ナイツ・オブ・ラストブリッジ

この橋は絶対守りきってみせる!
主道 学
主道 学

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公開日時: 2023年11月15日(水) 01:12
文字数:1,698

 あれ??

 俺はどうして、こんなところで、戦っているんだ??


 なんで、なんで??


 地面で横になって、自問自答していると……。


 辺りの土煙が強風に乗って、何かを言っているような気がした。

 それはか細い声だった。

 なんでかなあ……。

 あの老人。ハイルンゲルトの声によく似ているんだ。

 その風の音。


「戦え……戦ってくれ……」

 

 って、言っている。

 そればかりが、俺の耳に聞こえるんだ。

 

 幻聴??

 そうなのか??

 

 これは、俺だけが聞こえる幻聴なのか??


 俺は風の声に「わかったよ! 戦えばいいんだろ!!」と、倒れながら自分でもバカだと思うけど……返事をしていた。


「鬼窪! ちょっと待ってろ!! うりゃーーー!!」


 通小町の叫び声と共に、俺の身体が眩しい光を発すると、怪我と疲れが自然に治ってきた。俺はすぐに立ち上がると、サンポアスティ国の正規軍へ向けて、神聖剣を面前に出し、自然といつもと少し違う構えをしていた。 

 

「鋼雲剣!!」


 俺はそう叫ぶと同時に、神聖剣を振り下ろした。


 振り下ろされた神聖剣からは、怒涛のような光速の衝撃波が生じ、大地を見事に抉った。あっという間に地面に穴があいて、サンポアスティ国の兵を大勢衝撃波で吹き飛ばした。遥か上空には、市街地の土が舞い上がるほどの衝撃波だった。


「な、なんだ!! こいつは?!」

「ひっ、退けーーー!!」

「撤退ーー!」


 土埃だらけのサンポアスティ国の兵が皆、慌てて後退していった。中には、吹っ飛んで倒れたものを担ぐ兵もいる。周囲に得体の知れない緊張が走る。


 俺は一息つくと、ハイルンゲルトの声に似ている風に向かって「ありがとう」と言った。


 通小町が道路の脇から恐る恐る顔を出し、こちらに駆け寄る頃には、サンポアスティ国の兵は全て退《しりぞ》いていた。


「な、なんだったんだ? 今の技??」

「ああ、鋼雲剣っていうんだって。変わった名だろ」

「鋼雲剣??」

「風が教えてくれたんだ。なあ、変だろ??」

「あ、ああ……。それにしても、鬼窪? あの白い鎧を着た老人は誰だったんだ? 見たところ亡霊だったが! 物凄い力を持っていたが?」

「へ??」


 見、見えたのか??

 ハイルンゲルトが??


「ああ、あの老人から物凄い力を感じたぞ! そいつが、お前の腕を握ったんだ!」

「あ、ああ」

 

 やっぱりあの風の声は、ハイルンゲルトの亡霊のはずだ!!


 あ、今のうちにソーニャを探さないと!!

 俺は神聖剣を鞘に納めると、サンポアスティ国の兵が現れた道路を走った。さすがに、今は兵はいない。みんな鋼雲剣で吹っ飛んだりで、逃げて行ったみたいだ。


「ま、待ってくれ! 鬼窪!」


 振り向くと、大きな陥没した地面に落ちないようにと、気をつけながら小走りで通小町が後ろから追い掛けてきていた。


「おい、鬼窪。ソーニャの居場所がわかるのか?」

「いや、感だ。こっちの道にはいるんじゃないかなって……」

「はあ! バカかお前。でも、いい線いってるぞ。サンポアスティ国の兵たちは、人を探していたんじゃないはずだ。多分、帰ろうとしていたんだ。だから、そっちの道には、ソーニャたちがいる可能性は大だな」

「……」


 か、帰ろうと……。

 それって。


 ま、マズくない?


 俺は一目散に、その道を一直線に走る。

 道の両脇にあるパン屋や鍛冶屋、民家、図書館などを通り過ぎていくと、大きな広場にたどり着いた。石と砂利の地面には、ソーニャと騎士団が全員が倒れていた。

 

「な?! ソーニャ!!」

「待て。待て。死んでいないのなら、これくらいすぐに治せる」


 通小町はまずは王女のソーニャに近づいた。

 

「どれどれ、怪我は……有難い! 大したことないな。こんなのかすり傷だ。ただ……」

「ただ?!」


 俺は心配して、通小町の隣に並んだ。


「まあ、致命傷でも、命が無事ならいいんだよ」

「??」


 俺はソーニャの胸部を見ると、銃で撃たれたようだった。だけど、血はあまり出ていない。……良かった!! 傷は、浅いんだ!!

 

「鬼窪。ちょっと、脇にどいてくれ」

「ああ……」

「とりゃーー!!」 


 通小町が光る手を、右から左へ大きく振ると、ソーニャの身体が光り輝いた。と、同時に騎士団のみんなの身体も光りだした。ソーニャの肩がピクリと動いた。騎士団たちも身体のどこかが少しずつ動き出している。


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