「そうよ。女王さま。この人が他でもない鬼窪くんよ」
俺の頬に嫌な汗が伝う。
そう言ったのは、他でもない。
俺の幼馴染の西田だった。
「西田?! 何故?」
「だ、そうだ。その者はこの戦争の主犯格だ! 捕らえよ!」
え??
なんだって??
何がどうなってる?!
俺の脇がいつの間にか、がっちりと二人の兵に組まれていた。あっ! と思った時にはもう遅かった。もう一人の兵に神聖剣も奪われてしまった。
「鬼窪くん……」
「西田??」
「こうするしかなかったの……」
西田が心配そうな顔で、こちらを見ていた。
ズルズルと両肩を組まれて、引っ張られる俺は、西田の方に信じられないといった顔を向けていた。
何がどうなっているのか、俺にはさっぱりわからなかった。
いつの間にか、女王の間に居て、大勢の騎士? 近衛兵だろうな。に、囲まれて、今はズルズルと引っ張られているんだ。
俺はこのよくわからない状況の答えを、知っているはずの悲しそうな西田の横顔を、いつまでも見つめていた。
―――――
サンポアスティ国 女王の間 別名ライオン宮
雨の降らなくなった国。サンポアスティ国。なのに、この国には不釣り合いな床の水面に迸る水流が、天井の至る所から降り注いでいた。蔓で覆われている外廊下へと繋がる噴水の水路には、13頭のライオンの銅像が石敷きの上にそれぞれ乗っていた。女王の傍に寝そべっている生きたライオンが二匹とも大きな欠伸をした。元来はここは女性専用で近衛兵も大使ですら入れない場所だった。
「お主の言う通りに、鬼窪を捕らえた。これでいいのだな」
「ええ……」
「異世界人である鬼窪は……」
サンポアスティ国女王。アスティ女王は玉座から遠いところを見る目をした。
「同じ異世界人の西田の言う通りなら、もはや、鬼窪はこの戦争の主犯格だな。ラピス城は元々守りに徹していた国だった。だが、鬼窪とやらが来てから、周囲の国に戦争をふっかかてきたのだ」
「ええ……それはよく知っています。女王さまの言う通りです。私、何度もラピス城へ転移魔法で行き来して、ラピス城の様子を見たり聞いたりしました。日は浅いけど、この戦争をラピス城が起こしたことだって、女王さまから聞いたけど、その通りだった」
西田は悲しそうに、俯いていた。
その時、一人の近衛兵が女王の間へと駆けてきて、アスティ女王に耳打ちする。
「ほう、鬼窪は無事に牢の中か……」
「ええ……これでいいの。戦争は終わる。鬼窪くんと私は元の世界へと帰ります」
「そうだな……この国随一の転移魔法使いの西田 円よ」
アスティ女王は頷いた。
「よきにはからえ」
西田は涙目で強く頷いた。
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