あれ??
俺はどうして、こんなところで、戦っているんだ??
なんで、なんで??
地面で横になって、自問自答していると……。
辺りの土煙が強風に乗って、何かを言っているような気がした。
それはか細い声だった。
なんでかなあ……。
あの老人。ハイルンゲルトの声によく似ているんだ。
その風の音。
「戦え……戦ってくれ……」
って、言っている。
そればかりが、俺の耳に聞こえるんだ。
幻聴??
そうなのか??
これは、俺だけが聞こえる幻聴なのか??
俺は風の声に「わかったよ! 戦えばいいんだろ!!」と、倒れながら自分でもバカだと思うけど……返事をしていた。
「鬼窪! ちょっと待ってろ!! うりゃーーー!!」
通小町の叫び声と共に、俺の身体が眩しい光を発すると、怪我と疲れが自然に治ってきた。俺はすぐに立ち上がると、サンポアスティ国の正規軍へ向けて、神聖剣を面前に出し、自然といつもと少し違う構えをしていた。
「鋼雲剣!!」
俺はそう叫ぶと同時に、神聖剣を振り下ろした。
振り下ろされた神聖剣からは、怒涛のような光速の衝撃波が生じ、大地を見事に抉った。あっという間に地面に穴があいて、サンポアスティ国の兵を大勢衝撃波で吹き飛ばした。遥か上空には、市街地の土が舞い上がるほどの衝撃波だった。
「な、なんだ!! こいつは?!」
「ひっ、退けーーー!!」
「撤退ーー!」
土埃だらけのサンポアスティ国の兵が皆、慌てて後退していった。中には、吹っ飛んで倒れたものを担ぐ兵もいる。周囲に得体の知れない緊張が走る。
俺は一息つくと、ハイルンゲルトの声に似ている風に向かって「ありがとう」と言った。
通小町が道路の脇から恐る恐る顔を出し、こちらに駆け寄る頃には、サンポアスティ国の兵は全て退《しりぞ》いていた。
「な、なんだったんだ? 今の技??」
「ああ、鋼雲剣っていうんだって。変わった名だろ」
「鋼雲剣??」
「風が教えてくれたんだ。なあ、変だろ??」
「あ、ああ……。それにしても、鬼窪? あの白い鎧を着た老人は誰だったんだ? 見たところ亡霊だったが! 物凄い力を持っていたが?」
「へ??」
見、見えたのか??
ハイルンゲルトが??
「ああ、あの老人から物凄い力を感じたぞ! そいつが、お前の腕を握ったんだ!」
「あ、ああ」
やっぱりあの風の声は、ハイルンゲルトの亡霊のはずだ!!
あ、今のうちにソーニャを探さないと!!
俺は神聖剣を鞘に納めると、サンポアスティ国の兵が現れた道路を走った。さすがに、今は兵はいない。みんな鋼雲剣で吹っ飛んだりで、逃げて行ったみたいだ。
「ま、待ってくれ! 鬼窪!」
振り向くと、大きな陥没した地面に落ちないようにと、気をつけながら小走りで通小町が後ろから追い掛けてきていた。
「おい、鬼窪。ソーニャの居場所がわかるのか?」
「いや、感だ。こっちの道にはいるんじゃないかなって……」
「はあ! バカかお前。でも、いい線いってるぞ。サンポアスティ国の兵たちは、人を探していたんじゃないはずだ。多分、帰ろうとしていたんだ。だから、そっちの道には、ソーニャたちがいる可能性は大だな」
「……」
か、帰ろうと……。
それって。
ま、マズくない?
俺は一目散に、その道を一直線に走る。
道の両脇にあるパン屋や鍛冶屋、民家、図書館などを通り過ぎていくと、大きな広場にたどり着いた。石と砂利の地面には、ソーニャと騎士団が全員が倒れていた。
「な?! ソーニャ!!」
「待て。待て。死んでいないのなら、これくらいすぐに治せる」
通小町はまずは王女のソーニャに近づいた。
「どれどれ、怪我は……有難い! 大したことないな。こんなのかすり傷だ。ただ……」
「ただ?!」
俺は心配して、通小町の隣に並んだ。
「まあ、致命傷でも、命が無事ならいいんだよ」
「??」
俺はソーニャの胸部を見ると、銃で撃たれたようだった。だけど、血はあまり出ていない。……良かった!! 傷は、浅いんだ!!
「鬼窪。ちょっと、脇にどいてくれ」
「ああ……」
「とりゃーー!!」
通小町が光る手を、右から左へ大きく振ると、ソーニャの身体が光り輝いた。と、同時に騎士団のみんなの身体も光りだした。ソーニャの肩がピクリと動いた。騎士団たちも身体のどこかが少しずつ動き出している。
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