「いや、倒すぜ」
俺とハイルンゲルトなら必ず勝てる。
「そうだ。これも民のため。なあ、あなたも同じことを考えたようだな。……そうだろ」
「ああ、でも。グレート・シャインライン国だけじゃないんだ。全部の国の民のことだ」
「ああ、私もだ」
周りの人々が深い安堵の溜息を着くと、俺は意外に思った。ソーニャもそのつもりだったからだ。
その時、病室の扉が勢いよく開いた。
「もう、行くぞ! 相手が物凄いスピードで攻めてきたんだ!」
「鬼窪くん……あ、鬼窪王! 敵は魔族よ! 獣のような姿で羽が生えていて空を飛べるみたい! 凄い数よ」
ヒッツガル師匠とマルガリータが顔面蒼白で叫んだ。
「わかった!」
「そうか。わかった」
俺は、神聖剣を鞘から抜いて、グレート・シャインライン国王城の正門まで、走る。途中、武器庫からソーニャは珍しく真っ白な盾を用意した。
城の外へ出ると、額に汗を浮かばして、正門まで駆けると俺は驚いた。真っ白い煙がグレート・シャインライン国の城下町全体を覆っていた。
俺は思わず真っ白い城下町に駆け出した。
途端に、盗賊衣装がぶすぶすと白い煙を出して腐り出した。
不思議と、寒くはなく、熱くもない。
「うへえええ!!」
「あなた! 全住民に告げよ! 家や建物の外へ出るな! と!」
俺がなんともいえない寒気で両肩を撫でていると、ソーニャがそれを見て、さすがに事の深刻さを知ったようだ。傍にいる近衛兵に叫んだ。
マルガリータはヒッツガル師匠を箒へ乗せて、船へと急いだ。
俺は船に乗る前に、この白い煙の元凶を全て退治することにした。駆け出しては、神聖剣で幾つもの獣をザックリと斬り捨てていく。
軽いステップで、獣の爪や牙の攻撃を躱しては、止めの一撃をお見舞いした。数こそ減ってきたが、獣はまだ大量にいた。
城下町の図書館辺りまで斬り結んでいくと。
俺はゾッとした。
このままでは、グレート・シャインライン国の国民が全滅してしまう!
だが、国民の悲鳴も声も何も聞こえない。
その中で、俺は破れかぶれに、近づく獣を斬りまくった。
「うらあああーーー!」
俺はぶすぶすと腐り落ちる盗賊衣装を脱ぎ捨て、元の学ランになった。王族衣装は着ていない。城の中だけと決まっていて、戦闘はやはり盗賊衣装だ。
さすがに疲れで、俺は荒い息を整えていた。
いきなり、後ろからドスっと、鈍い音がした。
「う!!」
俺は振り向いた。
獣の牙が肩のすぐそばに忍び寄っていて、今にも俺の身体を噛み砕いてきそうだった。
だが、ソーニャのサーベルでの突きが、獣の心臓を捉えていた。
獣は絶命した。
「あなた! 無茶よ! 今、グレート・シャインライン国領土の全国民へと伝令班を向かわせているから!」
そして、機転を回したんだ。
「相手は違う!! あなたのその剣は、真の元凶を倒すことができるのだぞ!」
「……わかったよ……ソーニャ……」
「さあ、船へ!!」
「よし!! 行こう! 白と騎士の国へ!!」
俺とソーニャは、グレート・シャインライン国の王都用の港まで走りに走った。城下町から命からがら王城へたどり着く。そして、城門から坂を降りていくと、徐々に視界がモヤモヤとし白くなってきた。
辺り、いや、もうすでに。
グレート・シャインライン国全体が白い煙で覆われだしていた。
行き交う通行人もいない。
ただ、腐った死肉が地面に落ちているだけだった。
「ソーニャ……すまない……俺のせいだ……」
「いや、気にするな。あなたも国王として当然のことをしたまでだ……これが私たちとこの国の最後だとしても……」
物凄い悪臭と白い煙に包まれた俺とソーニャの学ランや鎧が、ぶすぶすと腐りだそうとした。
ここで死ぬのかと思った。
その時!!
「強制転移!!」
遠くから西田の声が聞こえた。
気がつくと、俺とソーニャはグレート・シャインライン国で一番速い船。
白き輝く希望の操舵室にいた。
操舵室は一度見学をしたことがある。
前にソーニャから聞いたんだけど、過去のソーニャが四大強国の兵に囲まれた際に、王城から逃げる時に、ラピス城へこの船を使ったと言ったからだ。
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