ナイツ・オブ・ラストブリッジ

この橋は絶対守りきってみせる!
主道 学
主道 学

63

公開日時: 2024年1月2日(火) 23:14
文字数:1,632

 「いや、倒すぜ」


 俺とハイルンゲルトなら必ず勝てる。

 

「そうだ。これも民のため。なあ、あなたも同じことを考えたようだな。……そうだろ」

「ああ、でも。グレート・シャインライン国だけじゃないんだ。全部の国の民のことだ」

「ああ、私もだ」


 周りの人々が深い安堵の溜息を着くと、俺は意外に思った。ソーニャもそのつもりだったからだ。 

 

 その時、病室の扉が勢いよく開いた。


「もう、行くぞ! 相手が物凄いスピードで攻めてきたんだ!」

「鬼窪くん……あ、鬼窪王! 敵は魔族よ! 獣のような姿で羽が生えていて空を飛べるみたい! 凄い数よ」


 ヒッツガル師匠とマルガリータが顔面蒼白で叫んだ。


「わかった!」

「そうか。わかった」


 俺は、神聖剣を鞘から抜いて、グレート・シャインライン国王城の正門まで、走る。途中、武器庫からソーニャは珍しく真っ白な盾を用意した。 

 城の外へ出ると、額に汗を浮かばして、正門まで駆けると俺は驚いた。真っ白い煙がグレート・シャインライン国の城下町全体を覆っていた。


 俺は思わず真っ白い城下町に駆け出した。

 途端に、盗賊衣装がぶすぶすと白い煙を出して腐り出した。

 不思議と、寒くはなく、熱くもない。


「うへえええ!!」

「あなた! 全住民に告げよ! 家や建物の外へ出るな! と!」


 俺がなんともいえない寒気で両肩を撫でていると、ソーニャがそれを見て、さすがに事の深刻さを知ったようだ。傍にいる近衛兵に叫んだ。

 

 マルガリータはヒッツガル師匠を箒へ乗せて、船へと急いだ。


 俺は船に乗る前に、この白い煙の元凶を全て退治することにした。駆け出しては、神聖剣で幾つもの獣をザックリと斬り捨てていく。


 軽いステップで、獣の爪や牙の攻撃を躱しては、止めの一撃をお見舞いした。数こそ減ってきたが、獣はまだ大量にいた。


 城下町の図書館辺りまで斬り結んでいくと。

 俺はゾッとした。


 このままでは、グレート・シャインライン国の国民が全滅してしまう!

 だが、国民の悲鳴も声も何も聞こえない。

 その中で、俺は破れかぶれに、近づく獣を斬りまくった。

 

「うらあああーーー!」


 俺はぶすぶすと腐り落ちる盗賊衣装を脱ぎ捨て、元の学ランになった。王族衣装は着ていない。城の中だけと決まっていて、戦闘はやはり盗賊衣装だ。


 さすがに疲れで、俺は荒い息を整えていた。

 いきなり、後ろからドスっと、鈍い音がした。


「う!!」


 俺は振り向いた。

 獣の牙が肩のすぐそばに忍び寄っていて、今にも俺の身体を噛み砕いてきそうだった。

 だが、ソーニャのサーベルでの突きが、獣の心臓を捉えていた。

 獣は絶命した。


「あなた! 無茶よ! 今、グレート・シャインライン国領土の全国民へと伝令班を向かわせているから!」


 そして、機転を回したんだ。


「相手は違う!! あなたのその剣は、真の元凶を倒すことができるのだぞ!」

「……わかったよ……ソーニャ……」

「さあ、船へ!!」

「よし!! 行こう! 白と騎士の国へ!!」


 俺とソーニャは、グレート・シャインライン国の王都用の港まで走りに走った。城下町から命からがら王城へたどり着く。そして、城門から坂を降りていくと、徐々に視界がモヤモヤとし白くなってきた。


 辺り、いや、もうすでに。

 グレート・シャインライン国全体が白い煙で覆われだしていた。


 行き交う通行人もいない。

 ただ、腐った死肉が地面に落ちているだけだった。


「ソーニャ……すまない……俺のせいだ……」

「いや、気にするな。あなたも国王として当然のことをしたまでだ……これが私たちとこの国の最後だとしても……」


 物凄い悪臭と白い煙に包まれた俺とソーニャの学ランや鎧が、ぶすぶすと腐りだそうとした。


 ここで死ぬのかと思った。


 その時!!


「強制転移!!」

 

 遠くから西田の声が聞こえた。


 気がつくと、俺とソーニャはグレート・シャインライン国で一番速い船。

 白き輝く希望の操舵室にいた。


 操舵室は一度見学をしたことがある。

 前にソーニャから聞いたんだけど、過去のソーニャが四大強国の兵に囲まれた際に、王城から逃げる時に、ラピス城へこの船を使ったと言ったからだ。 


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