あんな長い剣でよく戦えるなあ。
かなり重いはずだ。
「ここは、バランスが悪いな……聖女様。あの城へできるだけ近づけてくれ」
「おっし、任せろって! 私はタクシーじゃないぞ!!」
「タクシー??」
それでも、通小町はフラフラと小さな箒で、城の方へと飛んでいった。
「なあ、マルガリータ。俺たちは……どうする?」
「さあねえ……。あ、向こうから出迎えてくれたわ」
「うへええええーー!! か、通小町!! 危ない!!」
俺が叫ぶと同時に、前を飛ぶ通小町が急に回れ右した。
周囲の入道雲からサーフィンに乗った軽装の鎧姿の大量の兵たちが、グレード・シャインライン国の本国へと降りだした。
サーフィンで斜めに降下するその人たちは、その鎧が土を思わせる茶色だった。
そして、一部の兵たちが俺たちに気が付がついた。こちらへ向かっていきなり発砲してくる。
撃っている銃はライフル銃だ。
「見つかった?! まずいわねえ……女王を倒すどころか、これじゃあ、長期戦になるはずはないと思うけど、消耗した兵たちに、こっちが消耗してきちゃうわねえ」
マルガリータは火炎弾を同時に五発前方へ放ち応戦する。
過激な爆破音の後、粉々になった兵たちの茶色の鎧が空中で散乱したが、だが、危機に瀕した兵の大半がこちらへ撃ってきてしまった。
通小町はライフル銃を器用にフラフラと回避している。後ろのガーネットは大剣で幾つかの銃弾を弾いていたが、サーフィンをしている兵の数はどんどんとこちらが圧倒されるほどになってきた。
どうする?
さあ、どうする?
このままじゃ、いずれ蜂の巣だ。
俺は考えた。
「鬼窪! 女王だけ仕留めろ!! 予定変更だ!! 私たちがここをなんとかするから!! マルガリータと鬼窪は、さっさとあの城へ行け!!」
通小町がそう叫ぶと、ガーネットが囮になるかのように、箒の上で赤い髪を靡かせて大剣を振りかざした。
多くの兵が通小町とガーネットの乗る箒に群がる。
「じゃあ、行くわよ! 鬼窪くん!」
マルガリータは俺を乗せて、猛スピードで茶褐色の城まで一直線にすっ飛んだ。
超高速で飛ぶマルガリータの大きな箒の上で、俺が考えていたのは、学校での模試を完全に忘れてしまったこと、通小町も何故ここへ来たのかということ、秋野は本当にモテ男だったのだろうかということ、グレード・シャインライン国の王となってソーニャと結婚したら、俺はどうなってしまうのだろうということだった。
風を切る音で耳が痛かった。
「もっと早く! もっと早く飛んで!」
マルガリータがそう叫ぶ。
サンポアスティ国の兵たちの撃つ。両手が自由だからライフル銃で狙い撃ちしてくる。だが、発砲音が兵たちを軽く通り過ぎる俺たちの真後ろで聞こえる。
当然、弾は当たりはしない。
風を切る音が轟音に近くなるにつれ、サンポアスティ国の王城がよく見えてきた。マルガリータはそこの庭園の隅っこに降りるために減速をした。大きな箒を上手に操って、滑空する。その間に、俺はサンポアスティ城全体を見ることができた。緑色の蔓や城壁を伝う水流によって、内部は見えなかったが。だけれど、ここからでも、女王の玉座が垣間見えた。
豪奢な巨大なガラス窓の内側にいる女王と目が合った。
浅黒い肌の美しい妙齢の女性だ。
両脇には、ライオンが寝そべっている。
その隣には……またしても、俺の同級生がいた。
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