕方がないことばかり考えていた。
「ふーむ、それであの西方領地のガルナルナ国へか……」
「そうですよ。お師匠。ラピス城を攻めてきた敵は、最高の守神アリテア王ですよ」
「それで、私の魔法の力を?」
「いえいえ……はっ。 ええ! お師匠の強力無比な魔法の力で……お願いします!」
「あ……ああ。しょうがないなあ」
木の香りと一緒にマルガリータの食べていた豚の丸焼きの匂いが鼻に入った。
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