「知っているよ。周辺の強国がその資源が狙うほどなんだろ?」
「ああ……先々代よりもかなり前からな。土地が良かったんだ。みな元々美しいのだよ」
ソーニャはそう言うと、肩まである金髪をかき揚げて青い瞳で見つめて、悲しく笑いかけてきた。辺りに吹く生温い風が冷たい夜風になってきた。
俺は疲れた体が次第に癒されてきた。
「今度、見せてやろう。オニクボが守ってきたもの全てをだ……」
「……ああ、期待してるよ」
そして、しばらく沈黙の後に、ソーニャは俯き加減で片足で地面にある花壇から落ちたバラを蹴って言いにくそうにしていたが。
ついに、こう言った。
「オニクボ。実は、今までまだ早いと思って隠していたのだが、その神聖剣には秘められた力があるんだ……」
「へ?」
「前にハイルンゲルトから聞いた。そして、ある技も生み出したんだとも」
「???」
「あのライラックと同じ。そして、私も少しはあるんだが。四大聖騎士は皆持っているんだ。その力は……聖なる力だ。神聖剣にはその力がふんだん秘められているんだ」
「聖なる力……って、ソーニャって聖騎士だったのか?!」
「王の間で言ったはずだ。私に変わって聖騎士になるのだと……」
「ああ、そういえば!」
冷たい夜風が少し強くなってきた。
俺は寒いので、盗賊衣装のマントを羽織り直した。
ソーニャは寒くないのか、パーティドレスが風になびくのをそのままにしている。
「その神聖剣には、聖なる力をハイルンゲルトが独自の剣技に合体させた技……鋼雲剣《こううんけん》というのが封じられているんだ」
鋼雲剣??
聖なる力??
そんな力が神聖剣にあって、それを応用してハイルンゲルトは技を生み出したのか……。
だけれど、大食堂へ俺はトボトボと向かっていた。考えるのは後回しだ。
その時は、何はともあれ腹が減っていたんだ。
ソーニャもさすがに肌寒くなったのか、ベランダから出てきたようだ。白いパーティドレス姿で一緒に石階段を降りた。
まずは、大食堂へ着いたらレモンを齧って、頭をしっかりさせよう。
俺は、あの酸っぱい味が子供の頃から病み付きになっていた。
だけれど、俺はレモンは好きだが、リンゴは嫌いだった。子供の頃からリンゴのシャリシャリとした食感がなんだか馴染めなかった。
大食堂はここラピス城の地下にある。
すでに大勢の人たちでごった返し凄い熱気だった。銀食器やナイフやフォークの音と、至る所から美味しそうな匂いが豪快にしている。なかなかに広い食堂だった。ここは、寝室を除けるば、ラピス城では凄く落ち着ける場所なのに、だけど、今は不思議と大食堂の片隅だけが、氷のようにとても冷たかった。
そこにだけ、ガラの悪い凶悪な顔の男たちが食事をしていた。
その中央にいるのは……あの、オニクボだった。
俺がその前を通り過ぎようとすると、オニクボは軽く手を振ってネチネチと話し掛けてきた。
「鬼窪くんよー。お前。今まで俺の息子だったんだってなー。部下から聞いて驚いたぜ」
辺りに気まずいが流れ、殺気が充満した。
オニクボの連れだった黒の骸盗賊団は俺の顔を穴の開くほど見ていた。武器を構えるものまででてきた。
俺は腰の髑髏のナイフに手を伸ばして、オニクボの顔をマジマジと見つめる。
オニクボという盗賊団の頭領は、その凶悪な顔とは裏腹に、氷のように計算高い目をしていた。
見れば見るほど、その冷たい瞳からは、とてつもない冷静ささえ感じられる。
「う……」
俺は思わず言葉を失った。
気まずい空気と押し寄せる殺気がより一層強くなる。
ガラの悪い盗賊団の男たちは、武器を取り出し立ち上がってしまうものもでてきた。
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