「でやああああーー!」
俺の振り下ろした斬撃を、謎の千騎士は軽く避けてから、すぐに馬上から同じく剣を上段に構えた。
「いけない!! 鬼窪くん! フルスロットル!」
猪野間が駆け寄り、俺に補助魔法を掛けた。
俺は緑色の光に包まれて、爆速の動きで後ろへ飛んだ。謎の千騎士の振り下ろされた剣戟を躱す。今度は俺の方から白馬の懐に飛び込んで、神聖剣で馬ごと真っ二つにできる袈裟斬りをした。
だが、俺の剣戟は、猪野間のフルスロットルを掛けられているというのに、謎の千騎士はなんなく剣で受け止めてしまった。
うう……強いぞ……。
なんか、ヤバくない……。
謎の千騎士の後ろの白と騎士の国の軍勢も、黒煙の中から体制を整えてきてしまった。
サンポアスティ国の軍勢も千騎士の軍団には歯が立たないのか、何故か押されている。
今では、広大な森を埋め尽くす大戦争は、白と騎士の国の方が優勢だった。
ま、まずいぞ!
どうする??
どうする??
「鬼窪くん……。隙だらけだぞ。この場合は、頭を叩くんだよ」
「へ??」
どこからか男の低い声がして、短剣が一本。謎の千騎士の首の方へ吸い込まれるかのように、飛んできた。謎の千騎士は、その短剣を大袈裟に剣で弾くと、一旦後ろへ白馬を引いた。
???
俺は辺りを探る。
だが、黒煙であまり見えない。
誰が投げているんだ?!
「もういっちょ!」
今度は、三本も短剣が色々なところから飛んできた。
謎の千騎士は、またもや、大袈裟に剣を思いっ切り振り回して、短剣を全て薙ぎ払う。
「鬼窪くん! どこからか短剣を投げているのは、多分、あのオニクボよ!」
俺の後ろにいるマルガリータが叫ぶ。
あの危険な短剣をオニクボは、姿は見えないが、どこかから投げていたのだ。
辺りは、黒煙と血の臭いを乗せた強風が吹いていた。
森に広がる白と騎士の国の軍も、一瞬。その進軍を停止した。
「む! 小癪な! そこだ!!」
謎の千騎士が、その手に持った剣を地面の方へ投げた。
ぐさっと、剣が地面に深々と刺さった。
「あ、あっぶねえ!」
すぐに、その近くの土が盛り上がってオニクボが飛び出してきた。
「ふはははは! やっぱり、強いな! こいつ!」
オニクボは空中で、笑いながら一回転し、俺の隣に着地した。
猪野間もマルガリータも、俺たちの隣に来た。
白と騎士の国の軍隊は、サンポアスティ国の軍隊が交戦中だ。
俺たちだけで、こいつを倒さないと……。
けれども、この謎の千騎士は一体?? 誰??
本当に、昔にトルメル城の王だったクラスド・エドガーなのか??
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